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12.花祭り

 かつて世界は泥で覆われていた。

 メガミは命が芽吹くことのない泥の地を嘆き、ひとりの娘を遣わした。


 メガミの娘が地に舞い降りると、泥は草原に変わり、曇天は晴れ渡った。

 駆け抜けた風が澱を払拭し、湧き出した清水のもとに、いくつもの命が生まれた。


 やがて世界はあまたの命の息吹に満ち、その中にはメガミとよく似た姿をした人間と呼ばれる種も出現する。


 そのひとりである男が、花をもってメガミの娘に愛を乞うた。




 ――それがミラ・ブランシェの始まりであり、この国に伝わる花祭りの逸話だ。




 *****




 折角の花祭りの日なのに、碌に出歩けなかった。


 それもこれも、我らが偉大なご当主様の所為! 街に出ようとしたら城の前に婿候補が並んでいたってどういうこと!?


 確かに本来の花祭りはそういう祭りだけれど! わたくしまだ十三歳なんだから、お祭りくらい他の子どもたちと同じく素直に楽しませて欲しい!

 しかも右端から左端まで大輪の薔薇の花束を持って来て! 受け取っても街歩きするのに邪魔でしょうが!


 ラウラもいないし、弟も撒いて政務室に逃げ込んだら、こんな日なのに次男が仕事をしていた。


 珍しく長男がいないと思ったら、結婚間近の婚約者と街歩きらしい。ルーグィス家は安泰そうで何よりね。

 本家の令嬢は粛々と書類仕分けしてたのに。


 夕方仕事が終わったあと、次男が街に連れ出してくれた。

 わたくしの金髪と青い目は目立つものだけれど、日が暮れたらみんな酒が入って、他の人間を気にしないだろうって。一応変装したのだけれど、女性政務官の制服なんて初めて着た。


 買って貰った焼き林檎のキャラメルがけが美味しかった。




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