74 命の大切さ
ハイ、ただいま戻りましたよっと。ふぅ~。疲れた。
シルバーから降り、大地にへたり込んだ。
「リン様、大丈夫ですか?」
「ちょっと疲れた。帰って来た皆に食事を与えて」
まずは働いてくれた皆を労いましょう。グランディール傭兵団のために働いてくれたんだからよ。
「リン様。水をどうぞ」
差し出された水をもらいいっき飲み。うん。動いたあとの水は最高に美味しいぜ。
このまま寝てしまいたいが、帰って来た者を放置はできないと、食べているところに向かう。
「ケガした者はいる?」
「いいえ。ケガ人はいません。死人は出ましたが……」
なんてしんみりした風を装う皆さん。演技派じゃない。
「……そう。弔ってあげて」
蒸留酒が入った樽を出し、杯に注いで掲げる。
オレのアドリブに皆も乗ってくれ、樽から杯に酒を注ぎ、オレと同じく杯を掲げ出す。
「勇敢に戦い見事に散った英霊たちに捧げる」
皆に酒がいき渡り、掲げたところで言葉を紡いだ。
「勝利を!」
杯に入った酒を大地に叩きつけた。
「勝利を!」
ジェスが続き、皆もそれに習った。
「死んだ者たちが羨むくらい騒ぐといい」
しんみり見送るより派手に見送れと、ビールのタンクを出してやる。仕事上がりの一杯を楽しめ、だ。
オレは酒が飲めないのでテントに下がり、温かいココアをいただきます。
テントに入ると、ねーちゃんがぶっ倒れていた。死んでる?
「……死ぬかと思った……」
「命の大切さを学んでなにより」
非難の目を向けるねーちゃんに構わずオレもクッションに座り、ホットココアを出して一息する。
「あたしにも! あと、お菓子!」
ハイハイ。なんでもどうぞ。と、ホットココアと今日の働きを讃えてイチゴ大福を出してあげた。
「もっと!」
ハイハイ。飽きるまで食べんしゃいと、お皿に山盛りにして出してあげた。
両手にイチゴ大福を手にしてやんちゃ食いしてるねーちゃんを眺めていると、シルバーがテントに顔を突っ込んで来た。
「ガウ」
お、来たか。さて。教会にいたヤツになんて言われたかな?
テントから出ると、雇い主さんとじーちゃんがいた。
「……無事だったか……」
「……よかった……」
オレの姿を見て安堵する二人。おや、心配しててくれたのかい? それは嬉しいね。まあ、打算とか商売上のことだろうけど。
「半分も死んだ」
なにはともあれ空気を読んでしんみりしておく。
「すまんな。無茶な依頼をして」
「いい。仕事は仕事。受けたからには遂行するのがグランディール傭兵団。報酬以上の成果を出す」
仕事に対するオレのスタンスは生まれ変わっても変わらないのだ。
「……その歳で言われると、こちらの立つ瀬がないな……」
「これはリンの考え。周りに要求はしない」
考慮はさせてもらうけど。
「疲れているところ申し訳ないが、報告してもらえるか?」
ほいほい。畏まりました。
六人用のテーブルに場を移し、そこにテーブルいっぱいのカイヘンベルクの地図を敷いた。
「……これは、お前さんが作ったのか……?」
「うん。リンが創った」
作ったと創ったに差はあるけど、言わなきゃわからないのだから問題ナッスィング。
「ず、随分と細かいな」
「皆が頑張ってくれたからできた」
物資回収に専念してくれたからマッピングに集中……できたりできなかったりでしたね。スンマセン!
「生き残りから聞いたが、中は死霊で溢れているそうだな」
「町に住む者は死霊になったと思ったほうがいい。死霊は音と、たぶん、生きてる者にも反応する。対策としては音で引きよせて魔法の一撃で倒すといい」
まあ、そう重要な情報ではないが、知っていれば対処が楽になるだろうよ。
「そこまで調べたのか」
「死霊は一度溢れていると燃やすしかないですからね」
「それは間違い。燃やしただけでは問題の解決になってない」
オレの言葉にギョッとするお二人さん。まあ、鑑定できなきゃそうだろうよ。
「……それはどう言うことじゃ?」
「死体を操っているのはウイ──呪い。体を燃やしても呪いは残る。呪いは幽霊──呪霊となって人を害する。死霊が出た場所では呪霊が出るんじゃない?」
答えは沈黙で返って来た。
「呪霊を退治する方法はある?」
「……あるにはある。が、使い手は少ない……」
ふ~ん。使い手ね。前の転生者が創ったのかな?
「少なくても今回はいい。前に創った薬、実は聖水。呪いを祓う水。あれを使えば呪霊はなんとかなる」
「あ、あれが!? では、病気ではなかったのか!」
「そう。一度抵抗力がついた者なら呪霊の呪いには効かない。よほどの呪いでなければ……」
「他に、問題がありそうな口振りじゃの」
「問題ありまくり。それを許したバカを呪い殺したいくらい」
リンちゃんプンプンと怒ってみせる。
「死霊や呪霊は聖水でなんとかなる。でも、呪いの元だか素が死体をビジューナー……ビジューナーってわかる?」
通称になってるんだから知って……ないような顔してるね。ハァ~。
「……その表情からして、よくないもの、らしいな……」
「最悪。まだ死霊や呪霊を相手するのが楽。ビジューナーは死霊と呪霊を足したようなもの。抵抗力のある者も近よれないと思う。抵抗力のある者が二人も死んだ……」
俯き、テーブルを蹴る。怒りをぶつけるように。
「もしかして、あの轟音は……」
「極大爆発魔法でなんとか倒した」
なんてウソを平気で吐くリンちゃん。悪い子~。
「今日の偵察で調べられたのは第二壁内だけ。第一壁内にねーが入ったけど、呪霊だらけ。奥まではいけなかった」
充分な偵察だったろう。どうよ?
「わかった。充分な偵察だったと思う」
充分な評価、ありがとうございまぁ~す。




