第42話 屋敷で一泊
「それでは、ノアール様たちはこの部屋をお使いください」
マリアーヌは自分が使っていたV.I.Pルームをノアール達に明け渡したのだった。
部屋を占拠していたレイスはカイルが半数以上吸い込んでしまったため、部屋は空いてしまった。マリアーヌはその部屋へと移動したのだった。
パンツを履き替えたネーラが、大きくふかふかのベッドにダイブする。
「ふっか、ふっかニャ~」
そのネーラの首根っこをノアールが掴んでベッドから引きずり下ろした。
「ここはわたしとカイルの部屋なの。あんたの猫小屋は外よ!」
「ひどいニャ~いくら何でも外は冷えるニャ~」
「じゃあ、さっきのレイスと相部屋にしてあげる」
「い、いやニャ、絶対にいやニャ! それだけは勘弁してほしいニャ。ガタブル」
ネーラはレイスたちの事を思いだして、お股を押さえた。
「なに、あんた、思い出しただけでお漏らしするほどレイス達が怖いの?」
「怖いに決まってるニャ! 逆になんでノアールは平気ニャ!」
「わたしだってよく分からないものや、話の通じない者は怖いけど、彼女らは話が通じるし、最悪、カイルが退治できるって分かったから何にも怖くないわよ。よくよく話をしてみたらみんないい人だったわよ」
「人じゃないニャ、レイスニャ」
「ああ、そうね。良いレイスだったわよ」
「まあまあ、ノアール。僕が別の部屋で寝るから」
「カ、カイルも一緒にいるニャ、ノアールと二人だけだと別の意味でも怖いニャ」
ネーラは涙目でカイルの腕を掴んだ。
ノアールもネーラの言葉に賛同した。
そのため、カイルは二人と同じ部屋のソファで寝ることになった。
翌朝、朝日差し込む部屋でカイルは目を覚ました。
ベッドを見るとノアールがうなされていた。ノアールのお腹の辺りにはベーラの足がどんと置かれている。
カイルは窓を開けて朝の涼しい空気を部屋に取り込むと、鳥の鳴き声も一緒に部屋に流れて来る。
カイルは一階に降りると、マリアーヌがロビーで待っていた。
「カイルさん、朝食の準備が出来ています」
「ありがとうございます。ノアール達を起こしてきます」
カイルはノアールとネーラを起こすと、一階の食堂で朝食を食べ始めた。
焼き魚とスクランブルエッグ、サラダに焼きたてのパン。
「美味しいニャ!」
「あら、大丈夫そうね?」
真っ先に朝食にかぶりついたネーラを見てノアールは安心した様子だった。
ネーラはその言葉に不思議そうな顔をした。
「どう言うことニャ?」
「どう言う事って、言葉の通りよ。ここはずっと無人でレイスの住処になってたのよ。ちゃんとした食料があったのかな? って思ったのよ。あら、美味しいわね」
ノアールの言葉にネーラは青ざめた。寝起きで美味しそうな料理を目の前にして、昨日のことをすっかり忘れていた。
「だ、大丈夫かニャ?」
「何言ってるのよ。もう食べちゃったでしょう。大丈夫よ。あんたに何かあったらあたしも一緒だから。マリアーヌ、この料理は誰が準備してくれたの?」
心配そうなネーラを尻目に、ノアールは幽霊のマリアーヌに訊ねた。
「わたしです。食材は今朝、屋敷の周りで調達した新鮮なものですよ。ただし、蓄えはありませんので、申し訳ありませんが、お嬢様方の食材だけは準備していただけないでしょうか?」
「そうよね。お金を渡しても、あなたたちが買い物するって無理だものね。よし、今日は買い物行くわよ!」
こうしてノアールたちは最寄りの町に買い物に行くことになったのだった。