第十一話 サブタイトル 『第十一話:氷炎の二刀流。大切な仲間を冒涜する者に、鉄槌を――』
サレットさんを被った私の身体から、制服の隙間を縫うように黒鉄の装甲がバキバキと浮き上がる。
カツン……と、ローファーの踵を軽く鳴らし、私は静かに腰を落として深く身をかがめた。
中世甲冑剣術・極限の構え――姿勢を極限まで低く低く落とし、間合いを一瞬で詰める死の態勢。
『……ぬぅ! 紅、正気を保て! 力を解放しすぎるな!』
サレットさんのバイザーの中で、紅い光が激しく明滅する。
けれど、大切な仲間である白ちゃんを脅かされた私の胸底で燃え上がる静かな怒りは、サレットさんの制御すらも容易く凌駕していた。
キュイィィィン……ッ!
私の両手に握られた二本の漆黒のエストック(刺突剣)に、常理を外れた異変が巻き起こる。
右手の刃には、空気を一瞬で凍てつかせ、白い霜とダイヤモンドダストを撒き散らす**【絶対零度の氷刃】**。
左手の刃には、触れたもの全てを焼き尽くし、光すら飲み込む**【漆黒の炎】**。
相反する二つの破壊の属性が、二本の刃に宿り、禍々しいまでの美しさを放ち始める。
「ひ、ひぃぃぇぇぇぇッ……!? 氷と炎……ッ!?」
「あ、悪魔だ……! 氷炎を従える漆黒の暗殺魔導師だぁぁぁッ!!」
整列していた兵士たちが、二本の異形なる刃を前に完全に戦意を喪失し、ガタガタと膝を震わせて腰を抜かす。
その最前線で、刃の冷気と熱量を肌で浴びた隊長が、絶望に目を剥いた。
「お、お姉ちゃん……?」
後ろでブルマー姿の裾をギュッと握りしめていた白ちゃんが、見たこともない私の姿と、二本の刃から立ち上る恐ろしい気配に、ぽかんと瞳を丸くしている。
私は静かに目線を隊長へと向けた。
サレットさんの隙間から漏れ出る私の瞳は、氷のように冷たく澄み渡っている。
「……私の白ちゃんの服を破いた罪、その身で受けていただきます……」
シュバッ……ッ!!
地面を蹴る音すら残さず、絶対零度と漆黒の炎を纏った私が、一瞬にして兵士たちの真っ只中へと消えた――。
**【第十一話・完】**




