68 死霊(ウイルス)
アイテムボックスにサッと収納、サッと撤収、ササッとな~。
ムフフ。あるわあるわの大量物資。宝クジを三回くらい当てた気分です。
「火事場泥棒って知ってる?」
「知ってる知ってる。火事が起こってから泥棒するやつな」
火事が起こる前に奪ってるオレには関係ないけど。
「放火って知ってる?」
「知ってる知ってる。人の住む家に火つけるやつな」
人のいない廃屋を焼却するオレには関係ないけど。
ってか、死霊が邪魔だな。どっから涌いてくんだよ!
「いや、町の人たちがそのまま死霊になったんだからたくさんいるに決まってるでしょうが」
言われてみればそうでした。物欲に目が眩んで頭が働きませんでした。
うん。ねーちゃんもやってるんだから少し落ち着こうではないか。
「リリー。回収お願い。オレは頭を働かせるからよ」
物資回収の他にもオレにはやることがあるのだよ。
なんかの商会の店を借り、万能偵察ポッドを八個を創り出し、町へと放つ。
偵察ポッドが見たものを映すモニターを二十個ばかり創り出した。
「死霊ばかりだな」
念のためと、鑑定で確かめるが、生きてる者はいない。呪い──いや、ウイルスによって動かされていた。
カイヘンベルクにもウイルスが満ちており、抵抗力がなければ殺されるレベルであった。
「致死レベルが町の中だけで止められている、か。やっぱり、なんかいるな」
「死霊が活動できるよう領域化されたかもね」
領域化? なんやそれ?
「所謂ボスが生まれてここを自分の縄張りとしたってことよ」
そんなもんがいんのか~い。
「邪神の揺り籠は将棋やチェスの駒だと思えばいいわ。まあ、駒をいくつ待ってるかまでは知らないけど、世界を盤にして置いていくのよ」
それに対抗すべくオレたちが盤に配置されたってことか? 笑えねーな。
「駒任せのクソなゲームだな」
だからって指し手に動かされるのもクソだけどよ。
「そうね。お互い勝手なルールでやってるんだから」
「天使が神様批判か?」
「天使だって愚痴りたくなるときもあるわよ。守護天使を馬車馬のように働かせる子に降ろすんだからね」
おっと。薮蛇でした。サーセン。
「ウイルスを浄化させても元を絶たなきゃダメか」
万能偵察ポッドにも一応浄化機能はつけたが、家庭用の空気清浄機で大気汚染に挑むようなもんだわな。気休めにもならんな。
「汚物は火で消毒できてもウイルスは消せないとか、外道すぎるわ」
まったく効果はないとは言えんが、元を絶たないとダメなんだから時間稼ぎしかないだろうよ。
しかし、呪いで人を動かせるってスゴい不思議だよな。まあ、魔法もそうなんだが、エコロジー? なエネルギーだ。
「町は意外と荒らされてないな」
争った跡はあちこちに見て取れるが、世紀末な感じはない。直せばすぐに暮らせるだろうよ。
「再利用できないのが悲しいぜ」
薪がないとよく燃えないからな。
「じゃあ、ポッドが落としてる筒はなにかしら?」
「消毒液かな?」
「なぜ疑問?」
訊くのは野暮ってもんだよリリーちゃん。
万能偵察ポッドにより町の地図ができあがっていく。グーグルカーも真っ青である。
「ねえ。なぜ地図なんか作るの?」
「正しい作戦をするには正しい地図が必要なの」
知らない町で迷子になったら支障が出るしょ。
じーちゃんからもらった地図を元に新しい地図が四割ほど作成される。
本当は建物の中も調べたいが、さすがに時間がかかるので建物配置だけにしておく。中はジェスたちに期待、だな。
「ん? なんだ?」
万能偵察ポッドの一つがオレの意識から消失してしまった。
「なにが起こった?」
その万能偵察ポッドが消失する直前の映像をモニターに映し出す。
「なんだ? なんも映ってないぞ?」
町並みや死霊が映ってるだけで、消失した理由らしきものが映ってない。なんなんだ、いったい?
「皆。問題発生。今から指示する場所に向かって」
防御力ないが、万能偵察ポッドを破壊できるなにかがいるのは確か。放置はできない。
「死霊が壊したのかしら?」
「それならとっくに襲われてる」
鑑定するとき死霊の周りを飛んだが、万能偵察ポッドを認識してなかった感じだ。たぶん、生命体にしか反応しないのだろう。
……人を動かす力はあっても五感を働かすまでは高性能じゃないらしいな……。
万能偵察ポッドから各自につけた偵察ポッドの画像に切り換える。
一番先に到達しそうな者は、バイアルとシャリーラ偵察ポッドか。
空中に浮かべるモニターを近くによせる。
「バイアル。シャリーラ。そこで停止。周囲に注意して」
二つの映像が止まり、物陰に隠れた。
偵察ポッドの角度を変えて辺りを見回す。
住宅地? なのかわからんが、家が密集したところだ。
「そのまま隠れてて」
バイアルの偵察ポッドを前進させた──ら、画像が消えてしまった。また消失?
「なにが起こったの?」
「わ、わかりません。突然破裂しました」
「なにか当たったように見えました。あと、なにか音がしました」
音? なんの音だ?
わからんのなら偵察ポッドに音を聞き取る機能をつけるまでだ。
「シャリーラ。よく見てて」
シャリーラの偵察ポッドに魔力バリアをかけて前進──映像が揺れ、乾いた音が響いた。
「前方やや右。上のほうからなにかが飛んで来ました」
その方向を見ると、教会? 寺院? らしき建物があった。
……そう言えば、宗教とか考えたことなかったわ……。
信じられてるのがあの神かは知らんが、神から非道なことされてる者としては嫌悪しかねーな。
「バイアル。面をつけて囮になって。魔力バリアを破れないのならスーツの防御力でも大丈夫だから」
ダメだったらごめんなさい。
「シャリーラは偵察ポッドを盾にしてどこから飛んで来たかを正確に確認」
バイアルに合図を送り、二秒遅れてシャリーラを偵察ポッドの陰に出させる。
オレもシャリーラだけに頼らず辺りに目を走らす。
パンと乾いた音がする。
「教会の鐘つきに誰かいます」
偵察ポッドをそちらに向けて映像を拡大。そこにはライフル銃らしきものを構えた七、八歳くらいの少女がいた。




