143 聖都グランディール(編、だったりしなかったり)
八日をかけて我が家に無事帰宅。これにて災害竜退治を完了しました。
と、報告する相手もなし。ただ、皆に平伏されながら迎えられました。
災害竜退治は万能偵察ポッドを通して見せていたが、まさか神とのやり取りや孫とのやり取りまで見せているとは思わなかった。いや、説明が省けて楽だけどさ……。
「ゴミ虫に頭を下げられる覚えはない」
オレに頭を下げるならまだしもオレの後ろにいる神に頭を下げられるなど虫酸が走る。そんなことするヤツらなどゴミ虫もいいところ。不快でしかないわ。
「立て!」
ジェスが一喝する。
本当ならジェスはハルオン──聖都グランディール(と命名しました)に置いときかったが、オレに従ったからオレにつくと譲らなかったのだ。
ちなみにねーちゃんとミューリーは逃げ出したティラウスを狩るために別行動しました。修行がしたいって言ってね。
「我々は家畜でもなければ虫でもない! 人だ! 人ならば人としての矜持を持て! 神は我々を人として生んでくださったのだ、それを否定することは神の御心に背くと思え!」
ヤベー! こいつが一番の狂信者になりそうだわ!
「人の矜持と人の優しさを忘れないで」
リリーとイビスが「お前が言うな」と目を向けて来るが、人の矜持と優しさを守るためには狡猾さと意地汚さが必要なんですぅ~! 愛で世界は救えないんですぅ~!
「明日、皆に大事な話があるから昼食をとったら広場に集まって」
帰還組に解散を命じてオレらは我が家へと帰った。
「お帰りなさい」
家を任せているミューリーのばーちゃんが迎えてくれた。
……なんかホッとするぜ……。
かーちゃんは仕事に生き甲斐を得たのか、町で暮らしてたまにしか帰って来なくなっている。
別にオレたちを捨てたワケじゃないよ。家はばーちゃんが掃除してくれるし、食事はオバチャン連中がして運んで来てくれる。風呂も二十四時間入り放題。左団扇で暮らせる状況だ。
オレにも母親を敬い感謝する気持ちはあるので楽させてやろうとしたが、宿屋業に生き甲斐を持ったようで、宿屋の女将さんが部屋を用意してくれてそちらに移ったのだ。あ、一年前の夏くらいにだよ。
「ただいま」
と言えるこの幸せ。些細なことに感動できる──なんて喜べるほど単純だったら良かったのに。これは心が病んでるとしか思えねーよ。
「病んでるじゃなく壊れてるんじゃない?」
そんな突っ込みに返すのも面倒なのでスルーします。
「お風呂に入る」
今はなにも考えず休みたい。八歳児の脳には負担すぎるわ……。
「わたしも入る」
「襲って来たら殺すから」
少女に襲われる趣味はないし、同性愛者でもない。だからと言って異性愛者でもないから勘違いしないでよね!
「わたしに少女趣味はない!」
嬉々として女湯に入ってるヤツの言葉など信じられんわ。
文句を言うのも面倒なのでそのまま風呂場へと向かった。
「あ、代表。お帰りなさい」
脱衣場のドアを開けたらマルレインおねーさんがいた。
マルレインおねーさんはかーちゃんと入れ替えでうちに住み始めている。町より食事が良くて設備が充実していてお菓子があるからってな。
「うん。ただいま。留守番ありがとう」
マルレインおねーさんが留守役としてやってもらえてたから安心して災害竜退治に集中できた。これからもよろしくと言う意味でもボーナスを出しておかないとな。
「どういたしまして」
出会った頃は無口で冷たい感じがしたが、今は充実してるようで柔らかくなっていた。
……ただ、体格もこう、なんと言うか、柔らかくなってるのはどうかしたほうがいいかもね……。
脱衣場でローブや服をぱっぱと脱いで洗い場に移動。ちゃんと洗う体力もないのでシャワーで体の汚れを流して湯船に浸かった。
「ふひぃ~~~~」
毎日入っているとは言え、我が家のお風呂が一番。疲れが口から出でしまった。
「おっさんかよ」
中身はな!
「マルレインおねーさん。グランディール傭兵団の本拠地をハルオンがあった場所に移す。運営する人がたくさん必要。やってくれる?」
頑張ってくれるようチョコパフェを創り出して献上する。
「わたしは代表の側にいますからね」
オレのと言うよりオレが出すお菓子でしょ。
「そうしてくれると助かる。まだマルレインおねーさんには助けて欲しいから」
オレはまだここからは離れられない。柵もあるし、未来への備えもある。邪神側に対して聖都グランディールから目を逸らせる意味もあるからな。
「早急に対処します」
チョコパフェを食べながら言われても説得力ないが、能力はあるので安心して任せます。
「ふひぃ~~~~」
今は心身ともに癒しましょう。




