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メデューサの瞳☆

7月20日、更新おやすみです><

活動報告に「閑話・メイドSS」を掲載しました。

代わりにお楽しみいただけると幸いです。





 メデューサ族長から、熱烈な視線を送られているレナ。


 ずんずんと歩み寄っていって、ぺこりと頭を下げた。


「藤堂レナです。魔物使い。よろしくお願いします!」


 少々緊張していて、言葉が慎重だ。


「丁寧ざんすねぇ。あたくしはメデューサ一族の……メデューサとお呼び」

(お呼び!?)

「わ、分かりました。メデューサ様」

「いやぁねぇ、ファン魂がうずいてしまうざんす。レナ様からもそのような言葉遣いを聞きたいもんやわぁ」


 ▽仕事の前に ご褒美を要求している!

 ▽ダメですよ!


 レナはなんとなく性質を察した。


「まずは仕事についてお話しするときに情報が正しく伝わらないと困るので……」

「じゃ、早く終わらせましょ」

(自由!!)


 今日のやることはもう魔王国などと打ち合わせをして、実行が決定しているのだ。いつものような長々としたカウンセリングをせずに早々に話を進めたのは、そのため。


 それに実際にレナを眺めてみて、瞳が本気だとメデューサは納得した。


(まあいいざんしょ)


 ただしひとつ。


「レナ様。お望みを今一度、その赤いお口から告げてくれへんやろか……?」

「分かりました。メデューサ様は、その者の潜在能力を引き出すお力があると伺っています。ぜひ、私の可能性を引き出して頂きたいんです!」

「ふぅふふふ」


 メデューサがぎりぎりまでレナに距離を詰めてくる。


 彼女を中心に、直径7メートルの黒魔法の円が現れた。

 レナは驚いたが、後ずさらない。


 円の内側に向かって、絵の具を水で伸ばしたように魔力がにじんで、徐々に紋章を描いていく。線の先端はまるで蛇のように細くまとまってうねった。

 レナの足元まで到達したらぞわりとしたので、思わず「ひえっ」と声が出てしまう。


 ▽レナの緊張がすり替えられた(強制)



「そのぉ、望みはぁ、誰のものざんす?」


 メデューサの声は円の中にいるレナにだけ聞こえる。妖しく反響するように響く。


 ▽瞳の 感覚共有が 弾かれた。

 ▽ルーカは瞳を押さえた。


(レナ!)


(……あ、閉ざされちゃった)


 レナはパチリと瞬きすると、深呼吸して、自分だけになった心と向かい合う。


 これまでどっぷり従魔に助けられていたレナだけれど、レナ自身の特訓もともにこなしたのだから。

 きちんと自分も進んできたレナは、自分の言葉でしっかり答えられる。



「私が、私の意思で、強くなりたいんです」



 メデューサがその薄布の向こう側で目を細めた気配を、レナは感じた。


(感覚共有していないのにこんなに察せるなんて?)

「この場所は感性が剥き出しになるざんす」


 メデューサの声はレナの全身をくすぐるように纏わり付いて「うひゃあああ」とレナは小さく悲鳴をあげてしまった。


「だからこそ、レナ様の意思がホンモノやってわかった。よかったざんす。誰かに求められて自分の力を捧げたいと思ってしまっていたら、たとえどんなに素晴らしい能力を芽生えさせても、使い切れず腐らせてしまうもんやから……」


 釘を刺すような言葉。

 レナの心をチクチクと刺してくる。


 肝に銘じます、と試しに念じてみたら通じたみたいで、メデューサはちょっと笑って手をこしょこしょ動かすと、レナのお腹のあたりがくすぐったくなって悶えることになった。


 悪戯好きのクセモノのようだ。

 ここまで変人だと、なんだかホームグラウンドにいるような妙な安心感をレナは覚えた。


 ▽非常識が通常運転。



「運命の時。その賽を投げる手伝いができるやなんて……光栄でざんす!」


 信者としてだいぶ出来上がっている。


(いつの間に……本当に、なぜ……)


 正直かなり軌道修正をしたいところだが。

 最優先すべきはレナの新技能取得なので。


 ▽藤堂レナ 断腸のスルー!

 ▽腸をくすぐられたような感触でからかわれた。


 ▽のちに赤の女王様シリーズを拡充する布石になると予想はしたものの従魔たちが大事だからー!

 ▽自分の力でも従魔を守りたいという、そう、これは「欲」!!


 ▽幸運がテンションをグーーンと上げた!



「欲望……それは生きる者の輝き」


 メデューサが恍惚と呟いて、ブツブツと高速詠唱して魔法陣を拡大させた。


 両腕をバッと上げると、これまで紋章を描いていた蛇たちが浮かび上がり、半円状ドームの隔離結界が完成した。



 この状態では従魔たちも手を出せない。

 攻撃でもしようものなら、レナの魂に傷がついてしまう。それくらい脆い部分が、中では晒されている。


「外側、僕たちが守るよ」

「押忍!」

「おーす!」

「チリひとつ結界に触れさせませんとも……」


 結界を囲むようにルーカ、シュシュ、リリー、モスラが立ち、風を操り四方を警戒しながら、レナを信じて立ち続けた。



 結界の内部は魔力がとぐろを巻き、ドクン、ドクン、と心臓のリズムでうろこのような模様を変えている。

 一秒の数万分の1、レナがわずかに考えを変えるたびに、紋章は変わる。


 メデューサはそれらを第三の目で全て記憶する。レナを知っていく。


「それでは拝見。レナ様の魂の奥底までも──」


 メデューサのひんやりした手のひらが、レナの頬を包んだ。

 レナは瞬きひとつせず、目を見開いて立っている。


 無垢に心を晒して、メデューサの介入を許している状態だ。


 ルーカが危険視していたことがこれからまさに始まる。



 メデューサの目が、レナの中を這い回る。


 芽を探していった。

 これはレナが望むものとは違うはず……これは効能が弱いから……など、ねっとり吟味する。


 ひとつ、可能性をとらえた。


 レナの意識をメデューサが呼び戻すと、レナが「ぷはっ」と大きく息を吐いて、吸った。

 緩やかだった結界の模様の動きが、ドクドクドクと目まぐるしく変わっていく。

 メデューサにも負担がかかっているのかすこし前かがみになった。



「これからはレナ様の意思にもついてきてもらうざんす」

「分かりました……う、わ!」


 レナはぶるぶる震えながら(スライムスライムスライム)と呪文を唱えて、眺め回しに耐える。クーイズのからかいを思い出して、不快感を和らげる作戦だ!


「余計なことを考えないように、魂をまっさらにするように」

「なんて難しい注文を……」


 従魔のため。でも従魔のことを考えてはいけないらしい。


(いや私自身のためだから。これは間違えちゃいけないやつだ。つい、うちの子のためって考えてしまうけど……私がそうしてあげたいから、行動しているってこと)


 レナは胸に手を当てる。

 自分のことだけを考えてみる。



 等身大の藤堂レナは、さみしがりで、甘えたがりで、だから手放したくないものが多くって、優しくするし強くもなる。

 子どもみたいに欲張りなのかもしれないな、とレナが受け入れたとき。


 メデューサが、魂の奥の『子ども時代のレナ』を視つけた。



「たまげた……。見込みのある芽を発見したざんす。これはまぁた、先が楽しみな……」

「分かりました。芽を摘まれている感じが……あうう……ひえ、ありがとうございますっ。とりあえずそれでっ」

「そうしましょ」


 一つ目の成果を聞いたらすぐに返事をするように、あらかじめルーカに言われている。


 メデューサならばレナの魂の底をえぐりひっくり返したところまでも視ることができるから、今必要な能力をみつけたら引き返すようにと。


 そこまでされたら今のレナでは壊れてしまいかねないとの判断だ。主人大事な従魔の判断なので甘いのかもしれないが、主人大事だから!! お互いに守りたいから!!


(ルーカさんのギフトに近しい才能かぁ……っと、メデューサさまの前でよそ事を考えちゃいけないっ)


 メデューサはニンマリと口角を吊り上げて、レナの前で頬を染めた。


「あれはいい悲劇の男ざんす……♡」

「雑談オッケーなんですか……? あのー、まだ魂摘まれてる感じがするんですが……」

「不安があると芽吹きは上手くいかないざんす」

「なるほど。すみませんでした」

「ふぅむ。レナ様を安心させるためにひとつ約束しましょ。あたくしはあの坊やには手を出しませんからねぇ」

「し、信じますっ」

「賢明ざんす」


 今は落ち着くことが大事だ。


 運が悪いルーカがこれからメデューサのラブ災難を受けるかもしれない可能性なんて考えてしまうと、気の毒すぎてレナの涙がちょちょぎれるから!

 大丈夫、大丈夫。



 メデューサが唇を細やかに振動させた。


 晶文だ。



 蛇の宝玉のまなこが視つめる 欲は生の輝きありしや

 蛇の宝玉のまなこが固める 意思は石なり 種になり

 蛇の舌のような双葉にと まじないかけるは 我らが使命

 育てや育て 我らに観せよ

 伸びろや伸びろ 蛇の尾の如く

 花咲け 世界を変えてゆけ

 変革導くは 我らの使命──



 レナの胸のあたりがカッと熱を持った。

 魂の隙間をこじ開けて、メデューサのまなざしの誘いを受けて、レナの才能が花開く。


 ふっ、と凝縮されていたものが解放された感覚があった。

 新たな力の芽生えだ。



<称号:異世界人を取得しました!>

<ギルドカードを確認してください>


 レナがギルドカードを取り出すよりも早く、メデューサがその内容を口にする。


「異世界人…… 別の世界から移動してきたヒト族に近しいもの。ラナシュにおいて、言語互換能力・超体力・超魔力・超幸運を発揮する。……なんという」


 はあああ、感嘆のため息。


「このような出会いがあるやなんてねぇ。それでこそ魂の深みを探り、才能を花開かせるのは面白いざんす」


 つつつつーとレナの胸をメデューサの指先がなぞっていった。

 反応に困ったレナは、苦笑いする。

「これが異世界人のお胸なん?」という感想に致命傷を受けた。


「……雑談オッケーなんですかぁ!?」


 血反吐を吐くようなレナの叫び。


「オッケー。施術は完了ざんす」


 指でマルを作り、軽ぅい調子で返事をするメデューサ。


 これまでも珍しい才能を芽吹かせてきたから落ち着いているのかと思いきや、驚きすぎていっそ冷静になったざんす、とのこと。


 ▽非常識が通常運転。



 ▽ドーム結界が解かれた。


「レナ!」

「ご主人様、大丈夫!?」

「……ん!? 血の匂い、濃く、なったよ……ご主人さま。なんだか変わってる」

「おめでとうございます」


 ▽従魔たちが 出迎えた。


 ▽ひしっ! と抱き合った。


 ▽ちょっと変わったけど好き好き大好き!!



「私は無事だし、理想的にメデューサさんに才能を見つけてもらったよ。体に力がみなぎる感じ……! 実証が楽しみ」

「大変よぉござんした」


 メデューサが舌舐めずりをしている。


 その仕草によからぬものを本能的に感じた従魔たち。さらにはあの結界の中でレナを一人きりにさせていたことから、邪推が広がり、メデューサへの好感度がガクンと下がった。


 グッ! とメデューサが服の袖の中でガッツポーズしたのはなぜだろうか。


「ところでお代なんやけど」

「あっ。芽生えさせた才能にふさわしいだけの対価を、後払い……でしたよね。私自身が持っているもので、他者をまきこまないものという条件」


 レナがゴクリと喉を鳴らす。

 従魔をよこせなどとは言われないはずだが。


 異世界人の称号で各種ステータス大幅アップなんて冗談みたいな才能を、上手く形にしてもらったのだから、かなりの対価を支払わなくてはならないだろう。


 お金はある。

 魔道具もある。

 服も、土地も、異世界知識など珍しいものもある。

 実を言うとメデューサが欲しがるものは目星をつけていて、レナの知識などではないか……と想定していたのだが。


 ▽幸運が張りきっている!!


「悪いようにはしないざんす。ああでも、あらあ、どうしようかしらん」

「そのように焦らさないでいただけますか?」


 絶対零度の声を出したのはモスラだ。

 明らかに敵意がにじむなんて珍しいが、それだけ、無防備なレナというものが従魔にとっては恐ろしかったので反動がきている。


 メデューサは反対の手でもガッツポーズした。なぜだろう。


 ▽幸運が張りきっている!!



「メデューサ様。私も教えて欲しいです……なにを用意したらいいか。それともすぐには決まりませんか?」

「"もっと強引に言ってぇ"!」

「え?」


 メデューサはついに、レナに要求を告げた。


「あたくしはね。赤の演劇の新しいパターンを観たいんよ。観たい。観たいぃっ!! 目の前にモデルになったご本人がおるやないの、演じていただけたら十分あたくしの仕事の対価になるざんす」

「ええええ!?」

「だから赤の女王様やってやあぁ!」


 いよっ! と掛け声をかけてから、きゃーっとはしゃぐメデューサ。わくわくとメデュリ・アイたちも視線を送ってくる。


 ▽赤の信者力が高まっている。



「どどどどーしよ…………ルーカさん? 腕まくりなんてしちゃって、どうしました?」

「久しぶりの説法になりそうです」

「楽しそう!?ええい!」

「それやでレナ様! こっちにも」

「合いの手そっちから入れてきます!? 高飛車な言葉とツッコミがほしいんですか……?」

「そうや。それからあたくしはもっと間近で観たいし感じたいから、敵役をやるざんす」

「なるほどそれで先ほど我々をわざと煽ったわけですね。やってくれますね」

「ルカサンモスサンきたわこれぇ!」


 塩対応のルーカとモスラを前に、メデューサが大興奮。もちろんメデューサの報酬となるようにわざと塩対応サービスしている。レナの負担を軽くするためだもの、ね?


「これぞ即日現金払いやッ!」


 メデューサ、地球用語をすぐに学習して使いこなすくらい順応力がすごい。だてに旅生活をしていない。


 メデューサ一族といえば男子との恋愛を夢見る乙女の集まりでもある。しかし目の前に美男子二人がいようが、観劇を優先するくらいに、赤の女王様シリーズは大人気なのだ! 感性が合えば異様にハマる!


「なんなの……!」


 レナが頭を抱えた。


 シュシュとリリーが顔を見合わせて、こくんと頷く。


「キャーッ! メデューサに攫われたー!」

「助けて、赤の女王さま……!」


 ▽悲劇のヒロインを演じ始めた。


「きたわぁ! この二人を返してほしくば……」


 ▽メデューサ 渾身の悪い顔!

 ▽顔の布でほとんど見えないけど!

 ▽口元がにやにやしてる!


 ▽レナは 覚悟を キメた!


「ご主人様カッコよくキメて!」


 ▽ルーカの 声援!


「……称号[お姉様][赤の女王様(覇道)][サディスト]セット」

「さらに最新の技能も試しましょう。ここには重役もいるため情報伝達が素早く終わります」


 ▽モスラの 声援!


「称号[異世界人]セット!」



 ばさあと翻る[赤ノ祝福ヲ賜リシ覇衣]。きらめく後光。ほとばしる覇気。張り切った天使族ディスによるサービスで天空の光まで差してきた。


 レナの大サービスの高飛車セリフパレード、その声は魂まで震わせ、メデューサ族長は存分に信者力を高めた。




 ▽異世界ラナシュに 異世界人が認知されました。


 ▽キラが頑張って調整しているよ。


 ▽超幸運の後は 悪運がやってくるものだ。

 ▽赤の聖地に帰ろう。

 ▽新技能で悪運をぼこぼこにしてやんよ!


メデューサ族長イメージ

挿絵(By みてみん)


一般的にメデューサって目を合わせたものを石に変えますが、ラナシュのメデューサ一族は長い歴史の中で自分たちが平和的に生き残る手段として、チカラの使い方を変えてきています。

「才能を開花させる」

「世界を少し変える」

というように。

だから才能の開花にロマンや使命感を感じるのですね。それから他者と共存するコミュニケーションや商売でもあります。


レナの称号!

これはなろう転移主人公で多いやつです。今のステータスに物凄いプラスアルファ。

常に凄い力が使えるのではなくセットした時だけ反映されます。キラが従魔契約との調整頑張ってる。


次で説明入れますね。

この回ではテンポ優先しました。


メデューサたちが視て報告した墓地の惨状についてもまた。



読んでくださってありがとうございました!


ご感想もありがとうございます、三連休の修羅場が終わったら返信させていただきますね(。>ㅅ<。)




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