196 謎の生命体
「ボロッ」
バリューサ教の教会を見ての感想だ。
教会の体はなんとか保ってるけど、人を入れたら潰れるんじゃないかってくらいボロかった。
「神は見放した、って感じだな」
「主のせいにしないで」
信徒を守れない時点で神のせいやろが。いや、神に見守られて(見張られてか?)というのも嫌だけどな。
「バリューサ教はやる気あんのか?」
これまで一神教だったんだからやりたい放題だろうに。才能ないんじゃね?
「なんの才能よ? リンみたいのがそういたらたまらないわよ」
オレ以上のヤツがいるほうがたまらんわ。
「ってか、人いるのか?」
バイドラの町で雪吸いが一大ムーブメントになってるのに、教会は雪に埋もれている。ただまあ、足跡があるから人の出入りはあるようだな……。
魔女のローブも魔改造してるので、右の袖口から雪を吸って出入をよくした。
「こんにちは~」
と、呼びかけるがなんも反応ナッシング。寝てるのかな?
扉を叩こうにも片方が傾いてて叩いたら外れてしまいそうだし、もう片方は布で塞いである。壁も震度1でも倒れそうなレベルである。
「昔のうちより酷いな」
石組でしっかり造ってあったので嵐にもびくともしなかったし、雪に潰れることもなかった。今考えると結構恵まれてたんだと思うぜ。
「すみませ~ん! 誰かいませんかぁ~!」
しょうがないんで声を上げて知らせたが、やはり反応ナッシング。
>っとサーモグラフィー。
「……いるな、三人……」
二人は一ヶ所に。一人は……あれ? 人じゃなくなった!? なんだ、いったい?!
人の形をしていたのに、一瞬目を離した隙に獣の形になっていた。
──ヤヴァイものがいる!!
すぐに町に放ってある万能偵察ポッドを呼び寄せた。
三十もの万能偵察ポッドを教会の周辺に配置してから扉にかかった布を剥ぎ取った。
「ボクは、ウェルヴィーア教のシスターでスズと申します! 代表者の方はいらっしゃいますか! ご挨拶に参りました」
>っとサーモグラフィーしたまま呼びかけると、二人のほうが動き、獣──狼っぽい形のは回り込もうとして動いている。
「今、いきます」
女性のか細い声が返って来た。
朽ちた礼拝堂の右側にあるドアが開き、灰色の修道服を老婆……ではないな。極貧と苦労で老け込んだ感じだ。なら、年齢はまだ若いなかもしれんな……。
「初めまして。この教会の……方ですか?」
あ、シスターはオレが勝手に決めたもので、ここでの呼び方知らねーや。尼さんか? 修道女か? なんだ?
「はい。ここを任されている会長のマレイアです」
会長? 教会の長だから会長ってことか? いや、なんかこうもっとマシな呼び名はあったんじゃねーの?
「マレイア様ですか。お初にお目にかかります。ボクは、スズ。ウェルヴィーア教のシスターをやっております。ウェルヴィーア教のことはお耳に入っておりますか?」
「……はい。耳にしております……」
ってことは、外の情報を仕入れられる者がいるってことか。
「それはよかった。もうしばらくすると、神の使徒たるシスターリンがこの町にお越しになります。バリューサ教の教えを汚すようなことはせず、邪神が起こした災いを鎮めたいと思います。マレイア様にはどうかご理解ご協力できたらと参りました。これは、教会への寄付としてお受けくださいませ」
魔女のローブから銀貨が入った袋を出し、壊れた椅子の上に置いた。下手な動きをすると、背後に回った謎の生命体に襲われそうだからな。
「見ての通り、我が教会は貧しくしております。理解はできても協力は無理かと思います」
貧しくても誇りと矜持があるようで、凛とした態度と声音で言い切った。
「では、ご理解だけしていただけると幸いです。もし、助けが欲しいときはウェルヴィーア教を頼ってください。ボクたちは信じる神が違えど救いを求める弱き人を救うのが使命。遠慮なくお越しください」
一礼して回れ右。静かに教会をあとにした。




