176 侵入者
町に入って宿に入ったのに野宿をしているスズと愉快な仲間たち。冒険とは先が見えないものです……。
「野宿もいいもんだな!」
なんとま晴れやかなイビスちゃん。そりゃ、二十人以上も半殺しにしたら気持ちも晴れるだろうよ。
「そうだな。煩わしいのもいないし、静かに酒が飲める」
ジェスもジェスで晴れやかだし。君はそんなにうっぷんが溜まってたんかい。
「まったく、こっちはベッドで寝たかったってーの!」
「あんなカビ臭いベッドのなにがいいのやら。わたしはごめんだね」
「そうだな。リン様が出してくれたベッドを使ったら他のベッドでは寝たくない」
野宿よりはマシでしょ。ってまあ、野宿ってよりリッチなキャンプな感じになってるけど!
「そう言えば、見張りってどうする?」
「万能偵察ポッドを配置してるから大丈夫だよ」
おっと、そこの君。野宿じゃないのは認めるから抉るような突っ込みは止めておくれ。まあ、突っ込まれてもスルーさせてもらうけど。
「ボスのカレーは美味いな!」
キャンプと言えばカレー。なんて安直な発想で作ったけど、イビスが大喜び。子どもか! いや、体は子どもか。
「作れるならもっと早くカレーを作ってくれればよかったのに!」
「一回作ったけど、ジェスたちに不評だったから作らなかったの」
ドワーフはそうでもないのだが、獣人とエルフは刺激物は苦手で、甘口なら食べられる感じだ。
「ちなみにジェスのはハヤシライスね」
トマトの効いたハヤシライスは獣人の大好物の一つで、週一で作られてたよ。伝道巡回中は週二になってたけど。
「種族によって好むものが違うんだな」
「そうだね。作り分けするのが面倒だったよ」
精神と肉体を別にして考えないといけないんだからたまんないよ。差別とかなって邪神側につけ込まれたらイヤだしさ。
夕飯を食べ、各自まったりしてると、万能偵察ポッドの一つがアラームを鳴らした。え、なに!?
「魔物か?」
すぐにイビスとジェスが反応する。戦争の人は切り替えが速いこと。
「いや、侵入者だ」
侵入者? 山賊か?
町から離れた森の中で野宿と言う名のキャンプをしている。道からも大分離れているから旅人がここまで入って来ることはないはずだ。冒険者も夜に入ることもないそうだから。
「万能偵察ポッドは熱を感知したみたいよ」
なんとも曖昧だが、熱に反応してアラームを鳴らしたのだ。
「ジェス。侵入者なの?」
獣人、とくにジェスの感覚は優れている。下手したら万能偵察ポッドより高いかもしれんな。
「ああ。一人か二人はいる。やけに気配が薄い。手練れだ」
ジェスにそう言わしめる相手か。厄介そうだ。
「よくわかるな。わたしにはまったく感じないぞ」
そこは種族による性能の差だろう。まあ、イビスも人に入れていいか迷う性能してるけど!
「気がつかれたかな?」
オレ、ちょっとびっくりしちゃったよ。気配とか漏れちゃったかな?
「警戒はされたな。気配が消えた」
「わからない?」
「異様に気配消しが上手い。しかも、臭いも周りに紛れている。一流の狩人でもこんなことはできないだろう。魔力の気配は?」
「ん~ないね」
気配は読めないけど、魔力は読めます。
「となれば、技術だけで気配を消してるんだ。ヤバい集団に狙われちゃったかな?」
「邪神以上にヤバいのがいるのか?」
うん。いないね。災害竜を仕掛けたヤツに比べたら暗殺結社でも可愛いもんだ。
「邪神側だったら最高なんだけどね」
取っ捕まえてスズちゃんが優しい魔法で情報を吐き出させてあげる。
「ジェス。方向は?」
「あちらだ」
万能偵察ポッドの一つが反応したのも同じ方向だ。ってことは、警戒して身を静めているってことかな?
「イビス。ジェス。動ける?」
お腹いっぱいで動けないって言ったら飯抜きにするからな。
「問題ない」
「おれもだ」
なら、ご褒美に美味しいデザートを用意してやろう。
「じゃあ、覗きをする悪い子ちゃんを炙り出すよ」
アラームを鳴らした万能偵察ポッドと、周りにいる万能偵察ポッドを連鎖で自爆させる。どっかーんっとな!
「──文字通りかよっ!」
ハイ。死んだら死んだでそれまでの相手とわかりますので。
と言ってもティラウスを吹き飛ばすほどの威力はなく、五、六人は余裕で吹き飛ばすくらいだけどね。
……ハピネスのところでもたくさん使うから自爆の威力を落として生産性を上げたんですよ……。
「生きて捕まえてね。大怪我させてもいいから」
まあ、死んでも頭が残ってたら優しい魔法はかけられるけど、死体に触るのイヤだから生かして捕まえてちょうだいな。
「了解!」
「わかった!」
イビスとジェスが爆煙の中に弾丸ダッシュ。消えたかと思ったらすぐに戻って来た。どったの!?
「ゴブリンだ! あいつ、邪神の揺り籠になりやがった!」
は? え? えぇぇぇえぇえぇぇぇぇっ!!




