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クロエ・リラ・シリウスの記録  作者: 白毬りりま


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26.ミカレ連峰

 ミカレ連峰。

 シルヴェ・ティティアの北に聳え、隣国サンドル・ペティとの境を隔てる文字通りの壁。


 大戦時の前線であったことから、初代シリウス家当主は辺境伯の位を賜ったとされる。


 静謐の森の更に奥にあるため、不可侵の山。

 温泉が湧き、そこから引かれた温泉管はシルヴェ・ティティアの地下に張り巡らされて、各家庭にもたらされている。


 かつてはただの小高い山だったが、大戦終結間際に噴火し、両国が物理的に分断されたため、終戦したという。




 *****




 使用人棟のお風呂の配管に不具合が出たらしい。

 普通そういう話はわたくしの与り知らぬところで終わっているようなものだけれど、地下に近い場所だったから次男のところに上がって来たのですって。


 いつも当たり前のように温泉を浸かっているけれど、どういう仕組みで来ているのか知らなかったのよね。

 だから修理について行こうとしたら、次男に物凄い嫌そうな顔をされた。

 いつもわたくしを窘めるラウラがいないから、仕方なく連れて行ってくれたけれど、絶対に主君にしていい顔じゃなかった。


 次男曰く、地下は魔法の領域らしい。水道管も温泉管も、静謐の森と同じ扱いなのだとか。

 だから街ができてから一度も改修した記録がないのに、現在も問題なく稼働している。


 もし魔法が消えてしまったらどうなるのかしら。

 なんとなくそう言ったら、次男は「絶対に消えないから問題ない」と言っていた。


 絶対なんて胡散臭い。

 でも次男は確信しているようだから、何かしら理由があるのだと思う。


 初めて入った地下室は、温泉の匂いで充満していた。

 ちょうど地下管との繋ぎ目が緩んでいたらしく、次男がさっさと直してしまった。


 次男曰く、配管整備はルーグィス家の必修科目らしい。初めて聞いたわ?



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