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ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか  作者: タカハシあん


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76 ガイオーグ

 期限は二日。とは言え、すべてができたら渡すのではなく、できたものから渡すことになる。


 そうなるとオレは動けなくなり、テントに籠もることになるワケだ。


 妙なちょっかいを受けたくないので、テントの周りにジェスたちを配置して、不審者が近寄らないようにしてもらう。


 テントにも防犯対策してるので、まあ、休息みたいな感じでいてもらう。少しなら酒を飲んでも構わんよ。んじゃ、よろしくとテントに籠もった。


「コピー天使リリー。聖水コピーよろしく」


「守護天使ね。まったく、守護天使をもっと労りなさい」


 天使は使ってなんぼ。使わなきゃ損だわ。


「シルバーはオレを守ってくれな」


「ガウ」


 クッションに身を沈め、意識を新しく創った万能偵察ポッドに移す。


 具合は良好。視界も良好。バッチグーだ。


 透明化させてテントを出る。


 時刻はたぶん朝の六時。あちらこちらから炊事の煙が立っているのが見えた。


 万能偵察ポッドをゆっくりと上昇させ、辺りを見回す。


 グランディール傭兵団がキャンプする場所は、本隊、と呼んでいいかわからんが、各都市が集めた傭兵団がいる場所から離れている。


 まあ、亜人の傭兵団はこっちくんなって感じで離されてるワケよ。


 ……意外と少ないな……。


 全体が見える高さで停止。本隊、と仮称する場所にはどう見積もっても千人もいない。これではカイヘンベルクを囲むことすらできんやろ。


 ……傭兵団ってそんなにいないのか……?


 町には兵士がいるが、それは町を守るのが仕事で、魔物退治は冒険者か傭兵団が請け負っているらしい。


 ……自由貿易都市の良いところであり悪いところだよな……。


 近くに攻めて来る国がないから成立できてるだろうが、今は魔物の被害が大きい。独自の軍隊を持つか、冒険者を優遇しないと不味いことになるぞ。


 まあ、一回更地になってくれたほうが作り直すには楽だけどよ。


 本隊に集まる傭兵団をざっと見ると、なんだか纏まりがないように見える。なんか、各都市ごとに指揮してる感じがするな。


「大規模戦闘とかやったことがないのが在り在りだぜ」


 よくこれで災害竜と戦おうとしてんな。無謀にもほどがあんだろうがよ。まあ、それを利用するオレはありがたいけど。


「ん? あれかな?」


 本隊から離れた場所にボロい馬車が数台集まり、鎖で繋がれた亜人たちがいた。


 万能偵察ポッドをゆっくりと降下させると、黒毛の獣人……ってか、完全に狼男がこちらに目を向けた。


 ……勘づかれた……?


 臭いも音もないのに、なんでわかったんだ?


 さらに近づくと、やはり万能偵察ポッドに気がついているようで、鋭い目を万能偵察ポッドに固定していた。


 ……人の形をしてるが獣の性質が高いのかな?


 バレていても敵意はないことを示すためにゆっくりと降下させ、その狼男に近づく。


「……何者だ……?」


 知性を感じる口調で尋ねて来る狼男さん。


「リンは、グランディール傭兵団の代表。勧誘に来た」


「勧誘?」


「そう。勧誘。今、グランディール傭兵団は強い者、やる気がある者を募集してる。報酬は三食つきに武具はこちらもち。交代での飲酒可能。戦いがないときには休日も与える。給与は少ないけど、物品支給で許して欲しい。どう?」


 うち、かなり優遇されてまっせ。


「……ふざけてるのか? おれは戦奴だぞ……?」


「あと数日で元戦奴になる戦いがある。死霊が群れる町にいけと命令されて。どうせなくなる命ならグランディール傭兵団がいただく」


 物言わぬ戦奴など欲しくないが、物言う戦士は喉から手が出るほど欲しい。まさに、即戦力となる者は大歓迎さ。


「もちろん、強制はしない。グランディール傭兵団が欲しいのは人の矜持を持った戦士のみ。人形やケダモノはいらない」


 戦奴として生きるのは辛いだろう。心を守るために挫けたりもするだろう。オレも力がなかったら一日で生きることを止めてただろうさ。


 だからこれは慈悲。人の心をなくしたのなら絶望のままに死なせる。希望など酷なものは与えない。


「あなた、名前は?」


「ガイオーグ・ランドラル。今は亡きザイフルグ王国の戦士だ」


 ほ~ん。国を築けるくらいの知恵と理性はあったんだ。


「では、ガイオーグ・ランドラル。あなたが欲しい。グランディール傭兵団に来て欲しい」


 国を失っても、戦奴になっても、人の矜持と戦士の魂を持ち続ける。いらないと言うヤツは世界の害悪だ。


「……ふふ。まさか、こんな情熱的な誘いを受けるとはな……」


 獣顔なので美醜はわからんが、その性格からモテたことは想像できた。


「是非とも、と言いたいが、こんなポンコツでいいのか?」


「問題ない。口を開けて」


「口を? こうか?」


 開けた口の中にリンちゃん特製の回復薬を放り込んでやる。


「──んぐっ。これは!?」


「それは傷を癒す薬と失った力を元に戻す薬を混ぜたもの。体に負担を掛けないよう一日かかるけど、絶頂期の肉体になる」


 その分、魔力も食うが、お買い得商品。ケチッてはダメだ。


「それと、これを」


 ガイオーグの右腕にグランディール傭兵団の証たる腕輪をつけ、使い方を頭に刻んだ。


「一日ゆっくり休むといい」


 どうせ二日は動けないのだから一日中寝ていても文句は言われまいて。起きたらアイテムボックスから食べ物を出して栄養を補い、来るべきに備えろ、だ。


 静かに眠るガイオーグをしばし眺めてから次なる戦士を勧誘すべく行動する。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 良い在野の武将をリクルートできたね! ってか獣人の国あったんか・・。
[良い点] >ほ~ん。国を築けるくらいの知恵と理性はあったんだ。  でももし国を傾ける原因が、最終包囲されたので籠城の際に景気づけに連日連夜宴会をして備蓄を食いつぶして動けなくなった所を戦奴として捕…
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