その1のに
事件が起きた。
幼なじみとアヤツの親友が抱き合っていたというのだ。
しかも裏道で。
マジかと思った。
しかし、ありきたりだなとも。
あの巻き込まれ体質のあの子のことだ、大方、阿呆な男共にイチャモンつけられたか、アヤツの過激な取り巻きに追いかけられて逃げ回ってたところ、たまたま居合わせてあのデカい体で隠して撒いた………ってところだろう。
だからこそーーーー許せない。
「今日は食堂で食べよう」
「えっ………でも」
「いいから。行くよ」
渋る親友の腕を引っ張って、食堂へと向かう。
その間でもコソコソと話し声が聞こえてくる。
ふんっ
「よくここに来れるよね~」
「あたしはモテるんだから仕方ないってことー?」
「うっわ、どんだけ自信家!?鏡見てこいよ」
「っつーか、ガッコ来てんじゃねーよ」
面と向かって言ってくる言葉の、まぁ汚いこと!
「ホント、低脳ね」
頭の悪そうな姦しい娘が、それこそ鬼の形相で私を睨んできた。
嫉妬に狂った女は怖いわー。
「あんた、なに?」
「部外者は引っ込んでろよ」
「あたしはね、あんたたちみたいに薄っぺらい人付き合いしてないの」
「はぁ?」
「イキナリ何言ってんのぉ?」
嫌な笑い方。
あーやだやだ。
でも、人間やらねばならぬ時があって、今がその時なんだ。
「友達が困ってたら、助けるのは当たり前。ましてや、親友なら」
「はぁ~?」
バンッ
「ゴチャゴチャと五月蝿いって言ってるのよ!野次飛ばすだけの観客風情が!!」
ぐるりと食堂を見回すと全員が私を見ていた。
ふんっ
その耳かっぽじってよく聞けよ愚か者共!
「根も葉もない噂で誹謗中傷してるあんたたちはね、所詮は野次飛ばす観客でしかないんだよ。好いてるヤツの好きな人間を攻撃して恋愛に参加してるとでも?ナマ言ってんじゃねぇ!好きなヤツにしてみたら、好きな人間をイジメてるヤな女にしか見えねえよ?邪魔な人間としか認識されないの!もうわかった?恋愛という舞台に立ってもいない野次馬なんだよ、あんた等はな!」
「同じ土俵に立ってみせな!」
※※※※※
「食堂で大立ち回りしたんだって?」
放課後、アイツの親友が面白くて仕方がないっていう顔してやってきた。
「………もう回ってるわけ」
「アイツ、今告白ラッシュ」
「ふん。じゃなきゃ本当に蔑んでやるわ」
「いや~マジで………いい女だよ、お前は」
「よく言われる。かわいげがないってことなのよね」
「バカだな」
「な、んですって?」
「そうやってムキになるとこ、可愛いと思うけど?」
「は、」
「その呆けた顔も、怒ってる顔も、全部」
「ちょ………いやいやいや、なに、アンタ。大丈夫?」
「至って正常だけど」
「嘘、おかしいもん。だってそんなこと言ったら」
「好きだ。付き合えよ」
「なんで、こんな………ベタな」
「ベタなのはお互い様、だろ?俺はお前が好き、お前も俺が好き。だから付き合おう」
「アンタさっき付き合えよって命令口調じゃなかった」
「さあ、知らねえなあ」
ニヤリと笑ったその顔で、似たもの同士なんだとつくつぐ実感してしまったのは言うまでもない。
あの子が捕まるのも、そう先ではないんだろうな