きんたろう (2)
そして勝負の時は訪れます。
土俵には西方に熊、東方に金太郎。
両者の実力は力だけなら熊が若干有利。ですが知恵では金太郎が上。
はてさて、どう転ぶのか分からぬままに双方は土俵上でにらみ合い、いつ立ち合うかと見守る動物たちの緊張が頂点に達したその瞬間でした。
結果的に勝敗は一瞬。見事、金太郎の勝利に終わります。
決まり手は『兜割』。
利きなじみの無い技だと思われるでしょうが、それも無理からぬことです。
この技はまず隠し持っていた鉞を大上段に振り上げ、相手の頭を真っ二つに斬り裂くという、現在では髷掴み、喉輪などと並ぶ禁じ手のひとつ。
ただし、この時代にはまだ禁じ手とはされていなかったため(というより、まさかそんなことするとか思わないですし。普通は)、勝負の結果だけで言えば金太郎の勝ちとなったのでした。
こうして山の動物たちのため尽力した金太郎の活躍により、熊はどっかのチェーンソー喰らった神様よろしく右半身と左半身が泣き別れになってしまいましたが、まあ悪役の顛末なんて誰も知ったことじゃありませんので、自然に土へと還ってくれるのを待つ形で放置され、金太郎と足柄山の動物たちはその後、源頼光が偶然にも足柄峠を訪れ、人格的にはどうかと思うけど、単純な戦力としては優秀だよねという理由で金太郎をスカウトしてゆくまで、平和に暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。