第20話 騎士団長の真の実力
「王国に仇なす逆賊ノアールに告ぐ。おとなしく、捕まりたまえ。騎士団はすでにこちらの手の内にある」
屋敷の前で、長い金髪を後ろにまとめて垂れ目で嫌みな顔で笑う男が、カイル達を待ち構えていた。
その男の後ろにはオーデリィ男爵家が誇る騎士団が立っていた。
「エナジー、どういうつもり? 主である私に刃向かうとは良い度胸じゃない。今なら土下座で謝れば許してあげるわよ」
ノアールはオーデリィ男爵家令嬢として三人の前に立ち、エネジーに対峙する。
「何を言っているのですか? この状況が分からないのですか? 愚かですね。そんなことだから国王に逆らうのですよ。あなたの父親も愚かでした。だから私が政治のほとんどを取り仕切っていた。そして、今は騎士団も私の手中。これで、男爵領は全て私の物となったのですよ。ハハハハハ」
エナジーは胸を張って、高笑いを始めた。
それを見て、ノアールはため息をついた。
「バカはあなたよ。騎士団長のアイリーンがこっちにいるのよ。それなのに騎士団がなんであなたの手の内にいるのよ」
「騎士団長一人で何がどうなる。騎士達にはあなたが国王に逆らったこと、そして待遇改善をする事を条件に、私の仲間になったのだよ」
「ふー、あなたはアイリーンの団長としての本当の力を知らないのよ。アイリーン、前においで」
アイリーンはいつでも戦闘できるように剣に手をかけて、前に出る。その時、ノアールはカイルに耳打ちをした。それを聞いたカイルは目を見開き、首を横に振る。しかし、再度、ノアールに強く言われるとカイルは頭を縦に振るしかなかった。
「お前達、誇りある騎士団が、反乱を起こすなど何事だ! 今ならお嬢様も許していただけるだろう。反逆者を捉えてこちらに引き渡せ」
アイリーンの言葉に、騎士団の面々に動揺が走る。
「なあ、お前ら、どんな待遇の改善を約束されたか知らないけど、これからやる褒美が気に入ったら、こちらに戻っておいで」
ノアールがそう言った瞬間、アイリーンの鎧が一瞬でなくなり、色っぽい下着姿になった。
騎士達に歓声が上がる。
アイリーンの実力は確かにある。
しかし、それ以上にアイリーン自身に人気がある。
美しい姫騎士。
自分に厳しく、人に優しい。
騎士団のみんなが憧れる存在。
騎士団に咲き誇る一輪の華。
それが騎士団長アイリーンだった。
その、アイリーンの色っぽい下着姿。
騎士達にとってこれほどの褒美は他になかった。
「きゃー!」
アイリーンは悲鳴を上げてへたり込む。
凜々しい騎士団長が、乙女に戻る瞬間。
騎士達から再度、歓声が上がる。
「ご褒美タイムは終了よ。気に入ったら、仕事をしてちょうだい」
ノアールの言葉に、騎士達はあっという間にエナジーを縛り上げたのだった。
そしてカイルは、アイリーンに鎧を装着したのだった。
「騎士団長、すみません。この場を収めるのには、これしかないと言われたので」
「カイル、貴様! 覚えてろ!」
アイリーンは涙目でカイルを睨む。
そんなアイリーンにノアールは両手を合わせて可愛らしく謝る。
「ごめんね、アイリーン。埋め合わせはあとでするから……さあ、エナジー、立場が逆転したわよ。何か申し開きすることがあるかしら?」
ノアールは縛り上げられているエネジーに話しかける。
「縄をほどけ! こんなことをしても無駄だぞ。あと三日もすればクーリエ伯爵家の騎士団がここにやってくる事になっているんだ。そうなれば、こんな弱小騎士団など、あっという間に蹴散らされ、ここはクーリエ領土になるぞ。私がいなければな!」
その言葉に、カイルとノアールとアイリーンは顔を見合わせた。
クーリエ伯爵騎士団はアイリーンが率いるオーデリィ男爵騎士団とは比べものにならない規模である。
それが攻め込んできてる。
小悪党エナジーなんかにかまっている暇は、カイル達にはなかった。




