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002 転移

予想以上に筆が乗ったので追加で投稿します

ピーーとけたたましい音が四畳半の狭い部屋に響いた


小走りに音の原因であるヤカンに熱を加え続けているガスコンロのつまみを捻ると、音は尻すぼみに消えて行く


持ち手までにおよんだ熱エネルギーを遮断すべくTシャツの裾越しに掴み、中の熱湯を開封済みのカップ麺に規定のラインまで注いだ


こぼさない様に慎重にPCが置かれている小さな丸い食卓に運ぶと、出来上がるまでの三分を待つ


時刻は既に7時50分をまわっていた


学校にギリギリのギリギリで遅刻を回避した俺は一先ず幼女の件は忘れる事にした


死にかけたのに何を悠長なと思うかもしれないが、誰かに言ったところで信じてもらえるわけではない

それに、またあの幼女が現れても俺の右目の力で回避できるだろうという、根拠のない自信があった

とにもかくにも今は、DFが最優先だ

一から五限までの全ての時間を睡眠に費やした俺の体力は完全に回復している


五限の終了を知らせるチャイムが響くや否や荷物をリュックに詰め込んで学校を出た俺は、

最寄りのコンビニで、今夜の夕食にカップ麺とジュースを購入、息を切らせながら帰宅し台所のヤカンに水道水を注ぐとガスコンロに火をつけたのだった





パソコンを某小説投稿サイトのトップページに繋げ、スマホで掲示板サイトのDifferent world更新待機スレの書き込みにサラッと目を通す

やはり、みんな三カ月ぶりの再会返事を待ちわびている様だ

愛読者ジャンキー達は更新はまだかと騒ぎ立てる

勿論、俺も同類なのだが


頃合いを見てカップ麺の蓋を剥がす


むわっと立ち昇る湯気を掻き分けながら物の数分で完食する


時刻は7時59分

時間調整は完璧だ


秒針が頂上に回るのを確認すると俺はF5《こうしん》キーを押した


そこには更新されたての最新話である第二百三十話と横にはnewのマークが表示されていた


キターーと、内心叫びながら第一行を読み進める用とした時、



ーーーーまた【右目】に痛みが走る


【PC中央をぶち抜きながら飛来する光弾は】


【俺の頭を弾き飛ばした】


「って、またかよっ!」

今朝とデジャブる光景をに文句を言いつつも体を横に倒す


すると、右目で見た光景通りPCを貫きながら飛来した光弾は俺の後ろに位置する壁の一部を吹き飛ばした


「何だよ……、何なんだよっ!……お前!」


想像通り、スクラップとかしたPCの裏側には今朝方の銀髪の幼女がいた


二度にわたって俺を殺しかけた少女は悪びれもせず、小首を傾げていた


その仕草がヤケに頭にきた


二度も殺されかけた

いや、その事実よりも三カ月も待ちわびたDFの読書を邪魔された事に俺の堪忍袋が切れてしまったのだ

「この際正当防衛だ」

傍に立てかけてあった木刀ーーーー四年ほど前に修学旅行先で買った物ーーーーを握り幼女に向ける


「何なんだよお前……、いったい誰に頼まれてこんなことやってるんだよ!俺に恨みでもあるのか!」


木刀を向けられても、幼女は動じることはなかった


数瞬の沈黙の後、幼女はまた俺に向かって指を指した


ーーーー来る

光弾の飛来を予感を感じた俺は右目の力を発動させる


しかし、ーーーーいつになっても光弾は発射されなかった


「……何……で?」

『あなた』

「へ?」

『あなたにたのまれたの。だから、ころさなきゃ』

「あなたって、俺の事か?」


幼女はコクリと頷いた

俺は本日最大の混乱が襲った


俺が自分を殺してくれって頼んだ?

この幼女に?

確かに女の子には全くモテてなかったし、友達と数人で遊びに行った時、お気に入りの龍がドクロ巻いてるTシャツ着て行ったら「いや、……お前……それはないわー。ダサすぎね?小学生かよ」ってダメ出しされて死にたくなった事もあったが本当に死にたくなったほどではない


だとしたら……

しかし、幼女は俺の思考を待ってはくれなかった

『じかんがないの。もう、げぇとがとじちゃう。だから、ころすね』

「……っ」

再び光だした幼女の指を見て、兎にも角にもこの場は逃げるしかないと判断する

たとえ死ぬとしても、DFの完結を見るまでは死んでも死に切れない

色々な疑問は忘れて状況を整理する

幼女の光弾は確かに恐るべき威力を持っている

あれが命中すれば人間など木っ端微塵になるだろう

だか、俺には右目の力がある

この力があれば、落ち着いて弾道を見切れば交わすことは難しいことではない

事実、既に二回交わしている

射撃術式バレット展開アクティベーション

幼女の指先に魔法陣が展開される

さぁ、来い!と気合いを入れ【右目】の力を使う


刹那、俺は右目の光景みらいに絶望した


【俺の周囲に無数に魔法陣が展開される】


【一斉に発射。俺の体は蜂の巣になって爆散した】


「ーーーーいや、無」

斉射リリース

次の瞬間


無数の光弾に体を貫かれ俺、朝筆龍は15歳という短い生涯を終えたのだった


















かに思えた









ーーーーーーーーーーエリアJA123=0305ヨリ生体ユニットM-AP0909ノ消失ヲ確認

魂処理開始……………中断

不明ナ術式ノ起動ヲ確認

生体ユニットM-AP0909ノ再構成ヲ開始………………完了


指定地域ニ転送開始









ーーーーーーーー






ーーーー溶けていく


透明な海に俺の体は浮いていた


水に浮く砂糖菓子みたいに


少しずつ溶けて無くなっていく


不安はなかった


むしろ心地よかった


昼下がりの穏やかな陽だまりの中のような


このまま消えて無くなっても構わないと思えるほどの暖かさがそこにはあった


これで終わる


何か心残りがあったような気がしたが、最早どうでもよかった。


このまま消えてーーーー消えてーーーー何も無くなって『ーーーーいいわけないだろ』


知らないーーーー知らない筈の男の声が


俺の体の『中』から響いた










気付くと森の中にいた


俺の愛読書であるDFはこの一文から始まる

この一文から、日本全国のラノベ読者を震わせる冒険譚が始まるのだ




気付くと森の中にいた



見知らぬ森の中に俺は一人立っていた


「……あれ?俺……確か……死んだ筈」

だから、俺の冒険はここから始まるのだろう


気付くと俺は、DFの主人公と同じセリフを言っていた





「ーーーーこれは、夢に違いない」






ーーーーーーーー






「ーーー来たか」


薄暗い部屋の中で男が呟く


紺色のローブを目深に被った男の表情は窺い知れない

しかし、男が発した声音には隠しきれぬ喜色が宿っていた


「場所は……成る程ね。やはりそこか。」


そう言いながら男は前方に配置されている円卓に向けて手を伸ばした


「ーーーー奴隷召喚、対象指定ーー最短距離の対象者」


人差し指に漂う光は魔力の奔流

男は円卓の上に指を走らせ召喚式を組み上げる


「ーーーー実行開始アクティベーション


書き上げられた魔法陣は男の声に呼応し、その真価を発揮ーーーーしなかった


「む?……おかしいな?」


確認するように、何度も魔法陣を起動する


しかし、帰ってくる反応は無し

いや、正確には召喚の拒否だった


「全く、僕の奴隷なかまは中々にワガママだな。だけどそう悠長にしている時間はないんだよね」


男は再度指に光を灯し魔法陣に新たな命令を加える


「召喚式の受諾を任意から強制に変更だ。ーーー実行開始!」


呟いた命令に魔法陣は今度こそ、その真価を発揮した


回転する光の模様

中心から溢れ出す光の欠片

それらは人の形を型取り、やがて実体化していく



数秒後、円卓の上には1人の少女が立っていた



「なっ……なっ……」


「あっ、やべっー」


白くきめ細やかな肌からは蒸気が立ち上り、彼女の金色の髪は水分を含み艶やかに光を放っている


つまりは、少女は風呂上がりだったようだ


恐らく、いくら無視しても止まらない主人マスターの召喚に応じるため急いで衣服に身に付けていた最中なのだろう


慌てて来たであろう服がぬぐい切れなかった水分によって若干の透過性を発揮し、彼女の肌と薄い桃色の下着が見え隠れした


「おっと失礼、悪気は……」

「ーーーー何してくれてんのよーー!」

弁明を論じようとした男

だが、少女の行動の方が早かった


暗い室内に魔力の渦が走り、轟音が室外まで響いた




「……それで、話を聞く気になってくれたかい?」

「ふん!」


数分後、部屋の様子は様変わりしていた

壁や床には無数の切り傷が走り、調度品の幾つかは破損していた

しかし、攻撃の対象に晒されたであろう男には傷一つなく服の乱れすらなかった

ほぼ下着姿で召喚され、しかも魔法も簡単にいなされた少女は怒り心頭

腕を組み、頬を膨らませそっぽ向く


完全に拗ねている



「いや、本当にすまなかったと思っているよ。まさか入浴中とはね。次からは召喚の対象に風呂場は除外しておこう」

「……」

「いい加減機嫌を直してくれよ、シャル。今度甘蜜亭のケーキを一つおごるからさ」

「…………私の下着を見た代償つけはそんなに安くないわ」

「それについては安心してくれ、君を召喚した際にやけに薄着だなーと思って予め視神経をシャットアウトしておいたのさ。つまり、男子垂涎ものの君の下着姿は誰の目にも映っていなかったのさ!」

「……その話、本当でしょうね」

「勿論、僕は嘘は嫌いなタチでね」

ニヤリと胡散臭くわらうローブの男

怒りと羞恥とその他諸々を大きな溜息で吐き出しながら少女は組んでいた腕を解き、ポツリと呟いた


「甘蜜亭の限定ケーキ全種類三つづつ、それで手を打ってあげるわ」

「そうこなくっちゃ。やっと本題に移れる。端的に言うと、依頼ミッションを頼みたいんだ」

「はぁ……、また面倒ごとね」

難易度ランクはさほど高くないさ。唯の人探し。ある男を僕の所まで連れてきて欲しいんだ」


ニヤリと微笑みながら語る男の顔を見て、これは相当な面倒ごとだと悟った少女は本日の2回目の大きなため息を吐くのだった

幼女に木刀向ける男子高校生がそこにはいた

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