63 初陣へ
依頼は思いの外早くやって来た。
ってか、次の日です。じーちゃんの孫が護衛二人を連れてやって来たのだ。早すぎるよー!
「すまない。急用なんだ」
だろうね。急いで来た感がありありだし。オバチャン。お水を差し上げて。
「さっそくで申し訳ないが、グランディール傭兵団に依頼を出したい」
水を渡して飲んだと思ったらすぐに切り出した。
「人数と日にち、報酬は?」
と、尋ねたら言葉に詰まる孫。考えてこなかったんかいな?
「それはあとで相談と言うことでお願いしたい。非常事態なんだ」
だからこそ決めて来いよ。口約束はのちの諍いになるんだからよ。
「じゃあ、これに署名して」
「……白紙……?」
「あなたが地位を得たときに払ってもらう」
出世払いやで。そして、魔法の契約書や。きっちり払ってもらいまっせ。
「…………」
「決断は速やかに。出世がしたいのなら」
ここにあんさんの手駒がありまっせ。自由に使いんしゃい。もちろん、もらうもんはもらいまっけどな。ケッケッケッ。
「……わかった……」
決断、ありがとうごさいまーす!
「ジェス。脚の早い者を十名ほどカイヘンベルクに先行させて。拠点を構築。必要があれば死霊を排除していい」
横に来たジェスに指示を出す。
「オベリク隊とバウンダー隊、いけ!」
その二人が「おう!」と応え、十二名が駆けていった。
「あなたは向かうの?」
ってか、あなたお名前なんて言うの? 名乗れや。つーか、じーちゃんの名前も知らねーや。名前知らなくてよくやって来れたよな、オレ!
「ああ。冬の風邪の被害が酷くて人が足りてないんだ」
「薬、効かなかった?」
町は一人も死んでないってばーちゃんが言ってたぞ。
「いや、薬を買わない者がいたんだよ」
「敵対勢力?」
「……君は、本当によく見えてるな……」
普通に生きてれば誰でもわかることだろう。ましてやこの時代で自由なんぞ謳ってるところなら派閥だらけだろうに。
「敵対勢力、と言うほどでもないが、あまり先を見る目がない者たちさ。そのせいで風邪でたくさんの人が死に、死霊まで溢れさせた。度し難いものだ」
さらに度し難いのは邪神だ。あの呪いは、人の愚かさをついてきたのだから。
「このままいくの?」
戦う姿でも戦場にいく格好でもないけど。会議からそのまま来ましたって格好だ。
「できれば君たちと一緒にいけたらと思う。わたし個人に武力がないので」
まあ、あったらここには来ないか。
「グランディール傭兵団は乗り物ない。それでいいのなら好きにするといい」
オレはシルバーに跨がっていくけどね!
「ハリュシュ。二番隊、先に出て。拠点防衛。あと、この人の護衛も」
獣人ほどスピードはないが、エルフも結構脚が速いのだ。
「一緒でなくていいのかい? 小出しは危険だよ」
別に逐次投入するワケじゃないし、すぐ戦闘とか御免である。
「ハリュシュたちなら大丈夫。無茶な戦いはしない」
って信じてるからね。吶喊! とか止めてよね。
「任せて。グランディール傭兵団の名を汚す様なことはしないわ」
まだグランディールの名に価値はないが、悪名にならないことを切に願います。マジで。
「またあとで」
にーちゃんはハリュシュにお任せ。無事、戦場に届けてね。
「二番隊はリヤカーに食料と水、薪を積んで。状況によっては柵を作るかもしれないから道具も積んで。万全にしたら出発して」
二番隊はドワーフの隊で、戦闘と工作を得意とした隊だ。
「了解じゃ」
あまりドワーフとは接点がないので隊長のカイドっておっちゃんがどんなヤツかは知らないが、ジェスの話では頼りになるおっちゃんとのことだ。
「ジェス。一番隊のーー」
「リン! あたしもいく!」
と、完全武装のねーちゃん登場。ついて来る宣言が出ました。
「ミューリーを一人にしていいの?」
一応、説得してみる。
「安全だからいくんでしょう」
さすがお姉様。妹のことを良く知ってますこと。
そう。オレが自分の領域を無防備にするワケがないし、対策は二重三重に仕込んである。
さらに四番隊は最凶無敵のオバチャン隊。鉄より堅い棍棒に守りの指輪をさせている。前に来た傭兵団でも優しくあの世に送ってくれるだろうよ。
「わかった。けど、単独行動はダメ。リンの言うこと聞いて」
死にはしないだろうが、場を乱されるのは困る。ねーちゃんの左右の指には光の指輪が嵌められてるんだからさ。
「わかってる。もう昔のように考えなしじゃないよ」
そうであってくれれば良いのだが、失敗しないのもそれはそれで困ったもの。いつものように成るように成るだ。
「ジェス。ジェスの脚だとカイヘンベルクまで何日?」
外回りは歩いて三日ほどって言ってたが。
「全力を出せば半日です」
前にシルバーくらい出せるとは言ってたから百キロくらいか。まったく、レベルアップはスゲーよ。
……そんな体にしたオレを責めないでね……。
「脚の速い五名を選んで。今日中に半分は進む。残りは二番隊の護衛」
言ってシルバーに跨がる。
今は午前の十時くらい。皆の体力も十二分にあるはず。オレはないからシルバーの背で寝かしてもらうけどね。
「わかりました」
「シルバー、ハイヨー!」
「ガウゥゥゥ!」
さあ、グランディール傭兵団の初陣だ!




