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ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか  作者: タカハシあん


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190 掌握

 いまさらだけど、この町の名前はバイドラスと言う。


 自由貿易都市群《リビラン》の北部に当たり、森林が広がるところでもある。


 特産はブローブと呼ばれるトナカイっぽいもので、肉や皮、角などを他の町に売ってるそうだ。


 他にもいろいろやってるみたいだけど、そこまで興味があるわけでもないので割愛します。


 町の規模は五千人もいないらしく、丸太の壁に囲われている。冬は雪で閉じ込められるようで、昼間でも町中を往来する人は少なかった。


「なにか襲って来るのか? 夜も見張りが立っていたが」


 オレは疲れ果てて宿屋についてそのまま夢の世界に旅立ったが、元気なイビスちゃんは、夜中偵察に出てたらしいよ。


「冬になると白狼が渡って来るらしいね」


 バイドラスの情報はそれなりに仕入れてます。


「白狼か。昔、狼の群れに襲われたっけ」


 それは前世の話か? この世界のことでか? 君の場合、平和な国の生まれだった者にしては怖くて追及できんから困るよ。


「暇なら狩って来てもいいよ。イビスの出番はないからさ」


 護衛はジェスがいるし、万能偵察ポッドも八十ばかり展開した。邪神側が攻めて来ようが軽く撃退してやるわ。いや、死亡フラグじゃないからね! 誤解しないでよね!


「今はそんな気分じゃないからボスにくっついていくよ」


 気分で狩られる生き物はたまったもんじゃなかろうが、生き物全般そんなもの。嫌なら狩る立場に成り上がれ、だ。


「そんで、どこに向かってるんだい?」


「バイドラスにいる魔女さんのところだよ」


 戦奴町の周りにはバイドラスくらいの町は五つほどあり、ここより近いところもあったが、ここ以外には魔女はいなかった。


 万が一、支援が欲しいときに一番使えるのは魔法教義会だ。まあ、自由貿易都市群《リビラン》全体を網羅してるわけじゃないが、それなりの町には支部があるので、支援してもらうくらいなら充分である。


「さすがファンタジー。魔女が一般的とはな」


「そうでもないよ。ここでも魔女の地位はそれほど高くない。どちらかと言えば胡散臭いと思われてるよ」


 ファンタジーな世界のクセに魔法はそれほど浸透はしていない。


 使える者は多く、冒険者や傭兵にも魔法を使える者は多いが、それは戦いに特化したものばかり。生活にはあまり力を入れてないのだ。


 魔女は魔法や薬、事象を求める集団で、学のない一般人には理解できてない。胡散臭いとしか映らないのだ。


「そんな中で支部を作るんだから魔女って凄いよ」


 権力者にすり寄って自分たちの存在を守って来た。実に見習うべき相手である。


「それを利用するボスが一番凄いと思うけどな」


「ボクなんてまだまだだよ」


 あちらは何百年。こちらは数年。年期が違うよ。


 ウェルヴィーア教も自由貿易都市群《リビラン》を網羅するのに何十年かかるのやら。オレの老後までにはなんとかしたいよ。


「で、魔女はどこにいるんだ?」


「役場の近くらしいよ」


 詳しい場所まではわからないが、魔女がいる場所には魔法教義会の紋章──棘の紋が掲げてあるらしい。


 役場は町の規模にしては小さく、役場と知ってなければ見過ごしてしまいそうになるくらいボロかった。


 町の中心部ながら寂れてんな。指輪物語のロケ地にするには最高かもしれんけどよ。


「あれじゃないか?」


 と、イビスが見つけたようだ。


 胸につけたバッチを外し、なにかの店のドアにある棘の紋と見比べる。いや、それほどじっくり見たことないんですよね。


「そうみたいだね」


 店の前は雪かきされており、オープンを示す看板が出されていた。


「イブリーヌの店、か」


 看板に書かれた商品からして雑貨屋な感じだ。生活費は自分で稼げってこと。なんとも世知辛いこった。


 建物は古いが、建物全体に魔力が張られている。>っと鑑定すると呪術返しと出た。呪術あんの!? マジで?!


 急いで自分にも店に張られたものを張った。いや、店より十倍強いのを張っておこう。これ以上、不幸になるの嫌だし。


 ドアを開けると、鈴が鳴った。


「ドアベルなんてあるんだ。洒落てること」


「まあ、侵入者を報せる意味もあるからな」


 そうなの? 奥ふけーな、ドアベルって。


「あら、いらっしゃい」


「え、マルレイン!?」


 奥から出て来た魔女にびっくらポン。マルレインおねー……いや、見た目年齢四十歳くらいのマルレインおねーさん似のおばさんだった。


「わたしを見て驚くってことはうちの一族を知っているのね」


 マルレインおねーさんの一族どうなってんのよ!? 激似が多すぎだわ! 


「ボクはスズ。見ての通り、魔女です」


「ええ。知ってるわ。魔女通信で連絡が入っているからね」


 魔女、マジパネーです。


「ボクのことも聞いてる?」


「ああ。バルンダ様から可能な限り手を貸せと言われてるわ」


 バルンダさん、本気やね。さすがすり寄り歴が長いだけはある。


「なら、話が早い。この町にシスターリンを呼ぶから力を貸してね」


  ジュアやじーちゃんには伝え、調整してもらっている。一月もあればバイドラスまで来れるはずだ。


「呼ぶって、こんな田舎にかい? しかも雪が積もってるのに」


「問題なし。一月以内には来れるよ」


「……バルンダ様の言った通りだね……」


 どう言ったかは聞かないよ。自分から心を折りにいく主義じゃないしね。


「しかし、こんな田舎に呼んでも受け入れられるとは思わないんだけどね」


「大丈夫。一月あればねっ☆」


 この程度の町なら一月もあれば掌握できるさ。ウフフ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 絶対悪い顔してる……
[良い点] 一ヶ月もあれば町を掌握できるって、怖いわー!w 何が怖いって何も気負いもなくそう思ってて、多分口で言う以上のスピードと効率と深度で実現するだろうと容易に想像できるところが一番怖いっすw
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