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プロローグ:昨日の今日は今日の昨日へようこそ / 3

 hitoが言うには、現在、柚木は、昨日の今日は今日の昨日──通称・きのきょで最年少らしい。柚木が加入するまで最年少だった少女は、今はオフライン。どうやら、何か事情があるらしいが、柚木はその少女のことが気になった。もし、叶うなら話してみたい。歳の近い訳ありの少女。重たい孤独感を、お互いに薄められたら。


 しかし、柚木はこうも思った。どちらかが、どちらかの闇に足を取られてしまったら。ピタリと止まったログが流れた。hitoだった。



 hito<うーん。戸羽乃もかほりも戻らないし、僕らだけで我らが鳥籠姫のお迎えに行こうか。深雪君も一緒にどう?>


 深雪<え?え?トリカゴヒメ?>


 kanapo<今、オフラインの、さっきまでここの最年少だった女の子。事情はちゃんと話すから、ゲームソフトのインストールしちゃお>


 深雪<ゲームソフト?>



 柚木は全く付いていけない。hitoに(時々、kanapoに)1から10まで説明してもらうと、その少女は「きのきょ」では1番の新人だったらしい。柚木が来るまでは。当然のことながら訳ありで、感情的になると暴言を吐くことがあるらしい。柚木が来る30分前にも「それ」は起きた。「きのきょ」では日常と化していることらしい。


 しかし、その暴走を放っておくわけにもいかず、hitoやkanapoや戸羽乃で話し合った結果、彼女の頭が十分に冷えるまで、チャットルームにアクセス出来ないようにする、ということにした。その代わり、彼女の頭が十分に冷えたと判断したら必ず迎えに行く、と約束しているのだという。何処へ?ヴェロニクス。ネトゲの世界へ。


 そんなわけで、柚木は今、チャットルームの裏でネトゲのソフトをパソコンにダウンロード&インストールしている。基本、無課金制。動作サクサク。グラフィック美麗。コントローラーがあれば100点で、ボイスチャット用のヘッドセットがあれば120点で、変換器と呼ばれる機械があれば無限に楽しめる。そう、hitoが語っている。


 気付いたら、柚木の緊張はだいぶ解れていた。キーボードのタイプミスも減っていた。hitoの「ヴェロニクス語り」がそうさせてくれたのだろうか。



 深雪<あ、インストール終わりました>


 hito<思ってたより早かったね。ちなみに、深雪君にインストールしてもらったゲーム、きのきょのメンバーで遊んでるから、一緒にどう?>


 kanapo<ふっふー。お姉さん、そのつもりでした。何度でもキャラメイクが出来るのも、ヴェロニクスの魅力。こだわると楽しいよ>



 何となく。何となくだが、柚木は「楽しい予感」がしていた。どん底まで落ちる一方だった人生の歯車の回り方が変わった気がしていた。一般的な楽しさや幸せとは違う類のものかもしれないが「良い予感」がしていた。人間も動物だ。直感的なものは鋭いはず。こうして──柚木はネトゲ<ヴェロニクス>の大地に降り立つことになった。

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