表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/77

第30話:対策作業

 ハメルーンの街を守るため、ボクは王女マリエルの専任の臨時騎士になる。


 ミカエル王国の大軍を迎え撃つために、ドルトン工房に向かう。

 マリエルには後合流することを伝えていく。


「ハルク君、私も何かお手伝いできませんか?」


 城から街に戻る道中、サラが助力を申し出てきた。

 彼女にとってハメルーンは生まれ故郷。ボク以上に、街を守りたい気持ちがあるのだろう。


「ありがとう、サラ。それなら作って欲しいポーションがあるんだけど。あっ、でも戦に使うには、規模的に難しいかな?」


「それはたしかに……あっ、分かりました! ハルク君が私の抽出器を、もう少し改造してくれたら、たぶん何とかなると思います!」


「ボクが抽出器を改造? そのくらいならお安い御用だけど」


 提案を受けて、サラのポーション抽出器を改造することにした。

 《マーズナル魔術屋》に立ち寄って、ボクの【収納】で抽出器とポーション作成の材料を一式しまう。


 今は時間が惜しい。

 せっかくだから広いドルトン工房で、サラもポーション製造をしてもらうことにしたのだ。


「えっ……あんな大きな抽出器と材料を【収納】できた⁉ ハルク君、あなたは一体……」


「よし、それじゃ工房に向かおうか!」


 サラが何か驚いていたような気がするけど、今は時間がない。

 サラのお婆ちゃんに置き手紙を書いて、ボクたちはドルトン工房に向かう。


「あっ……もう市民の避難が始まっていているのか」


 大通りは避難民でごった返していた。

 ミカエル騎士団が接近していることは、すでに国主によって通知されている。


 戦えない市民は、反対側の西の集落に避難しているのだ。

 逆に市民兵は武装して、ハメルーン城に向かっている。

 大事な家族を守るために、男衆は残虐なミカエル騎士団に立ち向かおうとしていたのだ。


「戦争のことは、よく分からないけど……この市民たちは、絶対に守らないと!」


 女騎士ララエルさんの話では、迫ってくるミカエル騎士団は、傭兵崩れの荒くれ者の集団。

 もしもハメルーン軍が負けたら、死ぬよりも辛い残虐な未来が、市民を待っているだろう。


 だからこそボクは決意していた。

 弱き者を守るために、今は自分の技術の全てを使おうとしていたのだ。


 そんなことを思いながら駆けていたら、職人街に到着。

 職人街には、いつも以上に煙が上がっている。

 きっと戦のために武具屋、必需品を急ピッチで製造し始めたのであろう。


「ここだよ。サラ」


 そんな職人街の中に端にある、ドルトン工房に到着。二人で中に入っていく。


「ドルトンさん!」


 工房の奥でドルトンさんは仕事中。いつものように生活必需品を作っている。


「ふん、小僧か。ん? それに後ろの青髪は誰じゃ?」


「この子はサラといいます。今回のことで、色々と手伝ってもらおうと思って」


「ミカエル王国が攻めてくる件か? もしや、抗うつもりか、ハルク? だがオヌシに人を殺す覚悟はあるのか?」


 ドルトンさんは厳しい目つきで、ボクに問いかけてきた。

 自分の国の民を守るために一番簡単なことは、相手を殲滅することだ。


 ドルトンさんはボクの覚悟を確かめている。

 ……『ハメルーン国を守るために、ミカエル騎士団を皆殺しする覚悟はあるか?』と。


「いえ、違います。ボクは敵国でも相手は、なるべく一人も殺したくないです。でも戦は止めたいです。すみません、矛盾と綺麗ごとばかりで」


 これはボクの本音だ。

 例え自分たちを守るためとはいえ、敵でも殺したくない。


 特に今回の相手は、ミスリル武具を手に入れたことで、ハメルーンに攻めてきた。

 彼らを戦に駆り出した原因は、ボクにも多少はあるのだ。


「ふん。それだけ強大な力を持ちながら、甘ちゃんだのう。だが、ワシは嫌いではないぞ、オヌシのような不器用な生き方は。工房は好きなだけ使え」


「ドルトンさん⁉ はい、ありがとうございます!」


 まさかの工房主から許可が出た。ボクは頭を深く下げて感謝する。


「ふん。ところで、どうやって戦を止めるつもりじゃ? 噂によれば相手は、ミスリル武具の騎士団が大勢じゃぞ? 一人二人、打ち倒したところで、相手の軍勢は止まらないぞ?」


 熟練の老鍛冶師であるドルトンさんは、戦場の怖さも知っているのだろう。

 鍛冶師に出来ることは少ないと、心配してくれた。


「はい、たしかに、そうです。だから今回はサラにも協力してもらって、一人でも多く相手を“止めたい”と思います! それじゃ、サラ。今、抽出器を改造するから、少し待っていてね」


「はい、分かりました。私は調合の準備をしておきます」


 ボクは【収納】からポーション抽出器を取り出す。

 中を開けて“少し”だけ改造していく。


「ん? その抽出器は? まさか、あの嬢ちゃんは、マーズナルの孫か⁉」


 取り出した抽出器を見て、ドルトンさんは声を上げる。


「はい、《マーズナル魔術屋》の孫娘さんですが? 知っているんですか?」


「そうじゃのう。あの女に、その抽出器の大枠を作ったの、このワシじゃかなら」


「えー、そうだったんですか⁉」


 まさかの繋がりの事実に、作業しながらボクは思わず声を上げてしまう。

 魔術街で偶然に見つけた店とはいえ、まさかドルトンさんのお客さんだったとは。


「まぁ、あの女の孫なら、多少は期待できるかもな。どれ、ワシも手伝ってやるぞ、ハルク」


「えっ⁉ はい、ありがとうございます! それなら、そっちをお願いします」


 まさかのドルトンさんからの協力の申し出。

 猫の手も借りたい、今の状況では本当に有り難い。

 二人で抽出器を改造していく。


「よし、出来た。サラ、それなら、この種類のポーションを頼んだよ!」


「はい、分かりました!」


 改造した抽出器は、“少し”だけ性能は上がっているはず。

 ボクが必要なポーションを書いて、メモ紙をサラに依頼する。

 後は彼女の任せておけばいいだろう。


 よし、ボクは次の作業に取りかかろう。

【収納】で次の改造する品を、ドンドン出していく。


「ん? ハルク……これを全部、改造していくのか?」


「はい。どこまで使うか分かりませんが、とりあえず改造していきます。まずは、この“ハルク式荷馬車(チャリオット)”からいきます!」


「ふう……そうか。嫌な予感しかせんが。どれ、ワシも手伝ってやるぞ」


「はい、ありがとうございます! それなら、まずは、ここを、こうして……」

「はっ⁉ 本気か、オヌシ⁉ ああ、じゃが、悪くはないな……いや、凄まじい発想だな……」


「あと、次はここを、こうします!」

「な、なんじゃと⁉ もう、こうなったら、破れかぶれじゃ、ワシも!」


 この日から急ピッチ作業が幕を上げる。


 ドルトン工房で数日間に渡り、作業が続けられていく。

 三人で交代しながら仮眠。ひたすら作業を続けていった。


 ◇


「よし、出来た!」


 そして全ての作業が終わった。

 三人で協力して、何とか予定通り完成したのだ。


 寝不足と疲労で、三人ともクタクタになっていた。

 サラの作ってくれた疲労回復ポーションで、何とか動けるまで回復する。


 カーン! カーン! カーン!


 その時だった。

 ハメルーンの街中に警鐘……戦の鐘が鳴り響く。


「ふん、どうやら客が来たようじゃのう」


「客……ミカエル騎士団、ついにですね」


 こうしてハメルーンの街の目前に、ミカエル王国の大軍が押し寄せてきたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そして………この世のものとも思えぬ阿鼻叫喚の地獄絵図 が繰り広げられるのですね(敵側の) 分かります٩(ˊᗜˋ*)و♪♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ