179 半年が過ぎる
平和である。
冒険に出て半年。なんのトラブルもなく、最近はなんか漫遊記となりつつある。
もちろん、魔物は出る。が、イビスの弾幕に近づけるものはなく、ジェスの脚から逃れるものはいない。何度か目からビームで狩ったりはしたが、オレ、なんのために冒険に出たんだろう? って考えるほうが多いくらいだ。
「それだけ邪神側は本気だってことだろう」
それがなにより許せない。なんで邪神側にイニシアチブを握られなくちゃならんのだ。
「襲って来いやボケー!」
「……まったく、困ったボスだよ……」
なんてやり取りも何百回だろうな。そろそろ飽きて来たわ。
「ジェス。あっちにいくよ!」
街道を歩いていたが、脇道が現れたからそちらにいくことにした。突発性です!
「……了解……」
肩を竦めながらも反対しないジェス。脇道へと入った。
「ってか。どこに繋がる道なんだ?」
「知らない」
「……そうですか……」
道は人一人歩けるだけの幅しかない。獣道ではなく、人が歩いてできた道なのは間違いない。
……村でもあるのかな……?
「ミカン。魔物に襲われてる女の子とかいる?」
母親が病気で薬草とか採りに出てるとか~。オレの物語にヒロイン登場か?
「半径一キロ内にはいないよ」
クソ。オレには主人公体質はないのか? いや、格好か? ク──ではなく、ウサギになればいいのか? 格好が悪いからイベントに遭遇しないのか?
「リリー。ボスはなにを言ってるんだ?」
「聞きたい?」
「……いや、いい。きっとくだらないことだろうからな」
「それが正解よ」
外野、うるさいよ。暇ならイベント発生を願えよ。
必死にイベント発生を願っていると、なんか廃村っぽいところに出てしまった。
「ゾンビとかいそう!」
「どこを見ればそんな発想にいたるのやら。まあ、ゾンビパニックは好きだな」
そんな告白いらんわ。いや、オレも好きだけど!
「ジェス。なんかいるの?」
なにか険しい顔をしている。
ジェスの感知能力は万能偵察ポッドより高い。もう特殊能力と言っていいくらいだ。
「……なんとも言えん。だが、なにかいる気がする……」
幽霊でもいるのか?
「リリー。わかる?」
幽霊やったら君の管轄やで。
「管轄じゃないわよ。けど、いるわね。不死人が。それもたくさん。と言うか、溢れそうな感じよ」
「不死人? つまりゾンビか」
バイオなハザードになっちゃった感じか?
「頭か? 頭を撃てばいいのか? 銃で大丈夫なのか?」
「いや、思念で動いてる感じだから足を撃ったほうがいいと思うわよ」
「ボス」
「わかってるって。ほら」
ゾンビを倒せるショットガンを渡す。
「弾はイビスに任せる」
「さすがボス」
「……ほんと、地球人ってほんとよくわからないわ……」
それは地球人にしかわからないエンターテイメント。ゾンビを見たらバイオなハザードをしちゃうもんなんだぜ。
「フフ。ミラ・ジョビになった気分だ!」
ショットガンに弾を込めながら嬉しそうに笑うイビスちゃん。アリスと改名するか?
「ジェスはグランディールで食らえばいいから」
食らうものすべて魔力と変換する槍にしたからね。
「ついに御披露目のときが来た」
この日のために考え、創り出した光のグローブ(両手ね)。まあ、光の指輪をグローブにしたもんですね。
ティラウスには効かないんじゃ? とかは心配めさるな。ちゃんと対策はしております。
「と言うか、魔法使いなら杖を使いなさいよ」
オレの能力は手のひらの創造魔法だよ。両手を塞いでどうすんのよ。いつでも手のひらをフリーにしておかなければ対処できんでしょうが。
「で、ゾンビはどこだ?」
それらしい影はなし。
「──来る!」
と、ジェスが叫ぶと、地面から大量の腕が現れ、腐敗具合のよろしいゾンビが
現れた。
「仕込んだヤツ、わかってるぅ~!」
イビスがヒィーハーとばかりにゾンビの群れの中へと突っ込んでいった。
ってか、またオレの出番がなさそうやな……。




