33 モフモフー
寒さが和らぎ、雪解けが始まって来た。
それに合わせて雪ウサギやオールダーも消えていく。
「……雪があっても気温が十度を超えると死ぬのか……」
鑑定では雪とともに消えると書いてあったから溶けるのかと思い、三匹ずつ生け捕りにしてもらい、確認のために観察してたのだ。
「鑑定なんだから比喩的な表現止めろや」
誰だよ、鑑定に書いてんの? 神か? 天使か? なんでもいいがアカシックレコードはちゃんと書けや。見るヤツが困るだろうが。
まあ、とりあえず手のひらの創造魔法で二十度まで大丈夫な体に改造してみる。次は食だな。
「肉食はわかってんだよ。なんの肉かを教えろよ。肉全般って適当すぎんだろうが」
とりあえず、共食いは倫理的にも心情的にもイヤなのでオールダーの肉(ドッグフード的な感じにしたもの)を与えてみた。
「食うことは食うが、空腹だから仕方がなく食ってる感じがするな……」
しばらく様子を見るが、やはり味の薄いオールダーは口に合わない様だ。
他の肉と言ったらゴブリンか。ゴブリンの死体ならなんかの役に立つかと思って何体かアイテムボックスに入れてはあるが、ゴブリンを食って育った雪ウサギは食いたくねーなー。
でも、オレが食うんじゃなければ構わんか。ここには飼料表示義務はないんだからよ。
「うわ~。美味そうに食いやがるぜ」
ドン引きである。ウサギがゴブリンに食らいついている図と言うのは。子どもが見たら泣くぞ。おっと。お前も子どもじゃんとかは止めてくれよ。
「ケフと満足そうなのが腹立つな」
しかも、体を丸めて眠ってしまった。案外図太いのな、こいつら。
まあ、丈夫に育ってオレを富ましてくれるのならなんでもいいわ。
ちなみに雪ウサギにも雌雄はあり、繁殖も可能のこと。こいつらが生んでくれたら家畜化できるんだがな。
「問題はオールダーだよ。たんなるネズミじゃん」
檻の中でネズミ算とばかりに仔が群れている。
オールダーは冬になると変身して、春夏秋は虫とか食って隠れながら生きてるそうだ。
「こいつらはゴブリンの餌だな」
虫寄せの石を適当に置いておけば手間いらずだ。いや、フンとかするのでたまには掃除するけどね。
「家畜業とか、やると大変でしかないな……」
それでも魔物ありきの生活習慣は危険だ。いついなくなるかわからないものに頼れん。いなくなった時点で詰むわ。
「畑も広めたいが、オレ一人じゃこれが限界だしな」
手のひらの創造魔法で手間を省いてはいるが、テニスコート二面分の畑では三人の胃を満たすことはできない。この三倍は欲しいぜ。
……まったく、チートがあっても生き辛い世界だぜ……。
なんて嘆いても仕方がない。今日を精一杯生きようではないか。幸せな明日がやって来ると信じてな。
だが、信じても救われないのがこのご時世。春もそこまでだって言うのに猛吹雪。外に出るのも大変って日が四日も続いた。
まあ、こんなときもあると諦め、嵐が去るまでじっと我慢の子、である。
春に向けて新しい服をチクチク縫っていると、家のドアが叩かれる。なんや? 雪女の来襲か?
こんなときのねーちゃんだが、今日も今日とて魔力注入でどこかの世界にトリップしている。春までは帰って来て欲しいもんだ。
「誰かしらね?」
危機感をどこかに消失させたかーちゃんが立ち上がり、ドアを開けてしまった。無用心すぎんでしょうが!?
ちなみにオレは、ちょうど針仕事していたのですぐに動けなかたのよ。
「あら、ジェスさん。どうしたの?」
これもちなみにだが、ドアを開けても雪が入って来ない様にしてあります。
「……すまない。仲間が熱を出してしまった。薬を譲って欲しい……」
声の強弱からして切羽詰まった状況の様だ。
「リン。薬だって」
かーちゃんの中ではオレは六歳児に見えないらしい。ってまあ、いろいろやらかしてたら見えんか。軽い洗脳もしてるしネ。
「なんの薬?」
熱と言うからには外傷ではないはず。それなら回復薬と言うはずだから。
「……な、なんの薬……?」
うん。答えられるほど医学は発展してないね。ゴメン。聞き方が悪かったよ。
「なんの病気?」
って、これも同じか。なんて言えばいいんだ?
しょうがない。いくしかないか。流行病だったらイヤだしな。
半纏からローブに替え、フードを深く被る。あ、この冬フードにウサギ耳をつけました。デビルなイヤー的な効果はありません。単にオシャレでつけたまでです。
「……すまない……」
「いい」
外は変わらず猛吹雪。よく出て来たもんだ。完全防寒にしても雪ウサギの餌やりにしか出たくないわ。
オールダーは完全放置です。毛を生やして寒さに強くなったので。
ジェスの先導でドロレンガで作られた小屋へと入る。
薄暗くてなにか臭い。冬でこれなら夏はかなり酷いだろうな。
「昨日からネイリーの熱が下がらないんだ」
「下痢してる?」
この臭いはアレだ。察しろ。
「あ、ああ。昨日の夜は酷かった」
鑑定するまでもなく食中毒だろうが、一応、鑑定してみるか。どれ?
「……寄生虫……」
いたんだ。寄生虫。見ないからこの世界には存在しないかと思ったよ。
「寄生虫、とは?」
「小さくて悪い虫、腹にいる」
どこに潜んでた? 雪ウサギか? オールダーか? いや、鳥だった。コダと言う野鳥の様だ。
「な、治るのか!?」
「治る」
寄生虫対策は三歳のときにしてある。駆除魔法で殲滅よ。ドヤ!
「治った」
「すまない。金はいくらだ?」
「いらない」
お披露目できて効果も知れた。その価値だけで充分だ。
「次からはもらう」
寄生虫がいるとなると薬を作らにゃならんな。近場で材料揃えられるといいんだがな。いや、その前にこの臭いとネイリーを清潔にしてやらんといかんか。
「出て。ハリュシュ呼んで。綺麗にする」
女は綺麗に美しく。汚いなどもってのほかである。
追伸。尻尾がモフモフでした。モフー!




