第38話 残虐毒将軍戦の後始末
「つまり、そこの人間とアマデウスが一目惚れして、人間を裏切ったと。その上、風の勇者がネーラを気に入って同じく裏切ったと言うこと?」
ベレートはカイルの説明を端的にまとめた。
「そういうことになりますね」
「そっか~。……人間ってバカなの?」
「……否定はしません」
カイルは否定しようかと考えたが、否定するところがなかった。
「じゃあ、戦闘は終わったってこと?」
「まあ、そういうことです」
「……わかった。じゃあ、ボク帰るね。バイバイ」
そう言うとベレートは湖の向こうへ走っていってしまった。
「あー! ベレートちゃ~~~ん」
クリスはネーラを片手に抱きしめながら、遠くの影になるベレートに叫んだ。
ベレートの後ろ姿を見ながら叫ぶクリスを落ち着かせるため、ネーラにはクリスの抱き枕になって貰っていた。
「クリス。またベレートと会いたい?」
ベレートがいなくなった方向をずっと見つめているクリスにノアールが話しかけた。
「会いたい! もふもふしたい!」
「じゃあ、あたしたちの仲間にならない? どうせアイク様はアスデウスちゃんとこの湖で生きていくでしょう。あたしたちは魔王軍と同盟を組む予定だから、仲間になれば会う機会もあるわよ。それに、ネーラはあたしたちの仲間よ」
ノアールは、ネーラとベレートを餌にクリスを仲間に引き入れる作戦に出た。
あからさますぎる作戦にカイルは少しあきれた。いくら何でも風の勇者が簡単に仲間になるとは思えなかったが、カイルとしては敵にさえならなければありがたいと考えていた。
「なる! 仲間になる! ネーラちゃんと一緒にいられるなら、仲間になる」
こうして、ネーラに釣られて、風の勇者クリスはカイル達の仲間になったのだった。
そして、大きな問題が残された。
「ナビちゃん。この毒を中和できる?」
一人、毒に犯された湖を見ていた。
この湖にはアマデウス率いる人魚軍団だけで無く、魚類の住処になっており、この大陸のあちらこちらの川と繋がっていた。
そのため、毒をそのままにしておけなかった。
『毒の中和は可能です』
「じゃあ、中和をお願い」
『ただし、エネルギー消費がかなりかかります。今のエネルギー残量では足りません』
「え、でも200%以上あるじゃない」
『バジリスクの毒は強力です。その上、この広大な湖の半分以上に広がっています。概算の試算では1000%以上消費します」
ベレートとの戦いでかなりエネルギーは溜まったが、水の勇者ランスロットと風の勇者クリスとの戦いで100%ほど消費されていた。ノアールが毎日少しずつ魔力をエネルギーに変換してくれるが、1000%まで溜めるとなると、かなりの期間が必要だ。その間に、毒の被害が取り返しにならないほど広がってしまう恐れがある。
しかし、やるしかなかった。
「ナビちゃん、今のエネルギー残量で可能な限り中和して」
『カイルに提案です。毒を中和するにはかなりのエネルギーが必要ですが、湖水と毒を分離するだけであれば、現在のエネルギーで足ります』
「でも、その分離した毒はどうするの? その辺に捨てるわけにはいかないよ」
『分離、濃縮した毒はコンバットスーツの亜空間ボックスに保管するというのはどうでしょうか? そうすれば、今後の戦いにおいて、必要に応じて毒を使用することが出来ます』
カイルはナビちゃんの提案を受け入れて、コンバットスーツの左手で毒を含んだ湖水を吸い込み、毒を濾過した湖水を戻す作業を始めたのだった。




