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むかしおばかばなし  作者: 花街ナズナ
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うらしまたろう (2)

それからどの程度時間が過ぎたころでしょうか。


浦島は次第に目覚め始めた意識の中で今、自分がどこかへ横になっていると感覚的に気づき、(これはまた、何故に海へ沈んだはずの自分が……?)との疑問もそこそこ、やおら薄ら目を開けて事態を把握しようとしたのでした。


が、目を開ききるより早く、誰か知らぬ女性の声が耳に入ってきました。


「ようやく目を覚まされましたね。それにしてもよかった。あの玄武の攻撃をまともに喰らったというのに、ほとんど傷らしい傷も受けていない。さすが見たところ水属性特化装備をしているだけのことはあったというわけですか」


何を言われているのやらと、不思議に思いながら浦島が身を起こすと、そこには天女のように美しい女性が立って自分を見つめているではありませんか。


海中なのに『天女のよう』とはこれいかにという形容に関する疑問はさておき、女性は浦島の意識がはっきりしているのを確認すると、細かな事情を説明してくれました。


どうやら浦島は今、竜宮城塞にいるのだと……、


「すいません。『竜宮城』じゃなくて?」

「はい。城の防備を強化した際にそれらしく改称しました。と、名乗るのが遅くなって申し訳ありません。私はこの城塞を預かる甲姫と申しま……」

「すいません。乙姫じゃなくて?」

「はい。自分の防備を強化した際にそれらしく改称しました」


そんな調子で二度まではツッコミはしましたが、これ以上はいつまでツッコミ続けることになるやらと面倒になった浦島は、おとなしく話の続きを聞くことにしました。


甲姫の話を要約すると、


どうも最近になって竜宮城(この時点ではまだ改称前)での退廃した数々の問題行為が玄武の怒りを買ってしまったらしく、朝ともなると玄武が竜宮城に攻め込んできて、戦費の捻出だけでも馬鹿にならないとのこと。


運が良いのか悪いのか、互いに同じ水属性同士なせいもあり、防備を固めるだけで対応はできたものの、攻撃ではどちらも決定打に欠け、このままいたずらに戦が長引けば、籠城策を取っている甲姫側がいつかは干上がってしまうのは火を見るより明らか……といった話のようです。


「そうしたわけで、困り果てていたところに貴方様がこの竜宮城塞へ舞い込んできたわけでして……これはもうどう考えても明らかに、ものすごく都合の良いヒーロー登場フラグイベントとしか考えられませんので、どうか浦島様には玄武を倒していただき……」

「いやいやいやいや……それは確かにものすごく都合の良い展開だってとこまでは私も同意しますけど、だからといってなんで私がそこまでしないといけないんですか? 相手、玄武ですよ? 下手しなくても私程度がかかっていっても、秒殺されてガメオベラになるのがせいぜいですよ? 亀だけに」

「そうすげないことを仰らずに……大体、歌の文句にもあるじゃないですか。『助けが無かったら間違い無く死んでいた亀との戦いで、竜宮城塞に来てみれば、鯛やヒラメの踊り食い』とか……」

「いやいやいやいや……理由になってないし。歌詞、思い切り違ってるし。仮に活け造りまでなら許容範……あー、ごめんなさい。活け造りもアウトだ絶対。なんだこの盛大な同族虐待と共食い。大丈夫か? ここのモラル。そりゃ玄武だって怒るでしょ、普通に」


などと、一旦はツッコミを止めたはずの浦島が再びツッコミを開始してしまう事態に、すっかり二人の会話は暗礁に乗り上げてしまったのでした。


海だけに。


【余談】


一応これで完結という形でも問題ない感じで〆ておりますが、もしまた気が触れ……じゃなくて、気が向いたら続きを書こうかとも思います。


まあ、仮エンディングということで。

めでたしめでたしもつけてませんし。


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