23 女の薬
なんだか忙しくなったもんである。
イケメン獣人さんが広めたのか、回復薬を買いに来る獣人がちょくちょく来るようになったのだ。
ゴブリン駆除や蜂蜜採取などあるのに、薬草採取までやることになるとか五歳児の仕事量じゃねーよ。
とは言え、支払いが魔石なので断ることもできない。冒険者ギルドに拒否でもされてるのかわからないが、獣人たちは金より魔石払いのほうが喜ぶのだ。
今日も今日とて回復薬がソールドアウト。買えない獣人さんがトボトボ帰っていった。
こっちはトホホである。せっかくの儲けなのに五歳児の身では大した量は集められないのだ。魔力回復の薬草も集めにゃならんのだからよ。
それでも魔石は欲しいので頑張って採取はするが、なにか方法を考えないと過労死してしまうぞ。
オレよ。ここは知恵の見せどころだ!
ってまあ、知恵を見せるまでもなく、自分がいけないのなら誰かに採って来てもらうまでなんだがな。
お得意さんとなったイケメン獣人、ジェスに背負い籠を渡す。
「薬草いっぱい」
「……集めて来いと?」
長……くもない付き合いだけど、何度もやり取りしてるからオレの真意はわかってくれるのだ。たぶん。きっと。そう思う……。
「わかった」
なんの躊躇いも疑問も見せずに薬草採りへと出かけていった。
そして、次の日。ジェスとその仲間が背負い籠いっぱいの薬草を持って来た。計八つも……。
ジェスさんよぉ~。オレが説明不足なのは認めるが、あなたも大概理解不足だよね。他だったら一悶着起きてるよ。
まあ、あるんならすべていただきますがね。
左の袖口から一籠分の薬草を吸引。亜空間で選別。回復薬十二個分になりました~。
用意していた銅貨二十二枚を右手に。回復薬四つを左手に持ってジェスに突き出す。
「どっち?」
「支払いは金か回復薬、どっちがいいかってことか?」
「そう」
「薬草の状態はどうだった?」
「まあまあ」
良いものもあれば悪いものもあった。それを一つにして回復薬が十二個できたワケだ。
「回復薬で頼む」
ハイ、毎度あり。残りも清算しちゃいますね~。で、これでどうでしゃろ?
「それでいい。また持って来てもいいか?」
「うん」
と言ったのが悪かったのだろうか? それから薬草を背負い籠いっぱいに持って来やがる。なんなの? 回復薬不足なの? 市場は大丈夫なの?
「なぜ?」
ジェスが来たときに尋ねてみた。
ちなみにジェスは四日に一回くらいの頻度でやって来ます。あと、来るなら午前中にしろとも言ってます。自分の時間も欲しいので。
「ファンブルって城塞都市が災害竜に襲われてな、近隣の村々も壊滅して回復薬が不足してるんだ」
なにやら聞きたくない情報がいくつも出て来ましたー!
神様が出て来た時点でヤバイとは思ってたが、オレが想像するよりヤバイことになってましたよ! どうすんだよ! 城塞都市を襲うようなもんにどうやって戦えって言うんだよ! こっちは素手でもゴブリンを倒せねーってのによ! 滅茶苦茶だわ!
「来る?」
うんって言ったらダッシュで逃げさせていただきます。
「いや、逆のほうにいったよ」
それはなにより。だが、そんな話を聞いた以上、命大事になオレとしては備える必至。なにもしないなんて怖くて夜も寝れんわ。
「ところで、回復薬以外、なにが作れる?」
「月もの」
魔力回復薬は内緒。これまでの情報から魔力回復薬は希少っぽいからだ。
「月もの、とは?」
「女の薬」
獣人の女に効くかは知らんよ。ここに来る獣人、皆男だし。
「あ、ああ。そうか……」
ジェスめ。どうやら童貞のようだな。赤くなりやがって。ウブなヤツめ。
「今度、女を連れて来る。聞いてやってくれ」
それを五歳児に言うなや。とは説得力ねーか。知らなきゃ創れないんだからな。
それから三日後。ジェスと同じ種族の女と……エルフ!? エルフなの!? その長い耳はエルフだよね!! エルフと言って!
と、興奮してしまったが、別にエルフ萌えではない。新たな種族にびっくりしただけです。えらいべっびんさんやね~。
「わたしは、ネイリー」
と、獣人のおねーさん。
「わたしは、ハリュシュよ」
と、エルフのおねーさん。
どちらも見た目は二十歳くらい。でも、苦労してるのかやつれていた。
「リン」
とりあえず、自己紹介に答えた。
無口なオレに戸惑っているようで、どう切り出してよいのかあぐねいている。
「なに?」
オレも暇じゃないんで早くしてくんないかな? 時間がかかるならまたあとにしてと立ち去る。
「──待って! 月ものの薬が作れるって本当なの?」
獣人のおねーさんが素早い動きでオレの前に立ちはだかる。お速いことで。
「人のなら」
「獣人やエルフのは作れない?」
おっ、やはりエルフでしたか。
「……魔石」
「魔石が、なに?」
「必要」
まったく理解できないようだ。まあ、わかったら逆にびっくりだわ。
埒が明かないとネイリーがジェスを呼んで来た。
「なに言ってるかわかんないのよ!」
ジェスに文句を言う。すまんね、ジェスくん。
「魔石必要」
「魔石があればいいんだな?」
「うん」
さすがジェス。オレの通訳は君に決めた!
一度下がったジェスは、一緒に来た一団から魔石を掻き集めて戻って来た。
「好きなだけ使っていい」
気前のいいジェス、ステキ!
魔石を左手に持ち、右手指で>っとネイリーを鑑定。他人の魔石で鑑定するのは美味しいでござる。
「……魔女の眼……」
と、ハリュシュ。鑑定のことを魔女の眼って言うのか?
「わかった。明日」
人とそれほど変わらないようだ。個人差って感じだな。
「シルバー」
「ガウ」
んじゃ、昼飯にするか。あ、ジェス。女性陣への説明は任せたよ。




