34 DIY
春まであと少し。気温も昼には二十度近くなる日も出て来た。
雪ウサギやオールダーはもう出なくなり、ゴブリンがちらほらと現れてはジェスたちに瞬殺され、雪ウサギの胃へと消えている。
「……雪ウサギの毛、灰色になっちゃった……」
オレが体質を変えたからか、元からそうなのか、あの白さは失われてしまった。まあ、希少価値が出るからよしとしよう。灰色だって使い道はたくさんあるんだからな。
「オールダーは逆に毛が生えたな。栄養がいいからか?」
囲いに入れて放置なんだがな。どんだけコスパがいいんだよ。増やしたくなるだろうが。
「さて。畑を耕すか」
春植えの豆は今からが勝負なのだ。
「シルバー頑張れ~」
耕すのはシルバーのお仕事。オレは見てるだけ。楽になったもんである。
シルバーを従魔にするまでは手頃な枝で地道に耕していた。
畳一枚分を耕すのにも二日かかり、手まめに苦しんでいたもんよ。それが一時間もしないで終了である。従魔の利器に感謝しよう。
畝を作り、豆を等間隔に植えていく。夏に美味しい豆を実らせてくれよ。
実ったところを想像していると、なにやら荷物を背負ったジェスとその仲間(同族)がやって来た。お出かけでーすかー? レレレのレ~。
「里に戻る」
里? ああ、帰省するってことね。前に貯まった魔力を売りに来たとき言ってましたね。まあ気をつけていってらっしゃい。ってか、ネイリーたちは帰らんの?
「ネイリーたちはここに残す。やることがあるんでな」
そうですか。まあ、オレには関係ないこと。ご勝手に~だ。
畑仕事が終わればレンガ創りだ。
──レンガなんてどうすんのよ?
家をリフォーム──いや、増築するためさ!
親子三人慎ましく生きるなら八畳間くらいの広さでも充分だろうが、生憎オレは前世と同じ暮らしがしたい。毎日清潔にして、毎日風呂に入って、毎日美味しい食事がしたいんだよ。
物のない生活結構。質素倹約大いに結構。だが、オレは超絶結構(ノーサンキューって意味ね)。物がある生活がしたいんだよ! オレは完全無欠に物欲にまみれてんだよ!
椅子も欲しい。ソファーも欲しい。タンスにクローゼットにベッドも欲しい。冷蔵庫だってレンジだって炊飯器だって欲しい。欲しい物がありすぎて気が狂いそうだわ!
生き残るために選んだ手のひらの創造魔法だが、生活をよくするためも含まれている。ならば使うしかないじゃない。遠慮する必要ないじゃない。オレはオレのために生きてるのだからな。
でも、邪神に目をつけられ……たかもしれないけど、密やかに生きていこうとは思います。
なので、増築は地下にする所存です。
川の土手から粘土を採取し、左の袖口から吸収。ローブ内のアイテム工房で燃焼。完成したら右の袖口から排出する。
レンガ創りマシーンと化して三日。一万個のレンガができた。
ってか、出す意味あったん?
「…………」
そう言うことは早く言えや! 無駄なことしちまっただろうが!
クソ。創ることに夢中で気がつかんかったわ。
また入れるのも面倒だし、外で使う用にするか。なにに使うかは考えてないけど。
気分一新。また三日かけて二万個のレンガを創った。無駄に熟練度を上げてしまったな。あと、自然破壊の腕もな……。
ま、まあ、あるに越したことはない。んじゃ、増築開始といきましょうか。
家の裏から地下に掘り進め、一メートルくらい毎にレンガを積んでいく。素人作りなんで大目に見てね。
吸引力が増したので簡単に掘り進める(?)ことができ、一日で居間になるところができた。
「ん~二十畳は広すぎたか?」
まあ、親子三人には広すぎかもしれんが、シルバーも住まわせたらちょうどよくなるだろう。ソファーや家具も置くんだしな。
居間から今度は個人部屋と物置部屋を作る。広さは八畳くらいでいいだろう。余分な荷物を物置に入れればいいんだしな。
「あ、換気口を作らないとダメか。一酸化炭素中毒になっちゃう」
それに湿気のことも考えなくちゃダメか。う~ん。地下にするといろいろ問題が出て来るぜ。
それでもめげずに作り進め、春の到来までには完成できた。
あとは、居間から地上の家に繋げる階段を繋げれば完成だな。
階段を作っていくと、突然崩壊。ねーちゃんが落ちて来た。なんでや!?
「な、なにしてんの?」
ってか、なんかやつれてね? あ、増築かまけてねーちゃんの存在忘れてたわ。
「……お腹空いた……」
自分で用意して食べなよ。と言っても無駄か。どこか見知らぬ世界にイッちゃってたもんね。
家の中で餓死とか笑えんが、空腹のお陰で見知らぬ世界から帰って来たのだからよしとしよう。
「ねーちゃん、また牧場にいくの?」
「牧場? まだ冬でしょう。なに言ってんのよ」
なに言ってんのはねーちゃんだよと、外に連れていく。
「……いつの間にか春になってる。なんで……?」
バカな姉とアホな妹のせいだよ。ほら、しっかりして。あと、臭いから風呂に入って。
強制的に風呂に放り込み、綺麗さっぱりに磨き上げる。もう九歳なんだから身嗜みに注意しなさい。
「……なに、この服? 派手じゃない……?」
「ねーちゃんのために作った服だよ。カッコイイでしょ?」
ちょい未来風だが、性能は超絶風味だ。シルバーに踏まれてもだいじょーブイ!
「ねーちゃん、光の指輪、どんだけ魔力を貯めたの? 能力開示でわかるから」
「光の指輪? これのこと?」
そう、それのこと。せっかく命名したんだから覚えてよね。
「え、えーと、能力開示。あ、八割貯まってる」
八割も貯めたのか。異常なねーちゃんだ。いや、異常にしたのオレだけど!
「それなら最大で二発は撃てるけど、撃つとヤバイから必殺にしてね。出力を抑えたら八十回は撃てるよ。その辺の調整や威力確認は自分でやってね」
人のいないところで、建物がない方向に撃ってね。リンとの約束だよ。
「あと、剣。ソードロードって言う特殊才能があるんだからしっかり練習すること。光の指輪ばかりにかまけてちゃいけないんだからね」
ねーちゃんの肩にはオレの幸せがかかってるんだからしっかりしてよ。
「わ、わかってる。しっかり練習するよ」
わかればよろしい。んじゃ、友達のところにいって来な。ねーちゃんをより人らしくさせてくれる人のところへ、ね。
「あ、ああ。じゃあ、いって来る」
ハイ、いってらっしゃい。と、ねーちゃんを見送る。
「さあ、DIY幼女リン。続きをガンバリますかね!」




