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エピソード1:ヴェロニクスへようこそ / 3

 擬音を付けるのなら、ワイワイガヤガヤ。「きのきょ」の話の中心は、柚木だった。ゆみポ、こと、きのきょでは「パルりん」と名乗っているあの少女は喋らない。お気に入りのかほりが柚木にばかり話しかけるから。柚木は考える。かほりはリアルでもお喋りなのだろうか。もし、同級生にいたら苦手なタイプだ。思わず回避してしまうだろう、と。



 かほり<ねぇねぇ、深雪君!今からでもアタシとドキドキの冒険行かない!?>


 深雪<すみません……。僕、コントローラーとか無くて、操作が……きっと、ドキドキというよりハラハラになります>



 その時だった。素早くログが流れた。



 パルりん<え、あんた、コントローラー無いの?じゃあ、ヘッドセットも無いんだよね?うわ、だっさwww>



 柚木の心は少しだけ傷付いた。「ださい」は、パルりんなりの嫉妬の表現だった。しかし、言われた柚木がどう感じるか、までは考慮されていなかった。柚木のパルりんへの返事が無いまま、1分が経過した。ログが流れた。かほりだった。その発言が、自分を優しく窘める言葉だと、パルりんは信じてやまなかった。しかし。



 かほり<アタシのプライベートの方が、倍はださいと思うけど>


 パルりん<……ごめんなさい>



 柚木は意外に思った。パルりんはかほりに噛み付いていくと思っていた。しかし、素直に謝った。柚木にではなく、かほりに、だったが。柚木はそれでも良かった。人に傷付けられた時、柚木は基本的に傷付けられて終わる。誰かがフォローしてくれることも無い。しかし、ここではそうではないようだった。そして、話題を変えてくれる人が、いた。



 戸羽乃<そのうち、深雪君がゲームに馴染んだら、みんなでのんびり、戦闘なしの小旅行に行こうか。その時は巳茶さんも一緒に>



 戸羽乃が続けて発言する。



 戸羽乃<ここにいない唯一のメンバー、巳茶さんもゲームの操作は苦手なんだ。コントローラーあり、マイクあり、変換器ありでも、ね。それでも、うちのメンバーで唯一の盾役をしてくれている。ゲームは楽しんだ者勝ち。近々、ヴェロニクスの楽しみ方を皆で教えてあげる。それでいいよね?リーダー>



 戸羽乃が「リーダー」と呼んだのは、恐らく、hitoのこと。hitoも、勿論さ!と返事を返した。そして、きのきょのメンバーたちは「そろそろ明日が」「ヤバい、早番だった」と言い出した。柚木にも「用事」が出来た。今日のところは寝ることにする。明日からきっと、柚木の生活は変わるに違いない。明日、柚木は……。


 祖母に、ゲーム用品を買ってもらうと決めた。祖母に何かを買ってもらうのは10年振り……ランドセルの時以来だった。良くも悪くもドキドキする。

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