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地下30階の出会い

 

「はあ……はあ……」


 ▽レナは 満身創痍だ。

 ▽連続ワープきついって。


「でもなんか慣れてきた。扉の向こう側にいけそう……」

「なりませんよマスタァー! しっかりして! 貴方がドエム・・・になっちゃったら配下が悲しがりますよぅ〜!」

「それはいけない」


 ▽レナは サディストである。

 ▽であるったら である。


 主人の健気な努力に、従魔たちはそっと胸を打たれた。


 ▽きゅん♡のタイミングがだいぶ乱れてきているね。

 ▽なにをしたって目覚めている主人って愛しいからさ!

 ▽しかたないね!



「この中にマゾヒストがいたら私がもっと輝けるんだけどな〜」

「こわいこと言わないでくださいよ、レナさん……」

「ドリューさんそっちの気はありませんか?」

「昔は嫌がっていたじゃないですか。一ヶ月前の己を思い出して?」

「あの頃は全盛期だったんですけども今となっては追いつくためにあらゆる努力を惜しみません。マゾヒストが望まれる」

「しまった助長させた」



 レナのメンタルも体もフラフラなので、レグルスが獣型になり背中に主人を乗せて運んでいく。

 つやつやとした赤金色の毛並みはあたたかくて、大きな背中は安定感もあり、ウトウトとしそうになる。


 さっきサカナにへばりついて湿っていた上着も乾いてくれた。


 階が変われば、ダンジョンモンスターは付いてこられないシステムだ。


 レナは[仮契約]を打ち切った。

 しょんぼりとした顔をしている。


 従魔たちがハラハラとした表情でレナをガン見している。

 だって見たいじゃない。いろんな主人を。あっ心配なんです。



「よかったではないか」

「魔王様?」

「判断は間違っていないぞ」


 魔王ドグマは不思議そうに首をかしげてレナをみて、ふむ、と呟いた。


「魔物使いが[仮契約]によって一時的に従魔を得た。力を貸してくれと望んで、契約魔法陣をくぐったら魔物はそれを了承しているのだ。願い、叶え、離れる。当たり前のことだろう? だからこそ”仮”なのだから」


「……理屈はわかるんです。けれど主従契約をすると、一時的にとはいえ心が半分繋がるから、離してしまうことが不安なんですよ。まだあのダンジョンモンスターたちって強くもないし」


 それはレナパーティから見た戦力基準の話である=ダンジョンモンスター・普通に強い。



「魔物の”トレーナー”をする気は無いと、我に会った時にお前は言ったはずだぞ。魔物使いレナよ」


 魔王ドグマはワントーン声を低くした。

 ドキリ、とレナの心臓が跳ねる。


 責めるつもりはないのだろう、レナのことを睨んだりはしていない。

 ひたすらにまっすぐに見ている。


 けれどドグマの息子への愛情は深くて(大変誤解されやすいが)つい力が入ってしまったようだ。

 ぴるぴると獣耳の先を揺らしながら、魔王が腕を組む。

 これは魔王にしては珍しく、戦闘モードから離れてよく考えようとしているときの仕草だ。


 ドリューがそっと心の中で涙を拭った。

(成長してくれましたねぇぇ……!)


「配下にしたあとのダンジョンモンスターたちは、倒されるかもしれない、傷つくかもしれないな? 倒されて消えることは、不幸か? 戦って生をまっとうしたのだから、我であればそれに後悔はない。よい一生だったと思うだろう。心意気まで、元主人であるお前が管理できるものではないだろう?」


「……」


 レナは自分の胸に手を当てて、考えてみる。


「すぐに答えが出るようなものではないかも、寂しいのも心配するのも感性だから……。けれど言葉にするなら、思い上がっているのかもしれません、私。

 強くなったし、周りも強くなってくれているし、色々抱え込んでもなんとかしてあげられるんじゃないかなって、思ってしまっているのかも」


「もともと従魔の望むように育ててやりたいとお前は言っていただろう?」


「そうです」


「育ててほしいと思っていないだろうな[仮契約]のモンスターは。半分しか心を許していないのだ、そんなものに全てを託せない。だから主人を見ながら一週間、本当に従ってもよいのか判断するのだろう?」


「それを主人から離してしまうことについて、悩んでしまっていました。けれどルージュに聞いた事があって……」


 赤の聖地にいる元凄腕魔物使いの精神なんですけど、と付け足す。

 魔王は「なんとなく把握した!」と返事をしたので、完璧に直感で理解しているといえよう。



 ▽フジツボトラップ!

 ▽消し炭にした。

 ▽だっていい話の途中だからね。



 レナはちょっと緊張しているのか、レグルスのたてがみを撫でて毛感触で落ち着こうとしている。

 ごろにゃんとレグルスの喉が鳴ってしまった。


「[仮契約]は相談なんですって。魔物の言葉がわかるようになるから、こんな条件で従魔になってほしいんですけどいかが? それなら了承します、もしくは、それなら辞めておきますって。主人と従魔が穏やかに結ばれる為のものだし、別れる為のものでもあるって」


 ジレは黙ってその言葉を聞いていた。

(レナ様と結ばれてよかったですよ)と言わなくても理解されていると思っているから。それは本契約をしたからこそ。


「魔物使いとして未熟だなあ〜、私」


 レナの声には、闘志がメラメラと燃えていて。


「だからもっと成長できる」


 従魔たちが拳を天に突き上げた。

 熱い沈黙である。

((((従えて!!!!))))



 魔王ドグマは満足そうに頷き、金眼をギラリとさせた。

 成長した魔物使いレナとその従魔、なんともワクワクするではないか!



 ▽シャークヘッドゴーストが 現れた!

 ▽紫炎で燃やし尽くした。


 ▽あまりに暑いので ドリューが水の壁を展開した。

 ▽なかなかいいコンビネーションである(必死)。



「よしよし。魔物使いレナよ。[仮契約]を利用するという、戦いの選択肢が増えたのだ。喜ぶといい!!!!」


 30階にぐわんぐわんと大声が響く。

 ダンジョンモンスターが寄ってきたが、ことごとく消し炭にした。


「いつまでも強者のつもりでいてはいけない。強者はサイクルなのだ。老い衰えて自分よりも強いものが現れるから、倒されて朽ちていく。我もいつかは最強のものと戦い負ける日すら来るだろう! ああ楽しみだなあ。

 いずれか自分よりもはるかに大きな力が襲ってくることを想定しろ、魔物使いレナよ。我は戦いが好きだが、お前が望むものは違うだろう。防衛は勝つよりも大変だ。

 選択肢はあればあるほどいいな。なんでも使え。ためらわずに使え。これまでは「優しすぎた」……あー、んー、そうかオズワルドよ。わかったそれでもいい。

 ほらお前の可愛い従魔をなによりも守りたいだろう?」


 最後は投げやりになった。


 従魔たちが(甘ちゃんとか未熟者とか悪口言うなよ絶対に言うなよ)とギンギラギンに睨んできているからだ。


 そんなふうにたぎっている息子たちと勝負したい本能はあるのだが、魔王だって場と作戦はわきまえている。(影蜘蛛が教育しました)


 レナの表情も持ち直したし、ここらでキリをつけるのがいいだろう。


「我はお前たちのこれからの躍進をもっと見てみたいのだ。期待している!!」


 魔王が「にいっ」と凶暴に笑い、犬歯を光らせる。


 レナも真似して「にい!」と精一杯笑ってみせた。



「お前の魔物使いとしてのスタイルは独特だからな。オズワルドを託す時にそれを実感しているし、結果が出ているなら称賛だってしよう。けれどしょぼくれた顔をするんじゃないぞ、配下が不安に思うだろう」


「!!」


 圧倒的に上に立つものとしてのアドバイスだった。


 レナは振り返ってみんなを見てみる。


 従魔たちを安心させたくて強くなろうとしているのに、自分が急いで息切れして心配をかけてしまっては、コンディションを引き出してあげられないではないか。


 パシン!とレナは自らの頬を叩いた。


(ああっドエムに目覚めちゃった?)

(ただ気合いを入れているだけだ。そう、だよな?)

(赤くなった頬が可愛……くてしにそう無理……)

(ウワーーーッレア映像高画質録画しました!)


「コンディション上げたい子ー」

「「「「はい」」」」

「称号[お姉様]……セット!」


 このメンバーではSMサドマゾ効果が薄いので、無難な組み合わせのみにした。


「さあ行きましょう。私の可愛い子たち」


 ▽スマイル777点!

 ▽従魔のテンションが ぐーんと上がった!





 レナは白炎聖霊杯を取り出した。

 そこに全員の[フレイム]の炎を灯す。


「……これでカルメンに、私たちが来ていることが届いたりするといいわね」


 寄ってくるのはダンジョンモンスターばかり。


 ▽矢毒クリオネが 現れた!

 ▽[千本毒矢]!


 ▽焼き払った。



 ▽暴食ブロブフィッシュが 現れた!

 ▽[大口の壁]!


 ▽焼き払った。



 ▽スカルゥグウノツカイが 現れた!

 ▽[串刺し]!


 ▽焼き払った。




「深海魚系の見た目がキモチワルイのでしてよ……」

「マスターはもともと始まりの草原でも、キモいグロい系の魔物苦手でしたもんねえ。これはもうトラウマのようなものかもしれません。それに攻撃力を上げている分、知力が低いようなのでテイムにも向いておりません」

「主さんのそれ、お姉様言葉なのか?」

「巷ではやりの暴言お嬢様というやつかも」

『いや、レナ様は「くそうめえですわ」とか言わないから』

「「解釈一致」」


「楽しそうだなあお前たちは!」


 紫炎をお見舞いしていた魔王は、大笑いして従魔たちを見ている。

 よそ見をするのでいろんなところに引火して、ドリューの消火が大変である。

 海底ダンジョンのみずみずしい壁をあっけなく消し炭にするな。


 しかしその熱気のせいだろうか、赤い髪が、壁の端からチラリと現れた。



「カルメン!?」


「させない」


 ▽ビュン! となにかがレナたちの脇を通り過ぎていく。


「はっ? 負けませんわよ!」


 ▽追いかけっこが始まった!

 ▽何を追いかけているのか 何と競争しているのかは勢い!

 ▽勢いには幸運がよく効くぜ!



 ▽Next! 逃亡者から追跡者になってみせます。






読んでくれてありがとうございました!



今日は園児が微熱でおやすみでした。

(大暴れでしたが><)

みなさまもお気をつけて〜!



感想、ファンアートSS、ありがとうございます!

とっても幸せです♡

明日に返信させてください(`・ω・´)ゞ


良い週末を♪



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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 今回も楽しく読ませて頂きました。 ……レナさんが壊れた!?(今更) ……いや、[従えて~!]と乞われた……。(日常)
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