6人目 『森崎めぐさんは先行きが不安』
先日のお客さん漆原真姫ちゃんが手紙を書くと言ってから、幾日が経過しました。
あれから何の音沙汰もなく、一体どうなったのだろうかと悩む二人。
「ねえねえ、さくめちゃん。真姫ちゃんどうなったのかなぁ?」
「ああ、あの恋愛相談の人ね。途中で戻ったから会話全部は知らないけど、多分大丈夫でしょ」
「そっかぁ。うん、そうだね。響子さんも手伝ってくれたし、途中でさくめちゃんもランニングから戻って来たし!」
「う……あの時は飛び出して悪かったわね。でもあたしっていうよりかは、あんた達の方が事情把握してるんだから、お礼を言われるならあんた達よ」
「そうかなぁ?」
「そうよ」
二人は顔を合わせてえへへーと笑顔になります。
そうして時折お菓子をつまんだり、カップに入った飲み物を口に含んだりと、店内に甘やかな雰囲気が流れますが、いつだってそういう時には波乱が巻き起こるものです。
「——オシャレなお店ー、ここホントに悩み相談してくれるの?」
——訪問者を知らせる鈴が鳴ったかと思えば、扉の向こうから現れたのはギャルでした。
二人に比べるとややお姉さんで、かっこいい系。
白金色のポニーテールに派手すぎないピアス。長い睫毛にぷるぷるとした唇。
そこら中が女性らしさを際立たせており——まさしくギャルです。
「え、えーと……」
唐突なギャルの登場に咲ちゃんは驚き、梅ちゃんに至っては言葉すら出てきません。
そんな二人にギャルさんは言います。
「あ、うちは森崎めぐってーの。よーろ☆」
そして、目の近くでピースサイン——所謂ギャルピースを決め、にこっと笑みを浮かべるのでした。
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆
「でねー、なんかの撮影と勘違いされちゃってさー」
「おお、なんかアイドルみたい……っ!」
「そーそー! あの時はほんとそんな感じだった。友達もそれでしばらくカメラ使わなくなっちゃったしー。さっきーとめうめうはそういうのないの?」
ギャルさんこと、本日のお客さん森崎めぐさん。
彼女はギャル故なのか、天性のものなのか、一瞬でこの場に馴染んでいました。
ちなみに響子さんは、現在お客さんの依頼で秘湯巡りの旅に付き合っています。
二日前からの依頼だったので、今日の間には帰ってくるとのことでしたが、未だその姿は見えず。
「うーん、私はないかなぁ……。さくめちゃんはどう?」
「あたしもないわね、友達はそういうの結構あるみたいだけど……ってそうじゃないわよ! 雑談じゃなくて、何か用件があって来たんじゃないの?」
ですから、こうして話を戻してくれるのは主に梅ちゃんの役目になります。
彼女の言葉に一瞬ほけーっとする咲ちゃんですが、すぐにはっとなって、
「そうだった……っ!! めぐさん、今日はいったいどんな用件で?」
「なんでバーのマスターみたいな話し方になってるのよ」
なんだか妙な話し方になった咲ちゃんに対して、それまで止まるところを知らなかっためぐさんの勢いが弱まり、
「あー……」
頰をかいて困ったような表情になります。
「それなんだけどさ、どーしよっかなーって思って」
「響子さんは今出かけてるけど、私達で良ければ話聞くよっ!」
「え、いーの? マジありがと! うちここ来て良かったわ、いい子だね二人とも!」
「……依頼なんだから気にする必要ないわよ」
「あれ、照れちゃってるー? あはっ、可愛いねーめうめうは」
「めうめう言うな! いいから早く話進めなさいよ、もう」
梅ちゃんが褒められて真っ赤になった顔をプイッとそらすと、さすがにめぐさんも引き際だと思ったのか、少し小難しい顔になり、
「————えっと、うち告られたんだ、後輩に」
「——っ、告白ね」
「告白かぁ……」
ぴくりと反応した梅ちゃんをよそに、咲ちゃんは最近恋愛相談が多いなぁとぼんやり考えます。
「二人も可愛いしたくさん告られたことあるだろーけどさ、まあうちも初めてじゃないわけ。男と付き合うのはなんか大変そうだからいつも断ってるんだけどさ……」
「あたし達がどうかはともかくとして、いつもの告白とは違ったってこと?」
「うん、その通り。その子とは……いつだったかな、結構前に落し物手伝ってあげた時があったんだけど。その時に惹かれたって」
「…………あれ?」
なんだかどこかで聞いたような話に、二人は顔を合わせて首を傾げます。
しかしそれに気づかず、めぐさんは続けます。
「でさ、うちは同じ学校の子だなってのは分かってたけど、お礼とか恥ずかしいじゃん? されるほどのことでもないしさ。だから見つけてすぐに別れたんだけど……」
「う、うん」
「この前その子に手紙もらってね。まあ悪い気はしないから、会って話したり、一緒に出かけたりしたんだけど」
「告白……されたのね?」
「そう。出かけた帰りにね。うちびっくりしてさ、一旦保留ってことにしてあるんだけど。返事をしないのも良くないし、どーしよって思って」
彼女の言葉を最後まで聞いたところで、咲ちゃんと梅ちゃんの間で一つの結論が出ました。
ああ、これあの子だ。と。
「えーと……めぐさんはお付き合いはしたくないのかな?」
「したいしたくないっていうよりは、女の子からの告白なんて初めての経験だし、混乱してるって感じ。そういうの分かんないからさ」
「じゃあそれ、その子に言ってみたら? 焦らないようにって言われてるし、ちゃんと待ってくれると思うわよ」
「……ん、あれ? 二人はあの子のこと知ってるの?」
「あっ…………」
残念。つい言葉を漏らしていました。
誤魔化そうとするも、時すでに遅し。怪しまれてしまっています。
なので二人は諦めてため息を吐き、
「あのね、めぐさん。実は私たち——」
先日の話を始めようとして——その言葉は遮られます。
何故なら、
「————二人とも、ただいま。先程近くで真姫ちゃんに会ったから連れてきたのだけれど……あらあら?」
その原因は、突如開かれた扉にありました。
温泉帰りの響子さんと、問題の真姫ちゃん。
偶然に偶然が重なって当事者が全員揃ってしまいました。
「あ、めぐさぁん。こんなところで奇遇ですねぇ」
「あ、あははっ。まきち、昨日ぶり……」
もはや絶句状態の咲ちゃんと梅ちゃん。恍惚な表情を浮かべる真姫ちゃんに、渇いた笑いを漏らすめぐさん。
響子さんは彼女達を順番に見ていって——、
「あら、あらあら?」
目の前に広がる不思議な光景に、首を傾げるのでした。
四人目のお客さん
なまえ :森崎 めぐ
ねんれい:17歳
しょく :高校二年生
しゅみ :カラオケ、ショッピング
すき :体を動かす、友達と出かける
きらい :勉強
みため :ギャル。白金色に染めたポニーテールとピアスが特徴。
身長はゆうさんよりちょっと高い。スレンダーなモデル体型。
かっこいい。
ひとこと:めぐだよ! よろしくね、あはっ☆




