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海底ダンジョンのマスター

 

 巨大海賊亀を倒したら、まさかのレアドロップで、金銀財宝がどどーーーんと手に入ってしまった。

 レナはそれらをまとめてマジックバッグにしまった。終了。





 そんな雑な扱いをされたことなどなかった。

 ダンジョンマスターは信じられない心地でレナのことを注視していた。

 クラゲランタンの一つがピタリとレナの真上に張り付いていて、レナのことをダンジョン統括広場に中継している。



 ──ダンジョン統括異空間。

 ダンジョンの最奥地にある[時空魔法]を極めた異空間であり、ダンジョンの環境や生態系を管理できるようになっている。

 この海底ダンジョンではもやもやした霧のようなものをこねてダンジョンモンスターを”創り”、壁一面の”水鏡”を通らせることでダンジョン内に障害トラップとして配置する。この独自性こそ、ダンジョンマスターたちの小世界。


 水鏡の最も大きいものに、レナがどアップで映し出されている。

 キラウィンドウよりは原始的だが、景色を見るぶんには問題ない。


 水鏡の前でうずくまっていた影が、うぞうぞと動く。苔岩こけいわのようなずんぐりとした大男だ。甲虫のように丸みのある岩が集まって体を作っており、丸まればこの海底ダンジョンの媒体である苔岩そのもの。立って歩けばゴーレムと形容することもできるだろう。


 いかつい姿で、めそめそと泣いている。


 涙は床にたまっていって、水溜りのようになった。

 海水のようにしょっぱい。



「なんということだぁ……あれはぁ……財宝の中でもとびきり価値が高いやつをっ、いつか冒険者が手にしたときにどのような反応をするのかと、楽しみに楽しみに楽しみに、置いといたのにっ。せめて大袈裟なリアクションしてよおっ……!」


 切実な声であった。

 大男に似合わないが、そこはプライベート空間なのでそっとしておいてあげてくれ。

 その時を楽しみにひそかに海底アイテムを溜め込んで、約1000年なのだ。


 出現率を最低最低最低にしていた激レアアイテムまでごっそりと持って行った、あの超幸運娘レナ

 従魔とハグをしている場合じゃないぞ!


 ──変わり者なのはわかっていたけれども。


 ダンジョンマスターは、現実時間一ヶ月前に白い光の中であったレナを思い出して、はあ〜〜、とため息を吐いた。


 目先の利益に飛びつくことなく目的と守るべきものを見失わないような、非常にやりづらい相手だった。結局、けっこうな時間をかけて話し込んだのに、レナの弱点を知ることもできずマシュたんもろとも帰してしまった。

 万が一あれらが神になろうことがあれば、弱点を刺激して自分も方法を聞き出そうと思っていたのだが。


「はあ〜〜〜〜」


 レナたちの周りにはブワッと風のダンジョンモンスターが生まれる。


 [ガウン・クラゲ]……薄いガウンを引きずったような形状のクラゲ。淑女のような優雅さと、風で切りつける荒々しさを併せ持つ。海底ダンジョンマスターの十八番。


 ▽テイムされた!

 ▽金魚すくいのごとく 魔法陣を進行方向において 待ち伏せされたのだ。


「……。………!? ダンジョンモンスターをテイムって、何?」


 ▽ほんと何。

 ▽モンスターテイマーの定義をキラが広くしているからさ。


 あまりの異常さにガクガクと震え始める。

 自分の創ったものが盗られたような、魔物使いモンスターテイマーとしては正しい姿のような。


 ガクガクガクガクガクガク。

 ダンジョン内にも地震が起こった。


「……おっといけない。こんなに長くグラグラしてるとダンジョンが危険だと噂がたって冒険者が寄り付かなくなってしまう。せっかく環境を整備して、ジーニアレス大陸一の知名度を誇っているのに……。生き物に忘れられたダンジョンはマスターとともに滅びていくのだから。

 それでひっそりと消えたダンジョンは多数あるし……」


 その昔。

 ダンジョンはラビリンスと同じくらいの数があったのだ。


 生き物はダンジョンに挑み、その存在を知らしめるほどに、ダンジョンは深く強硬になっていった。

 やがて階層が100を越えると、ダンジョンとダンジョンマスターは”進化クラスチェンジ”するのだといわれていた。


 ──今となっては、忘れ去られた伝説だが。


 ここにいるダンジョンマスター”リヨン”も、始まりは認知からだ。ラビリンスに落っこちてきた冒険者たちの発見によって、存在が生まれ、ダンジョンに昇格してからは聖霊と手を組み、いずれは神になれるのだと信じていた。


 小世界を統べるものになり、配下を守り愛する未来のみがあるのだと、思っていたのだ。


 ──聖霊が忘れ去られて消えてしまって、一人きりになったリヨンは、昔に比べて随分と減った冒険者たちの認知と、他のダンジョンマスターとの会合によりようやく存在を保っているだけである。


 わびしい今の生活。

 時代が変わったラナシュ世界には、まるで自分たちはいらないと言われているような被害妄想すら生まれる。また泣きそう。


「けれどもしも聖霊がいれば」


 リヨンにまたチャンスが生まれる。


 急に迷い込んできたあの聖霊カルメンは、なぜやってきたのかこれまでどこにいたのかも知らないが、海底ダンジョンに興味があるというのなら70階まで通してみたい。


「そしてもしも神様になれるというなら」


 その希望を再燃させたのは”マシュたん”だ。

 白い光の中で、崩壊しかけている神もどきたちに、ピカピカの可能性を見せていたから。このラナシュ世界に神様というシステムが残っていることを、信じさせた。



「いずれ小世界の神となる」


 口にすると気分が上がった。

 ぐしぐしと目元を拭う。しょっぱい涙が岩のような腕に染み込み、岩塩が生まれた。これは珍しい食材が生まれたものだと、レナは金銀財宝よりも喜んでいた。


「いずれ、いずれっ」


 泣かないもん! 保つもん!

 ダンジョン内には謎のクラシックが鳴り響いたと騒ぎになったのだが……ダンジョンマスターの繊細な心が現れた太古の音楽だ。潮が揺れるような音のウェーブと砂浜のシャラリとしたさざめき。そっとしたメロディ。


 かつては相棒であった海の聖霊がこのメロディを唄ってくれた。

 まざまざと思い出してしまって、思い切り泣くとダンジョン内に大洪水が起きた。



 水鏡に映っているレナたちも波に飲み込まれていて、魚護人マーマンがたくましい尾で海流を進み、全員を確保してから泡で包んで守っている。そして仲間が、白炎で海水を蒸発させていく。


 あまりの驚きにダンジョンマスターの涙もおもわず止まった。


「…………この炎はなんだ? 弱く、保守的になったのが現代ラナシュの特徴なのにぃ…………?」


 海底ダンジョンが親切設計なのは、昔に比べて冒険者が弱くなったために、昔のままの難易度では訪れるものが減ってしまうからだ。

 他のダンジョンでは、ダンジョンモンスターが強すぎるだの、移動が不便だの、訪れたものが愚痴を言うのだと、よそのダンジョンマスターが愚痴っていたのに。


 レナパーティの妙な強さはなんなのだ。


「現代においては国と国の取引が水面下で行われたりと、戦や冒険稼業にだけかまけている者もめずらしくなった。副業で冒険者をするヒト族よりは、たとえ信仰と噂話には適さなくても、野性的な魔人族をたくさん呼び込むほうがダンジョンが保つだろうとふんでいたのだが……。そのためにプライドを捨てた運営をしているのに……。

 なにゆえこのように強いんだ?

 ……!!

 あれは太古の火炎獅子ではないか。蘇っていたというのか。ラナシュ世界は現在、太古に戻ろうとしているとでもいうのか?」


 ▽それは魔物使いレナがたまたま一体だけ望み通りの進化をさせた影響だよ〜!

 ▽尋ねたら答えてくれるから あとで聞いてみてね。


 ▽レナが 海流に流されてきて地面でビチビチ跳ねるテッポウウオを テイムした。×5



「……ハッ。あんなにテイムしているのはもしかして、ダンジョンマスターに成り代わろうとしているとか!?」


 ▽感性が繊細。


 ガクガクと震え始める。

 するとダンジョンもガクガク震えるので、レナたちはテッポウウオに[騎乗]してダンジョン内を突き進み始めた。

 大波小波、なんのその。

 ここで水着の真価を見せるべし!



「…………なんなんだ。驚き疲れてきた…………」


 ▽ほんとそれ。


「私たちの常識はもう随分と昔のものになってしまったんだな。今は、こうなのか。もう少し見てみよう──」


 ▽まだまだ驚きが襲いかかるぜ!






「マ〜ス〜タ〜。まさか相乗りをする日が来るなんて、私感激っ♡」

「キィィィィラァァァァ。アアアア……テッポウウオ・ソクド・イクツ!?」

「時速30キロくらいです」

「アアアアアア」

「カーブします」

「アウッ」


 ギュイーーーーーン! とレナたちを乗せたお魚がコーナーを攻める。


 [テッポウウオ]……湿度50%以上の空間であればどこでも泳ぐことができる。ストレート進行が得意でまっすぐに進んだ時の速度は弓矢のごとし。体長1〜3メートル。



 広場があったので、そこにいるダンジョンモンスターに狙いを定めた。


「あれは地下30階相当のアタマダケデテルシャーク。倒していきますよねっ?」

「イエス。イエス……!」


 ▽アタマダケデテルシャークが 現れた!×5


 チンアナゴのように砂から頭だけを出して、ゆらゆらしている。かと思えばにゅーーーっと出てきた。

 さながらサメのロクロクビ。ずらりと並んだ歯がレナたちを迷いなく狙っていた。


「マスター・レナの思考を分析中…………完了しました!」


 ▽阿吽の呼吸だね?

 ▽カーブします。


 ゴーカートのようにグルグルと周りを旋回。


 テッポウウオにはキラの正確な指示が与えられていて、一定間隔・一定速度で広場を巡る。

 壁ギリギリを泳いで、シャークに狙われたらかわして、また隊列に戻る。即席テイムなのにとんでもない練度なのは、ダンジョンモンスターがシステム的に動くからだ。


 同じくシステムによって”動く獲物”を素直に追い続けたシャークは、胴体がごちゃごちゃに絡まってしまった。


「オオゥ……オズクン、クラゲランタン・ルール……」

「了解、主さん。頭上まで上昇してから……スキル[重力操作グラヴィティ]超重く!」


 ▽ドスーーーン!


 ▽アタマダケデテルシャーク を倒した!×5


<従魔:レグルスのレベルが上がりました!+1>

<ギルドカードを確認してください>


「ギエエエエエ……!」


 ▽レナへの負担!耐えて耐えて〜!


 ▽レナたちは 地下30階にワープした。






 ダンジョンマスターが呟く。


「今の……なに……?」


 ▽レナさんの 超努力レベリングだよ!

 ▽そっちのことじゃないか。

 ▽ダンジョンモンスター・ランデブーだよ!

 ▽なんか違うかな。

 ▽カーレース改だよ!



「地下30階。あの聖霊がいる場所じゃないか……もしかしてテイムされてしまうだろうか……? それはいけないっ」


 ▽ダンジョンマスターが ワープした。



 ▽Next! 地下30階のカオス




読んでくださってありがとうございました!



相変わらずプロットと全然違うことしてくるけど、キャラのそんなところが私は大好きです(笑)


あとは上手く繋げられるように、

がんばりますねー!

勉強!します!



感染症が流行ってますからみなさまお気をつけて。どうかご自愛くださいね。今週もお疲れ様でした!頑張っててえらーい!です!₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 今回も楽しく読ませて頂きました。 ……ダンジョンマスター……。(-人-)……南無
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