第1話 私だけが知らないキミの想い
高校2年生の春のクラス替え。
玄関に張り出された名簿を見る人たちの熱気にあふれている。
もちろん、私もその一員だ。
人混みの後ろから背伸びして自分の名前を探す。
「・・・っあ、あった。2組だ。・・・秋も一緒だ!」
秋は私の家のお隣さんで、幼稚園の頃からの幼馴染だ。
彼は秀才で優しくて男女問わず人気がある。
確かに、秋は優しい。
優しいのだけれど、口を開けば私に意地悪ばかり言ってくる、ちょっとした天敵のような存在だ。
「おっ、のの!また秋と同じクラスじゃん!よかったな!」
後ろにいた男子からそう言われ、私は首を傾げた。
「よくないよ。また毎日からかわれて、お菓子奪われるもん。」
「ははっ照れちゃって。お幸せにー」
・・・お幸せに?何が?
皆がなぜニヤニヤしながら私を見るのかが、本当にわからない。
別に秋のことが好きでも嫌いでもない。
”ただの幼馴染”だと思っている。
「おい、のの。」
低い声がして振り返ると、そこには秋がいた。
「秋、また同じクラスだって」
私が名簿を指さすと秋は一瞬、目を見開いた。
でもすぐに、フイっと顔を背けてぶっきらぼうに言い放った。
「ッチ。最悪。またお前のお世話焼かないといかんわけ?せっかくの高校生活が台無しだよ。」
「ほら、やっぱり嫌がってんじゃん」
私は周りの人に「ね?」と同意を求めた。
だがしかし周りには
「本当はうれしいくせに」
「ののと一緒にいられてよかったねえ」
と、クスクス笑う人ばかりだ。
秋は
「文句あんのかよ!」
と友達を睨みつけている。
訳がわからなかった。
教室に入りって新しい仲間と「よろしくね~」と挨拶したりしながら新しい教室の雰囲気に浸っていた。
でも、何かが足りない。
私の耳に入ってくるあの騒がしい刺激がない。
それに気づいた瞬間、どこか寂しさを感じている自分に気が付いた。。
わかった。
秋だ。
隣でいつも私に絡んでくる秋がいないのだ。
そっと秋を探してみると、入り口に一番近い、後ろの席にいた。
「そこにいたんだ。」
秋と目が合い、そっと微笑むと秋は耳を赤くしてフイっとそっぽを向いた。
新学期と言えば席決めだ。
今年の担任は初日からくじ引きで席を決めるらしい。
私の番にになり、くじを引いた。
私が引いたのは窓側の一番後ろだ。
後ろの方で「ラッキー!」と思っていたら、隣から
「ッチ。最悪」
と低い声がした。
顔をあげると、そこには仏頂面な秋が立っていた。
「はあ、お前の隣かよ、、、。」
不服そうな秋に笑顔で、
「よろしくね、秋!」
と言うというと、秋は少し耳を赤くした。
そして
「よろしく…」
と秋は小さい声でつぶやいた。
案の定、秋は周りから
「本当は嬉しいくせに!」
「夫婦でイチャつきすぎるなよ!」
とからかわれていた。
そして私も、友達の女子グループから
「ののちゃんよかったね!」
「秋君寂しがってるからかまってあげなよー!」
と言われた。
秋が隣にいる安心するのは気のせいなのだろうか。
こうして、私の高校2年の生活が始まった。




