第68話 ノアールの思い
カイル達はジェット機から飛び降りると、治療室へ走った。
そこには透明なカプセルに入ったネーラが横たわっていた。
ネーラは色々な管につながれており、ネーラの血圧や鼓動をあらわすモニターは無情にもまっすぐ線を描いている。
「ノアールを救い出してきました。ネーラが体を張って助けてくれたからですよ。だから、目を覚ましてください」
カイルは物言わぬネーラに話しかける。
「ドギちゃん、カプセル開けて」
ノアールは動かないネーラを見て、ドギちゃんにお願いした。
静かにカプセルのフタが開いた。
「ねえ、ネーラ。これ見て。あたしね、カイルに結婚指輪もらったの。良いでしょう。ねえ、羨ましい?」
「ノアール……」
「なにか言いなさいよ。いつもみたいに『ノアールだけ卑怯だニャ』とか言いなさいよ」
ノアールの言葉に答える声はない。
「ねえ、お願い。何か言って! 目を覚まして! あたしはあんたに言わなきゃいけない事があるの!!! 起きなさい! この馬鹿猫!!!」
涙声のノアールはネーラの胸を力任せに叩いた。
その時、思いという名の魔力がネーラの胸を包み込んだ。
「誰が馬鹿猫ニャ!!!」
ネーラはそう叫びながら、起き上がると同時にモニターの線が動き始めた。
「ネーラ!」
「馬鹿猫!!」
カイルとノアールは涙を拭うこともせずにネーラに抱きついた。
「な、何ニャ!? あ! ノアール、無事だったかニャ? 光の勇者はどうなったニャ?」
「その話は後でゆっくり話してあげる。それより、あたしの話を聞いて!」
「な、なんニャ!?」
ノアールは涙を拭いて、ビクビクするネーラに向かい直した。
「ネーラ」
「は、はいニャ」
「ありがとう。命がけであたしを助けようとしてくれて、ありがとう」
ノアールは顔を真っ赤にして、目を潤ませながら深々とネーラに頭を下げた。
初めて見せるノアールの姿に戸惑いながらネーラは答えた。
「何言ってるニャ。ノアールは大事な親友ニャ。そんなことは当たり前ニャ。でも、結局、何の役にもたてなかったニャ」
「そんな事は無いですよ」
カイルはネーラの言葉を否定する。
「ネーラがいたから、ノブナガを倒せたのです」
ノアールとネーラへの思いがあったからこそ、カイルは200年に及ぶ訓練が乗り越えられた。
ネーラの勇気が、最後にカイルの背を押したのだった。
「そ、そうかニャ。なんか照れるニャ……そう言えば、ノアール。さっき指輪がどうとか言ってた気がするニャ。何のことニャ?」
「これの事よ。カイルから貰ったの」
そう言ってノアールは左の薬指にはめた指輪を見せると、ネーラは叫んだ。
「ノアールだけ卑怯だニャ!」
最終話まであと2話です。
土曜、日曜に更新します。




