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エピソード1:ヴェロニクスへようこそ / 2

 柚木が最初にログインした街・リンサーの最東端。


 そこが柚木を連れたhitoたちの目的地で、そこに「居座っている」と言う表現が正しいワープ装置は、巨大な猫の姿をしていた。胴体はぽっちゃり、顔はブサカワである。柚木はというと、hitoとkanapoから、鳥籠姫を迎えに行く、というシンプルな目的しか聞いていないが、ワープ装置まで来たからにはワープが必要なのだろうと理解していた。


 hitoが近付くと、ワープ装置が喋った。柚木は思わず「え!?」と声を上げてしまった。キャラクターの深雪もおかしな動作をする。親切にkanapoが教えてくれたのだが、ボイスチャット機能を使っていると、NPCもフルボイスになるらしい。ネトゲに疎い柚木だが、基本、無課金でプレイ出来るのにでこのクオリティは凄いんじゃないかと思った。


 柚木の胸はドキドキしている。ワープ装置が喋ったから、というのもあるが、これからもこんなドキドキが待っているのかと思うと、さらにドキドキした。こんな風に気分が高揚したり、プラスの感情が動いたのは、随分と久し振りのことだった。ワープ装置に対して、hitoが返事をする。「白漆、ぽぽこ、深雪をエリア<鳥籠>へ転移」。


 柚木は驚いた。hitoの言葉で、ワープが開始されたのだ。ワープが完了するまでの間に、今度はhitoが教えてくれる。このゲーム用の変換器を使うと、プレイヤーの声をNPCが認識してくれるようになったり、魔法の詠唱が出来るようになるんだ、と。柚木は正直に思った。その変換器が欲しい。と、その時、ワープが完了した。


 パソコンの画面は白転し、次に映し出した景色は暗緑と白色で覆われた小部屋だった。その中央に、人間を閉じ込めておける大きさの籠があった。扉は開いたままだが、その籠の中には少女の姿をしたキャラクターがいた。このヴェロニクスに漂う儚さ全てを結晶化したら、こう美しくなるんじゃないか……そんな容姿をしていた。


 しかし、少女も美しいが、柚木はエリアの美しさにも目を奪われていた。カメラの視点を変えて、隅々まで見てしまう。



 深雪「……綺麗ですね、ここ」


 白漆「ね、綺麗でしょ?このエリア、鳥籠姫がデザインしたんだよ」


 深雪「え!?」


 ぽぽこ「ヴェロニクスは基本、無課金制だけど、課金したら自分でエリアを作れるの!設定もほぼ自由!」



 柚木は、ほぇえ、という間抜けな声を上げることしか出来なかった。そんな柚木のシステムアイコンに、1という数字が表示された。確認してみると、ボイスチャットの申請だった。鳥籠姫、こと「ゆみポ」から。柚木はその申請を承認した。そして、可愛い声が柚木をなじる。あたしを前にしてあたしを抜きでわいわいやってんじゃねぇ!


 同じことを言われたらしく、hitoとkanapoが苦笑いしている。まぁ、今回のことは、温厚というか、気弱な柚木でもいい気持ちはしないかもしれない。しかし、そんな彼女を宥める為に、hitoが必殺技を繰り出した。来てすぐ離席したけど、きのきょにかほりが来てるよ。本当はかほりもお迎えに来る予定だったんだけどなぁ。


 柚木は知らなくて当然だが、かほりは「ゆみポ」のお気に入りだった。hitoの必殺技は「ゆみポ」のウィークポイントにクリティカルヒットした。


 即・ログアウトした「ゆみポ」を追うようにして、hitoもkanapoも、そして、柚木もヴェロニクスからログアウトする。柚木はまだヴェロニクスにいたかったのだが、ガイド役のhitoたちがいないと何も出来ない。大人しく、きのきょに戻った。離席していた戸羽乃と噂のかほりも戻っており、きのきょには6人の人間が集まっていた。

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