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転生探偵~殺人事件よりも、俺はキスがしたい。  作者: 長月透


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15/15

転生探偵15 雪解け

「…続けますね」

新沼の背中に語りかける。

「斎藤さんは俺たちが鍵を見つけた時の為に、鍵を持ち去りはしなかった。持ち去れば、鍵が安全の為に僕が空き部屋に移動する可能性だってあったからです。結局、気づいていたのは新沼さんだけでしたが。ですが、結果的に鍵は保管という形を取られました。」

しかも金庫の中に保管されているという情報は…新沼の提案で、男三人の秘密となった。

「彼女は当然、困惑したでしょう。ひょっとしたら後で鍵を回収して、自室の部屋の鍵だけ開けておこうと考えていたかもしれない。でも、自室の鍵が手元に戻ってくることは無くなった。人を殺し、証拠も押収され、自室にも戻れない。いよいよ、彼女は覚悟を決めた。」

彼女が俺を見るとき、やけに冷たい目をしていたのを思い出す。森田の親友であるこいつも同類であるに違いない、そう自分に思い込ませ、罪悪感を減らそうとしていたのだろうか。それは彼女にしかわからない。

「でも、このペンションは狭い。そんな場所で殺人をするとなれば、行動できるとしたら、深夜です。彼女は、深夜に行動を起こすことにした。でも、それは考えれば誰でも分かることでした。だから、あなたは深夜にリビングで待ち伏せをしていたんですね。」

一階から聞こえた物音、あれは勘違いでは無かった。あの時、確かに居たのだ。暗闇に潜み、犯人を待ち伏せていた人間が。

「あぁ、うっかり物音を立てちまってな、お前から隠れる為に、あの暗闇の中で動き回るのは大変だったよ。このまま朝まで鬼ごっこだったらどうしようと思ってたら、急にダッシュで二階に戻っていったからな。あれは何だったんだ?怖気づいたのか?」

「...ライトが切れたから部屋に戻っただけです...話を戻しますね。そもそも、なぜ斎藤さんはターゲットを佐藤さんにしたのか、それは半分消去法だったのでしょう。まず、同室の二人は当然ターゲットには向いていない、彼女たちを殺せば当然斎藤さんが犯人だと分かるからです。そもそも、仲のいい女友達を殺す事なんて彼女にはできなかったでしょうけれど。そして、彼女の目的は凶器を俺に擦り付ける事、だから、俺を殺すわけにもいかなかった。後は新沼さんですけど、そもそもあなたを庇うために森田を殺すことになった訳ですからね。それに、二階で殺人をすればより一層バレる可能性が高くなる。そういったことを全て考慮すれば、ターゲットが佐藤さんになるのは当然の事です。」

俺は休む事なく続ける。

「それに、佐藤さんを殺すのは、特段難しい事ではなかった。なぜなら、彼には明確に隙の出来るタイミングがあったからです。」

三日目、森田の事件が発見された直後、部屋に鳴り響いた佐藤のタイマー。あれは午前五時に設定されていた。

「斉藤さんは、佐藤さんが朝早く、五時に起きてくることを知っていた。彼女は、五時前後に部屋から出てきた佐藤さんを後ろからランタンで殴り、気絶しているところに背後から刃を突き立てた。ところで新沼さん、もう予想はついていますが、なぜあなたは犯行を監視していたんですか?」

「お前もなんとなく気づいてただろうが、あいつの犯行は計画性のない、思いつきみたいなもんだ。全てが行き当たりばったり。だから、サポートしてやろうと思ったのさ、親切だろう?あっさりと犯人の正体がバレちまったら面白みがないからな。あぁでも、佐藤の殺人に関しては別に大きなミスは無かった。」

後ろから殴って気絶させ、後ろから刃を突き立てる。指紋などは残るかもしれないが、今すぐその場で犯人だと指摘されるような証拠はでないだろう。

「でもあなたは、もっと面白い事を思いついてしまった。」

なぜ佐藤の死体をわざわざ部屋の中まで引きずったのか、その時は犯行時刻がバレないようにするためだと思っていたが、考えてみれば犯行時刻がバレようと何の問題もない。全員寝ていて、アリバイなどないはずなのだから。

「あいつが佐藤を殺した後、俺は確信した。あぁ、こいつはどこまでも堕ちていく人間だ、そこで思いついたんだ、あいつをもっと追い詰める方法を。どこまであいつが罪を重なるのか、見たくなったのさ。」

「…その為にしたのが。部屋の入れ替えだったんですね。あなたは、佐藤の死体を引きずって部屋の中に戻した後、何も知らないふりをして朝食の準備を始めた。佐藤さんは起きてこない、という適当な嘘までついて。」

斎藤は訝しみ、困惑しただろう。新沼の話と違い、佐藤はいつも通りの時間に起きてきた。その上、なぜか死体が廊下にはなく、部屋に戻されている。

「殺害現場が部屋の中に見える様調整して、その上、あいつの服に血が付いてたからわざわざジャケットまで被せてやったり、骨の折れる仕事だったよ。」

「でも、坂本と白石が101号室に入って行った時のあいつの顔、あれを見ただけで疲れが吹っ飛んだよ。絶望と困惑に満ちた、あの顔。」

凶器を押しつければ全てが解決する、その一筋の希望に縋っていた彼女にとって部屋の入れ替えは、目の前で蜘蛛の糸が切られるようなものだったろう。

「彼女は、結局強行策に出るしかなくなった。自分が偽の被害者となり、全てを燃やし尽くすという。」

「最後の賭け、ってやつだな。まぁ、あいつの希望の火は、バケツ二杯であっけなく消えちまったよ。さすがに、部屋に置いてある仕事道具まで燃えちまったら困るからな。」

彼女の頬を涙のように伝う、生々しい血。自分の頭にランタンを打ち付ける、彼女の覚悟は、想像を絶するものだったはずだ。

「あなたが直ぐに彼女の罪を告発していれば、こんな事にはならなかった、人を追い詰めて、人を殺させて、それで満足ですか?」

「あぁ、大満足だね。それに、まるで俺を悪人みたいにいうが、俺は人を殺していない。勝手に勘違いして、勝手に追い詰められて、勝手に人を殺したのは全部あいつだ。それに、お前も薄々気づいてただろ、俺が胡散臭い人間だって。お前の推理力が足りないせいで、余計に人が死んだ。恨むなら、自分を恨むんだな。」

先ほどよりも強まった雪に、視界が悪くなる。前を歩く新沼の姿が、徐々に小さく、そして白く染まっていく。

「待て!新沼!話は終わってない!」

「いいや、終わったね。もう君と話すことはない。そんなことより、後ろの子達の心配でもした方がいいんじゃないか?」

後ろを振り返るが、どこにも人影がない。この雪の中、怪我人を支えながら歩くのは至難の業だ。

「新…!!」

再度振り返ったその先。

もうそこに、彼の姿は無かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「〈スクープ!!〉雪山のペンションで起きた、連続殺人事件!!居合わせた記者が、当時の様子を語る!!」

ーーー以上が、本事件で起こった事件の全貌である。狂気に満ちた、快楽殺人鬼による被害者は、以下のとおりだ。

森田大地(20)

佐藤文男(63)

そして、狂気で自身の頭を貫き、結果命を落とした、快楽殺人鬼。

斎藤里香(22)


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