90 ベルホンへ
あれから四日。ベルホンにいくメンバーを決めた。
まあ、決めたと言ってもイビスを中心に弓に長けたエルフをつけただけ。娼館から帰ったその日に通達しました。
じゃあ、なんで四日もかかったかと言うと、希望者が多くて選別に時間がかかったのだ。
まったく、角猪狩りになにを求めるのかは知らんが、なんとか十五人に治めることができたよ。
それから娼館を通して案内人の要請で二日かかり、なんとか出発の日を迎えられた。
日の出とともに出発し、街道で案内人だろうおっちゃんと合流する。
「おれはガイ。組合長から仕事を請け負ったもんだ。よろしくな」
なんともコミュニケーション能力が高そうなおっちゃんである。たぶん、亜人を見下さない者を選んだのだろう。ご苦労様です。
「グランディール傭兵団の代表、リン。お世話になる」
「娼館のばーさんからも強く言われてる。任せておきな」
ばーちゃんからなにか特典でももらったのか、スゴい張り切りようである。
「歩きだとベルホンまでどのくらい?」
「大人の足で明日の夕方にはつくな。まあ、なにもなければ、だが」
「盗賊、出る? 出るの?」
食い気味に訊くオレにタジタジなおっちゃん。出るなら美味しくいただくよ。
「……じ、自由貿易都市群で盗賊なんて滅多に出ないよ。傭兵団のカモにされるからな。今は魔物の襲撃が悩みの種さ」
あ、そやね。盗賊に目が眩んで魔物のことを失念してたわ。
「……盗賊をボーナスにしか思わないボスが恐くてしかたがないよ……」
そこ、うるさいよ! 怖がる前にお前らを食わすために苦労してるオレを敬えや!
「魔物はなにが出るの?」
「オーグルとよばれる狼型の魔物だな。夜行性で集団で襲って来るよ」
肉食系か。なら肉は不味いな。野望の糧とするしかないな。
「ボス。目的がズレてないか?」
ハッ! そうだった! 今回は肉ゲットだった!
イカンな。オレの悪いクセだ。欲しくなるとすぐ目移りする。今回の目的は肉ゲット。余裕があればオーグルゲットだ。
「ありがとう。肉優先だった」
イビスはいいストッパーになってくれるな。
「おっちゃん。明日の夕方ならどこかで野営する?」
「あ、ああ。町と町の間には野営地が設けてあるんだよ。魔物による被害が出てからは柵を作って人を置いてあるな」
流通で成り立ってるから滞らないようにしてんのか。商売に関してはしっかりしてるよな。傭兵の在り方にも力を入れろと言いたいぜ。
「野営地までおっちゃんの足に任せる」
「子どもの足ではついて来れんぞ」
「大丈夫。熊車に乗るから」
元より歩く気はない。そのためにシルバーがいるのだからな。
「わかった。じゃあ、おれの足で進むよ」
頷いてリヤカーに乗り込む。
「イビスも乗る」
「いや、わたしは歩くよ。一日歩くなど造作もないからな」
「わかってる。イビスが体力オバケなのは。歩く体力より武器を出す魔力に使って」
君を慮って言ったワケじゃない。銃を出させるために乗せるんだよ。一分一秒無駄なく銃を出しやがれ。
「……わたしに安らぎはないのか……?」
「眠っているときに感じて」
安心して眠れるようオレの部屋をあげたでしょ。鍵つきにして。一人部屋なんてイビスだけだよ。
ちなみにオレはかーちゃんと同じベッドで寝てます。あと、ミューリーのばーちゃんも同じ部屋です。
「さっさと乗る。そして、武器を出す」
「……悪魔め……」
君の優しい雇い主です。その優しさに報いるために銃を出して出して出し尽くしなさい。
「じゃあ、出発」
で、ベルホンに向けて出発する。
道中は平和そのもの。ゴブリン一匹出ることなく野営地と到着した。
「……景色を楽しむ暇もなかった……」
まだまだ修行が足りんよ、イビスちゃん。オレくらいになると手のひらの創造魔法を行いながらココアを飲みながら景色を楽しめるようになるんだぜ。
……お陰で仕事しないでのんびりしてると見られるけどね……。
「金を払えば小屋を借りられるが、どうする?」
どんなもんかと見せてもらったが、雑魚寝するだけのもので、他の者と一緒と来たもんだ。
「テントを建てる」
カイヘンベルクを経てテントにも改良を加え、より快適に過ごせるようにした。小屋より百倍快適である。
「テント設営、よろしく」
今回エルフの纏め役たるロッシュニーに任せる。
「わかりました。ハシュとリシュは野営地の周辺の探索だ」
エルフでは珍しい双子で、銃に興味を持ったのでイビスの配下にしようと考えてるところだ。
「わたしも出て来る。体を動かしたいからな」
あれだけ銃を出したのに元気なもんだ。あれならもっと無理させても大丈夫だな。うんうん。
「……悪魔だわ……」
君の可愛い守護対象だよ。
さてと。守護天使の戯れ言は軽く流しておくとして、オレは夕飯の準備をしますかね。
アイテムボックスからテーブルを出し、魔力コンロや大鍋、調理道具に材料を出して調理開始。じっくりことこと野菜のシチューのできあがりっと。
「うん。いいできだ」
オレの女子力が止まることを知らないぜ。
イビスたちが角猪を一頭狩って来た以外、これと言ったアクシデントはなし。見張りはロッシュニーに任せ、オレとイビスは先に寝かせてもらった。
ちなみにイビスにはオレのローブを貸してやり、完全遮断された世界でお休みになりました。
「一人じゃないと寝れないとか、困ったトラウマを負ったもんだよ」
健やかに育ててくれたかーちゃんには感謝だな。
「…………」
リリーさん。言いたいことがあるなら口で示しなさい。そんな目で見てもオレの優しい心には届きませんよ。
「……主よ。悪を滅ぼしたまえ……」
アハハ。ダメだな~リリーは。願うだけじゃ悪は滅びたりはしないよ。己の手を血に染めないとね。
んじゃ、お休みなさい。




