93 マルレイン
ぐっすり眠った翌日。清々しい気分で目覚めた。
「そりゃ、難攻不落のローブに守られてたらね」
なによ。起きがけに不機嫌な声出して。もっと新たな一日に喜びなさいよ。
「部屋の中を見てみなさいよ」
と言うのでフードを外して部屋の中を見ると、黒ずくめの不審者が二人、倒れていた。え、誰!?
「人攫いみたいよ」
「人攫い? がなんで?」
いや、オレが可愛いからか。なんて罪作りな少女なんだ、オレは……。
「頭大丈夫?」
そう直球で突っ込まないで。ちょっとしたジョークじゃない。
「大方オレの噂を聞きつけた誰かが放ったんだろう」
世界が違えどバカの考えることなんて同じだ。
「ドアを開けて入ったところをみると内通者がいるな」
ドアには鍵がついており、ちゃんと鍵をかけて寝た。外と中からかけられるタイプの鍵だから合鍵があるってことだ。
侵入者は男。探ると鍵が出て来た。他には拘束する縄とか袋くらい。攫いに来るなら金目のもん持って来いや。
「しょうがない。魔力をもらうか」
部屋には即効性の眠りガスを充満させていた。死体と寝るとか不愉快でしかないからな。
侵入者の男たちから死ぬ一歩前まで魔力を搾り取る。
「チッ。二人合わせてイモ五十個にもならんかよ。とことんシケてんな」
部屋に侵入されてイモ五十個にもならんとか損でしかないよ。オレの寝顔(いや、晒してないけど)は金貨百枚の価値があるんだぞ。
「ロッシュニー、起きてる?」
まだ六時前なのでロッシュニーにつけている万能偵察ポッドを通して声をかけた。
「はい。起きてます」
そっちは無事か。
「皆を起こしたらリンの部屋に来て」
「わかりました」
通信を切り、イビスにつけた万能偵察ポッドに繋ぐ。
「イビス、起きてる?」
「やっと目覚めたか。侵入された時点で起きてくれ」
さすがイビスちゃん。侵入されてたのわかってたか。
「万全な対策して寝てるんだから起きる必要はない。なにかあればイビスが動くと思ってたし」
一人でないと寝れないイビスが見知らぬ宿でグースカ寝るなんて思ってないし、いつも以上に警戒してると思ってたよ。
「場所は突き止めた?」
「ああ。商人を装った裏の者だと思う」
「お金持ってそう?」
「結構羽振りは良さそな感じだな」
お、それはなにより。寝顔の代金はいただけそうだ。
「じゃあ、殺して奪って」
短く命じる。
「了解、ボス」
イビスも短く答えた。
通信を切ると、ドアがノックされる。
「入って」
ロッシュニーたちが入って来て、倒れている侵入者にびっくりする。
「リン様?」
「虫が出ただけ。宿の者を連れて来て」
ロッシュニーたちに任せてオレは顔を洗いに外へと向かった。
井戸があったが使い方知らんのでアイテムボックスにある水を盥に出して顔を洗った。
歯を磨いていると、なにやらドタドタと騒がしくなり、ゴッツいオヤジ連中が現れ、息を切らした姉ばーちゃんがやって来た。いい歳なんだから無茶したらアカンよ。
「無事かい!」
ハイ。無事です。
「よ、よかった……」
ヤダ。そんなに心配してくれたの? リン、感動で泣いちゃいそう。
「……たぶん、宿や周りに被害がないことに安堵してると思うわ……」
そうなの? リン、ショック!
「内通者がいる。侵入者、鍵開けて入って来た」
鍵を二つ出して見せる。
「全員集めな!」
身内の始末は任せるとして、我々は朝飯としますかね。
忙しいそうなので勝手に厨房を使わせてもらって朝飯を作る。エルフばかりなので野菜の味噌汁とご飯、漬物、ベーコンを焼いて出した。
しっかりといただき食後のお茶を飲んでると、おっちゃんがやって来た。
ちなみにおっちゃんは、馴染みの宿屋に泊まりました。
「な、なにがあったんだ!?」
「虫が出ただけ。今、駆除してるとこ」
片付けをして、怒鳴ってるんだか仕切ってるんだからわからない姉ばーちゃんに声をかけて宿を出た。
途中、イビスと合流した。ご苦労様。
「宿で休んでて」
「問題ない。このままいく」
まったく。まだ七歳の体なんだから無茶したらアカンよ、と言っても聞かないだろうからため息一つして了承した。
宿を出て十分くらい歩くと、石造りの建物についた。
「ここが傭兵会館だ」
「小さくない?」
もっと大きいところを想像してだが、ちょっと裕福な民家程度しかなかった。
「別に傭兵団が集まってるワケじゃないからな。まあ、寄り合い所だ」
ふ~ん。なら、全員で来なくてもよかったかもな。
「全員入れる?」
「大丈夫だろう。多いときで四十人くらい集まったって聞いたことあるからな」
なら問題ないな。お邪魔します。
中は質素だが、掃除がいき届いており、とても傭兵団の寄り合い所とは思えなかった。
「当館になにかご用でしょうか?」
無表情系美人なおねーさんが登場。受付嬢か?
「おれはガイ。ダリアンナ町の組合長から依頼でグランディール傭兵団を連れて来た。先に手紙を出したんだが、マルクさんに届いてるかい?」
組合長さん、根回しいいね。できる男にはお土産を買ってってあげよう。
「はい。届いております。そちらがグランディール傭兵団の方々ですか?」
「ああ。この子がグランディール傭兵団の代表だ」
「リン」
よろしくね、おねーさん。
「……マルレインと申します。お見知り置きを」
少し間はあったものの、あるがままの状況を受け入れ、仕事に徹しきれる。このおねーさん、欲しい!
「館長を呼んで参りますので、少々お待ちください」
一礼して場を去るおねーさん。う~ん。一筋縄ではいかなそうだし、どう引き抜いたらいいのやら?




