プロローグ 生命の意味
人間は、誰かに認識されることで命が芽吹く。誰かの心の中に残ることで、生命の意味を成す。
では、世界から忘れられた人間の命は、何処へ往 くのだろうか。
その者は一度命を失い、また新たな命を得る。
『能力』という、仮初の命を。
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「これは、お前らのせいなのか。」
震えた声が暗い闇の中に紛れる。
「みんな、俺の事忘れてる。親も友人も教師も。どういうことだよ!」
「だが、お前は悲しくないだろう。」
闇の中から声が返ってきた。それは酷く鋭利なものであり、また同時に、母の手のように柔らかいものだった。
「人の命というのは儚い。」闇が言った。
「生命というのは他者に認識されてこそ意味を持つのだ。しかし、今のお前は誰にも認知されていない。────つまり、命を持っていない。」
息が詰まった。心臓が大きな音を立てて鼓動する。しかしこの闇たちに言わせれば、体の部位の働きなど意味がないというのか。
「俺たちはお前に素質があると思ったんだ。」
闇は猫撫で声のような、媚びる言い方をした。
「素質…? なんの。」
闇は笑う。周囲を覆う闇は笑う。
「『能力をもつ』素質だよ。」
閲覧ありがとうございます。 蒼羽 実朋と申します。
処女作になりますが、温かい目で見ていただければ幸いです。
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原作: 蒼羽 実朋
イラスト: 林部 カール
2026年4月5日より、pixivでも活動しております。




