第15話 闇の勇者のエネルギー事情
「ねえ、エネルギーはあとどのくらい残っているの?」
ノアールはカイルの部屋に来ていた。
魔王との会見が終わり、三人は食事会に招かれて、各自、客用の個室に案内された。
綺麗なシーツをセットされた大きなベッドにテーブル。そのテーブルの上にはワインと水、そしてかごに入った果実が置かれていた。
カイルが勇者になったその夜、ノアールとカイルはコンバットスーツの使い方を、ナビシステムの『ナビちゃん』から説明を受けていた。
そのため、コンバットスーツにはエネルギーが無くなると使えなくなることを、ノアールも知っていた。
「残量は8%ですね。装着する分には何の問題もありませんが、バスターキャノンなどの大技を使うことは出来ないですね」
「じゃあ、補充するわね」
「お願いします」
ノアールは、コンバットスーツを着けたカイルの左手を両手で握ると魔力を注ぎ始めた。
十分ほどするとノアールは手を離した。
「ふ~、疲れた。どれくらい貯まった?」
「ナビちゃん、エネルギー残量は?」
『エネルギー残量13%』
カイルが残量をノアールに告げると、ノアールはがっかりした顔を見せた。
「やっぱりね。また、コツコツと溜めなきゃ駄目ね」
「すみません」
「カイルが謝る事じゃないわ。大きな力を使うには、それなりの代償が必要な事よ。魔法も一緒じゃない」
「簡単にエネルギーを溜められれば良いのですが」
「まあ、あのバカ猫が引っ越しの準備をする間に溜めるしかないわね」
「魔王がお詫び言ったとき、魔力をわけて貰ったら良かったんじゃないのですか?」
「駄目よ。コンバットスーツのエネルギーがなくなると使えなくなるなんて弱点を、他の人に教えちゃ駄目よ。誰がいつ敵になるのか分からないのだから、これはあたしとあなたの二人の秘密よ」
ノアールは真剣な目でカイルに忠告する。
それは、初めてコンバットスーツの使い方を聞いたときからノアールがずっと言っている事だった。
このことはメイドのメイにも、騎士団長アイリーンにも話していなかった。
「分かりました」
しかし、このエネルギー問題はすぐに解消されたのだった。
翌日、カイルとノアール、アイリーンの三人が食堂で朝食を食べていると、ベレートがやってきた。
「いたいた、ねえ、カイル。今日は暇でしょう。ちょっとボクと遊ぼうよ」
「……遊ぶ? ベレート、あたしがいる前でよくそんなことを言えるわね」
「ああ、ノアール。違うよ。昨日は狭かったし、中途半端しか暴れられなかっただろう。だから、闘技場を予約してきたんだ。朝ご飯を食べたら、行こうよ」
昨日の戦闘データーは非常に貴重な物だった。夜、ナビちゃんにデーター解析の状態を聞くと非常に有益だった。
しかし、エネルギーは13%程度しかなかった。
「模擬戦闘で良いですか?」
「良いよ、昨日は不意打ちだったし、消化不良だったでしょう。だから、今日はちゃんと戦おうよ」
「ちょっと、カイル!」
ノアールがカイルの腕を引っ張って、二人から距離を取る。
「エネルギー、あまりないでしょう。どうするの?」
「大丈夫です。最小限のエネルギーで戦闘データーだけ取れれば、すぐに降参しますよ」
「そう、それなら良いわ。でも無茶しちゃ駄目よ」
ノアールとカイルの話が終わり、ベレートの所に戻ると、何やらアイリーンと話をしていた。
戻ってきたカイルにアイリーンは言った。
「カイル、悪いが、先に私が手合わせさせて貰うぞ」
「なんか、そう言う話になっちゃたから、このお姉さんの相手したら、次はカイルね」
いつの間にかアイリーンがベレートと話をつけていた。
それは武人としてのアイリーンの意地が発揮されたのだった。




