第61話 ノアールとの再会
「さあ、約束の嬢ちゃんだ。鍵を渡して貰おうか」
「分かりました」
カイルはノブナガがノアールから離れるように鍵を投げた。
ノブナガが鍵を受け取った隙にカイルはノアールに近づいて、隠し持っていたナイフで両手の縄を切り、目隠しを外した。
「カイル!」
「ノアール、無事で良かった」
「そのナイフを貸して!」
ノアールの元気そうな声にほっとして、カイルはナイフを渡した。
ノアールと合流して終わりではない。これからノブナガを倒し、安全な所まで逃げる必要がある。
今のカイルならば普通の兵士程度ならば無手でも十分戦える。
さあ、これからが本番だ!
「死ね!」
ナイフを持ったノアールがカイルに襲いかかった。
不意を突かれ、驚いたカイルは無意識にノアールの攻撃を避けた。
「ノアール! 何をするんだ!?」
「お前はノブナガ様の敵!」
「ノアール! どうしたんだ? 僕だよ。カイルだよ」
ノアールはそう叫びながらカイルに襲いかかった。ノアールを投げ飛ばすのは簡単だった。しかし、カイルは愛するノアールに手をかけることなど出来なかった。
避ける一方のカイルに、ノブナガが今の状態を説明した。
「嬢ちゃんはお前さんが死ななければ解けない幻術にかかっておる。素直に死んでやれ。そしてお前さんを殺した後、我に返って悲しむ嬢ちゃんは首をはねて、後を追わせてやるから安心せい。ははははは」
ノブナガは心底楽しそうに笑った。
火の勇者エンカの幻術によって、ノアールは操られている。幻術が解ける条件がカイルの死。ノブナガはカイルがノアールに手が出せないと知ってこのような罠を仕掛けたのだった。
カイルがいくらノアールに声をかけても、ノアールは意に介さずに襲いかかってくる。
カイルが死ねばノアールの幻術は解ける。しかし、いくらノアールとはいえ、ノブナガには敵わない。
ノアールを助ける方法……。
「ノアール。分かりました。僕の心臓はここです。思い切って刺してください」
カイルはそういうと、自分の心臓を差すと、両手を広げて無抵抗の意志をあらわした。
ノアールは無言でナイフを構えると身体ごとカイルにぶつかった。
間違いなく、まっすぐにナイフはカイルの心臓に突き刺さった。
カイルの服は真っ赤に染まった。
どう見ても致命傷だった。
その姿を見たノアールはカイルを確実に殺せたと感じた。
そして幻術は解ける。
「カ、カイル? え、あ、あたし? なんで? どうしてこんなことに?」
「……ノアール、良かった。これを……」
カイルは胸にナイフを挿したまま、血で染まったノアールの手を取ると、父ギャバリアンから受け取った指輪を付けた。
「ははははは、感動の再会じゃのう。安心せい、嬢ちゃんも後を追わせてやるからな」
ノブナガは剣を片手にノアールに近づき、泣きじゃくるだけで動けないでいるノアールに剣を振りかざした。
そのノブナガの剣を見て、ノアールはつぶやいた。
「カイル、愛してる。今から行くね」




