第45話 みんなでバーベキュー
「ノア~~~~~~ル」
三人はなるべく早く屋敷に戻った。脅しておいたとは言え、途中で町の連中がちょっかいをかけて来ないとは限らなかった。
屋敷の前で馬を下りたネーラはノアールに抱きついた。
「何よ、この駄猫」
「ノアールはちゃんとあたいのことを仲間だと思っててくれたのニャ」
「うるさいわね。あの場はああでも言わないと、収まらなかったからだけよ。わたしはあんたなんて……」
「ノアール」
カイルは静かにノアールの名前を呼んだ
ノアールは拾われた野良猫のようなネーラの顔を見た。
「ああ、分かったわよ。あんたは私たちの仲間よ。私たちが、あの王国からたった三人で逃げ出したときから一緒にいるじゃない。そんなのいちいち口にしなくても良いでしょう!」
「ノアール」
ネーラは尻尾をピンと立ててノアールに嬉しそうに頬ずりする。
「わかったから、もう離れてちょうだい。うっとうしいわね」
そう言ってもネーラはしばらくノアールから離れようとしなかった。そのため、微笑ましい気持ちでカイルは一人で荷物を屋敷に運び込んだ。
夕方になりバーベキューの準備は整った。
カイル達以外にもアイク、アマデウス夫妻とクリスもバーベキューに参加した。
屋敷のレイス達も食事は出来ないが、歌を歌ったり、準備を手伝ったりして参加した。
アイク達はレイスに最初は驚いたものの、すぐに打ち解けた。クリスにいたってはずっとネーラを抱きしめていたため、それ以外に全く興味を示さなかった。
「ほら、ネーラ、焼けたわよ」
ノアールはずっとクリスに捕まっているネーラに焼き魚を渡した。
アマデウスが手土産に持ってきた魚をノアールが焼いていたのだった。
「ど、どうしたのニャ? 毒でも入っているのかニャ?」
「いるの? いらないの? 冷めたら美味しくないでしょう!」
「い、いるニャ!」
「じゃあ、お姉さんが食べさせてあげる。ほら、骨があるから綺麗にとってあげるからね」
クリスは片手にネーラを抱きしめながら、残りの片手で器用に魚の身をとってネーラに食べさせていた。ノアールはそれを見ると満足そうに、アマデウスの方へ戻っていった。それをネーラは不思議そうに見ていた。するとカイルがネーラに話しかけた。
「ネーラ、少しは気持ちは落ち着きましたか? その魚はノアールがアマデウスさんに頼んでとってきて貰った魚なんですよ。ほら、町で嫌なことがあったから、ノアールは心配してたんですよ」
「そ、そうなのかニャ?」
「まあ、ノアールに言っても照れて否定するだけですけどね」
カイルはそう言って、ノアールを見ながら微笑んだ。
「今度、ノアールにお礼を言っとくニャ」
そんな宴が終わった次の日、アイクとアマデウス相変わらず、ラブラブで湖に戻った、クリスはネーラを抱えたまま、湖の周りの残党狩りや馬や武具を集めていた。
カイルとノアールは二人で昨日の片付けをしていると、思いがけない来訪者を迎えるのだった。
「こんにちは。二人で何泊かしたいのですが、部屋は空いていますか?」
年老いた夫婦が屋敷の玄関でカイルに声をかけてきた。




