77 戦奴町
勧誘すること八十八人。その内、六十七人が勧誘に答えてくれた。
獣人の他に人も何人かいたが、犯罪奴隷だったので毒殺刑にしておきました。来世があるなら清く正しく生きなさい。あと、神に会ったらファーなクーのユーしておいて。
まあ、そんなのはどうでもよくて、新グランディール傭兵団のメンバーの何人かが言っていた。
戦奴町があり、家族がそこにいると。
ホワイトで福利厚生に厚いグランディール傭兵団としては放ってはおけない。が、今はカイヘンベルクで手一杯。そちらに回せる戦力はない。ってか、獣人を向かわせるのは問題か。助けたのが獣人では差別がさらに悪化しそうだし。
戦奴町はあだ名で、ちゃんとした……って言うのも変だが、自由貿易都市群に連なる町。そして、合法化されてるらしい。犯罪はダメ、絶対。
なんて、犯罪はバレなきゃ犯罪にはならないと言う悲しい真実がある。ほんと、世は不条理だよね。誰か正して欲しいぜ。
「イビスにやらせるか」
なんかそう言うの得意そうな感じがする。
イビスにつけてる万能偵察ポッドに意識を移す。新しい万能偵察ポッドはガイオーグにつけておこう。ちょっとリーダーっぽい位置にいるみたいだからな。
で、イビスちゃんは……寝てました。
教会の鐘つきに上がったところで力尽きて寝落ちしたって感じだな。
「イビス。起きて」
「──っ!?」
前世、デュークなサーティーンだったのか、熟睡してただろうにすぐに起きて万能偵察ポッドに弾丸を撃ち込みやがった。
「撃つなら確かめてからにして」
こいつとは同じ部屋では寝ないと固く心に決めました。
「す、すまない。頭が朦朧としていた」
朦朧になった原因としては強く言えないので流しておこう。
「熟練度は上がった?」
「まだ自分が思うレベルにはなってないが、合格点は出してもらえるくらいには上がったと思う」
なんてシニカルに笑うイビスちゃん。七歳の少女の皮を被ったバケモノめ。
「それはなにより。なら、次の段階に移る」
「……悪魔だってもっと優しいと思うんだ……」
「ごめん。悪魔になったことないからわからない。でも、人の優しさなら知ってる」
教えてやろうか? 人の優しさってやつをよ。ウフ。
「ノーサーだ、ボス。知らない幸せを行使させてもらうよ」
それが賢い選択ってもんだ、お嬢ちゃん。
「イビスには別任務をやってもらう。拒否権はある」
「あるのかい。そこはないがお約束だろうに」
お約束を知ってるお前の前世が気になってしょうがねーよ。まあ、訊いたりはしないけど。
「グランディール傭兵団は、好まぬ仕事はしなくてもいい」
騙したり煽てたりエサで釣ったりはするがな。
「……まったく、絡み難いボスだよ……」
生理的に無理! でなければなんでもいいよ。アレ、結構精神的に来るものがあるからな……。
「オッケーボス。なんなりと仕事を振ってくれ」
「素直すぎる部下も絡み難いものがある」
「仕事を正しく評価してくれるボスは貴重だからな。捨てられないようにするのが賢い部下の在り方さ」
どんだけブラックなところにいたんだ? まあ、火薬の臭いがプンプンするところだろうけどよ。
「そう。賢い部下に捨てられないようにこちらも気をつける」
優秀な上司でありたいと思うが、そこまで自分を優秀とは思えない。失敗もすればバカもする。それで優秀と思えるほどオレは自信家じゃないんでな。
「で、任務は?」
「バルガドと言う町にいって戦奴とされる者、またはその家族等を救出して欲しい」
「それはまた大仕事だ。わたし一人でか?」
「案内人と補佐を五人つける。イビスは関係者の排除。逃亡の際、追っ手がいたら撃退をして」
亜人たちを食い物にしていた者に慈悲はなし。オレに食われろだ。
「殲滅かい?」
冷たく笑うイビス。戦争屋の顔だな。いや、戦争屋と会ったことないけど。
「殲滅は殲滅だけど、銃は追っ手の撃退時だけ。町での銃使用は禁止。イビスの仕業だとは知られたくない」
「ふふ。まさかナイフ一つで立ち回れ、ってワケじゃないんだろ?」
「できるならそれでも構わない」
「無理だ。ナイフの扱いは人並みなんでな」
人並みがどこの層を差してるかは言わずもがな、だね。
「これを」
初遭遇したとき、イビスが持っていたライフル銃を出現させる。
「レミントン……ではないな。サイズが違うし……」
「リン、銃は詳しくない。雑なのは許して」
気軽に銃に触れられる国の人じゃなかったんでね。
「それは魔銃。魔弾を撃つ。イビスの魔力次第で威力弾数が決まる。あと、能力上昇や調整もできる」
魔銃をつかみ、具合を確かめ始めた。
「こんなもんか」
職人のような目で魔銃を調整し、自分の体に合わせた感じにしてからの一言。
「汚れ仕事を押しつける」
「汚されるより汚すほうが幾万倍もマシさ」
イビスもねーちゃんと同じく男嫌いになっちゃった感じだな。
「報酬はなにがいい?」
用意できるものなら用意はする。
「なら、怯えず、ゆっくり眠れる場所をくれ。今のわたしにが一番求めるものだ」
うん。よくわかるよ。その気持ちは。
「わかった。用意しよう」
「フフ。俄然やる気が出て来たよ」
「案内人との集合場所まで万能偵察ポッドが案内する。作戦に問題があるならいつでも連絡して。可能な限り答える」
「了解だ、ボス」
不敵に笑うイビス。本当に優秀な部下がいるって頼もしいよ。
「さあ、仕事の時間だ」
先ほどまでの疲れを感じさせず、鐘つき部屋から出ていった。
グッドラック、イビスちゃん。




