第44話 ネーラと町の住民との決着
「大丈夫ですか?」
カイルはネーラに声をかけた。
「アタタタタ、大丈夫ニャ。ありがとう、カイル」
ネーラに怪我などは無く、素直に立ち上がった。
「お、おまえ! 魔族! みんな! 魔族が出たぞ!」
ネーラの真っ黒な猫耳を見た肉屋のおじさんが、恐怖混じりの大声を上げた。
その声に町の連中が棒や鎌、包丁などを持って現れた。
肉屋のおじさんも大きな肉切り包丁を手に殺気立っている。
「魔族と一緒だと、お前らは魔族の仲間か?」
ノアールの返答ひとつで町の連中が全て敵に回る。そんな状況だった。
カイルはネーラを守るように背中に隠し、いつでもコンバットスーツを装着できるように準備していた。
そしてノアールはあきれ果てた顔で、肉屋のおじさんの前に出た。
「はぁ~!? 何言ってるの? わたしがこの魔族の仲間かって!? 何を馬鹿な事を言ってるのよ。そんなバカな事を言っていたらぶっ飛ばすわよ」
ノアールがおじさん相手にすごむ。見た目はおとなしい少女のノアールだが、いざとなれば怖い。その変貌ぶりにおじさんはたじろぐ。
「だ、だったら、そこの魔族をこっちに渡して貰おうか」
「そうだ、そうだ、魔族なんて全員ぶち殺してやる!」
「そいつを渡せ!」
町のみんなは口々に好き放題言っていた。
町の住民の悪意を一身に受けるネーラはカイルの後ろでおびえていた。
「ノアール……」
ネーラはノアールに引き渡さないでと懇願しようとして口をつぐむ。
ノアールはネーラを嫌っている。ネーラがお願いをしても意味がないのではないか。先ほどもノアールはネーラの事を仲間だとは言ってくれなかった。頼れるのはカイルしかいない。
ネーラはカイルの服をぎゅっと握った。
「大丈夫ですよ」
ノアールの背中を見ているカイルはそっとつぶやいた。
「カイル……」
ネーラは瞳に一杯の涙を浮かべていた。
「さあ、嬢ちゃん、その魔族をこっちに渡しな」
「嫌よ」
「はぁ!? なんでだ? そいつはあんたの仲間でも何でも無いんだろう?」
「誰がそんなことを言ったのよ。わたしたちがこいつの仲間じゃなくて、こいつがわたしたちの仲間なの。そこのところ勘違いしないでちょうだい。さあ、行くわよ。カイル、ネーラ」
そう言って、ノアールは集まった町の住民を無視するように歩き始めた。
「……ノアール」
「ね、言ったでしょう。ああ見えて、ノアールはちゃんとネーラの事を認めているんですよ」
カイルはその後ろに付いていく。
唖然としていた町の住民の中で言い出しっぺの肉屋のおじさんが我に返った。
「まて! お前らも魔族の仲間なんだったら、まとめてぶっ殺してやる」
その言葉にカイルはコンバットスーツを身につけて、レーザーガンを抜くと一瞬でおじさんの肉切り包丁を破壊すると、おじさんは腰を抜かして座り込んだ。
「今のはわざと包丁だけ狙いました。まだ何か文句があるようでしたら、容赦しませんし、武器はこれだけでは無いですよ。この町くらいであれば一撃で半分くらいは吹き飛ばせますが、お見せしましょうか?」
カイルはあくまで冷静に事実だけをのべた。
見たことも無い鎧と武器に町の住民の身体も頭も固まっていた。
「あら、カイル。ダメですよ。おじさんの商売道具をそんなにしては、少ないですが弁償しますわ」
そう言ってノアールは肉切り包丁など十本は買える額のお金をおじさんに手渡した。
「これからもちょくちょく買い物に来ますから、そのときはよろしくお願いしますね」
そう言ってにっこり笑うノアールの瞳は全く笑っていなかった。今後、自分達に何かすればその時こそ容赦しないぞと言っている。おじさんはノアールの瞳を見てそう感じた。
「は、はい」
「よろしい。これからもよろしくね」
そう言うと、三人は大量の食料と共に屋敷へと戻ったのだった。




