10 貴族になるのは断ってしまった
15歳になった。
小説通りなら、学園に通う年齢になったけれど、私は平和に田舎暮らしを満喫している。
その上、母の実家であるバスティス公爵家とも今では、いい関係になっている。
私たちとおじいちゃんの間を取り持ってくれたのは、バーミリオンおじさん。
私との文通に途中から参加したお母さんと色々相談したらしく、一度顔を合わせて話をしようと言うことになった。
私たちは馬車に乗り、片道10日の旅をして、王都に向かった。あれ?片道一日じゃなかった?おやぁ?
とにかく、王都は大きくて、おじいちゃんの屋敷は凄く立派だった。村長さんの家の数十倍は大きくて、この屋敷の敷地で、私たちが住む村がまるっと入ってしまいそうな程!
馬車から降りると、小説では死にかけていたおじいちゃんは、大股で走って来て、いきなり私を掴むと抱き上げて、頬ずりしてくるから、びっくりした。
「お前がマリアか。ありがとう。わしもバーミリオンもお前に救われたのだな。」
びっくりし過ぎてあわあわしていると、お母さんが怖い笑顔で強引に私をおじいちゃんから引き剥がした。
「ええ、そうよ。お父様。恩人にその態度は頂けないのじゃないかしら?」
「いや、わしは親愛の情をだな……」
「ふぅん。私はまだマリアに触れていいと、許してはいないと思うけれど、もう耄碌なさったのかしら?」
「す、すまない。」
お母さんがお父さんに強いのは知ってたけど、おじいちゃんにも強かったのだと、私は認識を改めた。
「よく来てくれたね。」
優しい声に顔を上げれば、お母さんが嬉しそうに泣きながら男性に抱きついていた。
「バーミリオン、本当に元気になったのね。」
「うん。姉上、マリアのおかげだよ。ありがとう。いや、マリアに魔法を教えてくれた、ジャスティン様のおかげかな。」
お父さんは、まだ幼い弟を腕に抱いて、私たちの後ろに緊張して立っていたが、その言葉に口元を綻ばせていた。
「さあ、皆様、外ではなく、お部屋でゆっくりとお話下さい。」
そう言って、白髪の背のスっと伸びた人が声をかけてくれた。もしかして執事なのかも。生執事。何だか緊張する。かっこいい。名前何だろう?セバスチャンだともっとテンション上がりそう。前世で見たあのアニメ好きだったの。
後でこっそり聞いたら、やっぱり執事で、なんとセバスチャンさんだった。素敵。
まあ、こんな感じで、私たち親子とおじいちゃんは仲が良くなって、お互いに手紙のやり取りや、行き来をするようになった。
おじいちゃんは、王都にって言うけど、お母さんは絶対に引っ越さないと言って、おじいちゃんは諦めるしか無かった。
やっぱり近くにいると、他の貴族の干渉が激しくて嫌だって事らしい。貴族社会ってやっぱり煩わしいんだね。
私と弟は、好きにしたらいいと言われた。貴族になりたければ、バスティス公爵家で、孫として正式に暮らすもよし、今まで通り、田舎で暮らすもよし何だって。
ただ貴族になるなら、勉強が必要なので、家庭教師を用意するってバーミリオンおじさんが言っていた。ちゃんと面倒見の良い、いい人を選んでくれるそうだ。
今なら、貴族になっても小説のような苦しい思いをする事はないけれど、私は田舎暮らしを選んだ。
だって、デュークがいるから。
1年ほど前から、デュークは、弟のヤヌスとおじいちゃんと一緒に村に引っ越してきてて、私たちは、毎日一緒に過ごしてる。
弟のヤヌスも美形なんだけど、どこかで見た顔のような気がするのよね?どこで見たかは思い出せないけど……
この間も花畑で遊んでいたら、デュークが私にって花で指輪を作ってくれて、そっと指に嵌めてくれた時には、凄くドキドキして、嬉しかった。
だってデュークったら、その指輪にキスするのよ。まるでロマンス小説みたいじゃない?でもそんなキザな事しても嫌味じゃなくて、かっこいいばっかりで。私はきっと真っ赤になってたと思う。
それに、たまに連れていってくれる石造りのお城も、結構好きだし、やっぱり田舎暮らしはやめられないわ。
弟のニールはまだ小さいけれど、勉強好きな子だから、もしかしたら、貴族になるかもしれないわね。




