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ラミア温泉2

族長室から出た男性たちは、廊下を歩いて少し遠くで待機していた。

しかしロベルトが現れて、「来客用の温泉を楽しんでくれとのことだ」と告げたので、さらに遠方に進むことになる。


「忘れてた……温泉……ッ!」


ルーカが、(このイベントがある前には[感覚共有]を切るつもりだったのに!)と思わず顔を覆って内心で嘆く。

ぼてっと降ろされたハマルがむすっとルーカを見上げた。


(まさか退出から、流れるように温泉に案内されるなんて。

女体の恐怖に動揺してしくじった……ううぅ……)


ルーカがとぼとぼ歩きながらどんよりしていると、


「おお〜? なになに、ルーカくんも女湯が気になる感じ? なんか意外〜。でもめっちゃ分かる! 男はそう考えるよなっ」


▽ドリューが うきうきとルーカに絡む。


「最低……」


「最低」


「うそ!? レグルスまで!?」


そして軽蔑の眼差しに打ちのめされるドリュー。

レグルスがここで参戦してくるのも予想外……とぼやきながら、ドリューは冷たい視線と胸の痛みに耐えた。


ーーふと、ルーカの背中にどーーん! と軽快な衝撃がやってきた。



「っ!? ……クレハとイズミ」


「「よお! クーとイズも男湯に行くぜっ」」


「こっちなんだ?」


▽クレハと イズミが 現れた!



「クーイズ先輩ってばー、どっちにも入浴できるのにー。

むぅ。いいなー。ボクも女湯の方に行きたかったー……ルーカ、恨めしや……」


とばっちりでルーカに抱え込まれて連れ出されたハマルがぼやく。

じっとり犯人を見上げた。



「ハマルは今まで主さんに髪洗ってもらってたけど、雄だから成長したら別風呂になるんだし、そろそろ一人でも入浴できるよう練習した方がいいと思うぞ」


「えー!? オズのばかーー!」


「シュシュみたいなこと言うなよ」



盛り上がっている仲間の会話にクーイズがケラケラ笑いながら、ロベルトに話しかける。



「ロベルトたいちょー。あのね? ルーカってばとーっても運が悪いのよっ」


「だからね、幸運体質なレナとシュシュから離れちゃって不安なの。落ち込んでるのはそのせい」


「「やーい、ルーカの寂しんぼー!」」


「………………おっしゃる通り」


「なるほど」


「へぇ」



ルーカが反論を飲み込んで頷き、ロベルトたちが少し肩を震わせながら答えたタイミングで、なんと……!


▽天井から 温泉水が 噴出してきた!

▽ルーカがピンポイントで びしょ濡れになった。



「「ほらねぇ?」」


「これはひどい」


濡れネコなルーカに気の毒そうな視線が集まる。

みんな、クーイズの説明に納得したようだ。


”感覚共有しているのに温泉タイムが始まったから”というルーカの恐怖の理由は、こうして巧みに隠されたのだった。



ーーその後もルーカが、ヒカリゴケの粉末が鼻に入ってくしゃみを連発したり、女湯からふわっと流れてきた水蒸気エリクサーに反応して開花したクドライヤの頭のゴーストローズに生気を吸われかけたり……トラブルを連発していく。

やっと鍾乳洞の出口付近にたどり着いた。

来客用温泉は屋外だ。



「そういえば……鍾乳洞や洞窟の出入り口は崩れかかった隙間から太陽光が入ってくるためヒカリゴケが生息しないのが一般的ですが、ここは、天井に厚みがあって頑丈なため、生息生物が変わっていませんね。

万が一外部から鍾乳洞が攻撃された場合でも、かなりの衝撃に耐えられるでしょう。

……温泉水が通るための通路はありますが、強度には影響を与えなさそうです」



周囲を鋭く観察しながらルーカが言う。

新たなる悪運の襲来を警戒しているのだろう。


最後のフレーズで、ずぶ濡れになったシーンをまた思い出したロベルトが笑いを噛み殺しながら、返答した。



「ああ、君が言った通りだ。

だからこそラミア族はこの場所を絶対に譲らない。

頑丈な砦であり、彼女たちにとって魅力的な温泉もあるんだからな。

報酬としてリーカたちに鍾乳洞の温泉を使わせるなんて前代未聞だし、破格すぎるくらいだ。

シヴァガン王国が温泉の観光地化を相談したことがあったのだが、まるで交渉の余地なく追い返されてしまったと聞いた」


「ラミアを殺す気!? って牙を剥かれたそうですよねー。

ラミア族は美貌に命かけてるからなぁ」


クドライヤがうんうんと相槌を打つ。

隊長と副隊長の二人は肩を並べていて、親しげな様子である。



「「ロベルトたいちょーたち、レナがいない時には我らに対して敬語抜けるよねー?」」


クーイズが顔を覗き込んで聞くと、


「君たち従魔のリーダーが藤堂レナ様。

従魔は部下という立場になる。

そうなれば、まあ俺たちと同じだからな。この場では普通に話させてもらおうと思った」


ロベルトが「気にするか?」と聞くと、従魔たちは「気楽だからこのままでいいよ、せっかくこれから温泉だし堅っ苦しいのはなしで」と返した。



外に出ると、さんさんと照りつける太陽光の眩しさに全員が目を細めた。

鍾乳洞の白が流れ出たようなつるりとした石場のくぼみに、たっぷりと温泉水が溜まっている。

とても広い温泉なので、幼児たちなら泳いで遊ぶこともできそうだ。

クーイズが目を輝かせる。



「「ひゃっほーー! 広いー!」」


「ぽかぽかしてて眠気を誘われます〜……ふあぁ……」


だーーっ! と駆け出していくクーイズ、目をこするハマル。



「走ってると転ぶよ、っと、お湯に足を滑らせたのに空中バク転して体勢を立て直した……それから足先をスライム化させてスケートを楽しんでる。

さすが、クレハとイズミは抜群に運動センスがいいな。

うん、90点。ー10点分は心配させた分ね」


ルーカが苦笑し、


「おいハマル。さっそくヒツジ型にもどって寝る体勢になるんじゃない。

教えてやるから、自分で頭洗えるように練習するぞっ」


『えーー!? めぇぇ……』


オズワルドがハマルを引きずるようにして温泉に向かった。

二人とも、お兄ちゃんらしく幼い仲間たちに目を配っている。



おじ……さらにお兄さんな護衛部隊の面々は、賑やかなこの光景を微笑ましそうに見守った。



「ははは、若いな」


「というか幼いな」


「ロベルト隊長もクドライヤ副隊長も発言が年寄りくさいですよー」


「「ドリュー?」」


「嘘だろ俺……声に出してた……? こんなうっかりじゃそのうち諜報部を追い出されちまうっ。

よし挽回だ!

従魔たちの面倒見てきまーす!」



気まずくてへへっと引きつり笑いしたドリューはそう言うと、だーっと温泉に駆けていき、途中で服をブレスレットに収納する。

ザパァァン! と温泉に入水すると、魚人の特徴である頭のヒレが成長し、指の間には水かきが現れた。



「なにそれ!? ドリュー兄ちゃんカッコイイじゃーん!」


「遊んで遊んでっ!」


「お、いいぞ。スキル[アクアウェーブ]」


「「っきゃーーーー♪」」



クーイズと楽しげに戯れるドリュー。

温泉水を操って波をおこしたり、水のドームを作ったりしてあげている。


あえて不穏な笑顔をつくり彼をからかったロベルト、クドライヤは「ドリューは完全に幼児の仲間入りだな」と話した。



ひとり会話に加わろうとしなかったレグルスが呆れたようにため息を吐いて、仲間から遠ざかる。

そして、先ほど服が濡れたためバスローブに着替えて、プールの監視員のようにお湯場の近くの石に腰かけているルーカに近づいた。



「入浴しないのか?」


「ええ。ちょっと先ほど張り切りすぎて、結界を張るときに魔力酔いしまして。

サンクチュアリはしょっちゅう使うものではないため、制御に慣れていないのです」



なんという真っ赤な嘘。

日常使いしまくっているのだが?

サンクチュアリが泣いている。


しかしレナと[感覚共有]している状態でルーカが男湯に入浴するのは色々問題がおこりそうなのでやめたのだ。


レグルスはどこか安心したように、ルーカの近くに座った。



「そうか。それなら隣に失礼する。隊員の近くにいると協調性を求められて、温泉に入らされそうだからな」


「レグルスさんも見学なんですね?(まあ当然か)熱いお湯は苦手ですか」


「……炎獅子は熱気を心地よく感じる種族だ。しかし騒がしい場は個人的に好みじゃない。それだけだ」



ルーカは「なるほど」と無難に相槌を打ち、黙って従魔たちを見守る。

女性が見るべきでない箇所からは器用に視線を逸らす。

レナへの配慮だ。

お互いの目で視たものすべてが[感覚共有]されてしまうわけではないが、頭の中に強くイメージした光景や念じた言葉などは通じてしまう。


レグルスとはそれきり話がはずむこともない。


大人の男性たちも腰に布を巻いて温泉に入っていった。

ラミア族の領地内なので、万が一彼女たちと会ってしまうことを考えて配慮した。



「ロベルト隊長も温泉に入るんですね。

熱が苦手なのに?」


「ああ。おそらく後でレーヴェ様に感想を求められるだろう。そのときに失礼のないように体験しておかなくてはな」


温泉に肩まで浸かって、ふいーー、と長く息を吐いたロベルトとクドライヤがのほほんと会話する。



「あいっかわらず真面目ですねぇ。

やっぱり野生の状態から成長した獣人だから、群れの長の指令には忠実なのかな。

諜報部に入ってからずっとこの真面目さが続いてるって凄いと思いますよ。

周りは個性的すぎる面子ばかりなのによく引きずられないもんだ」


「別にこの場ではかしこまらなくていい。クドライヤ。

むしろ君の方が古参なんだから俺が敬語を使おうか?」


「うわ、イヤラシー。まあ俺はかつてのロベルトの上司だけどさ。

じゃ、普通に話すからな。

あーあ、入隊当初は初々しかった雪豹の青年がこんなに捻くれちゃって……」


「直属の上司がサディス宰相になったから処世術を学び始めたというだけだ。

君がそのまま階級を上がり、俺の上司のままでいたなら成長の仕方も違っていたかもしれないが」


「これ、そのまま頷いたら俺がサディス宰相の教育方針を否定してることになるじゃないか。こわっ。

そーいうのはマジで勘弁してくれよ……!

俺はさ、誰かの上に立つとか向いてないんだよ。副隊長くらいはまあ務めるけど。

ホラ、災いのゴーストローズだし」



クドライヤが一瞬、自嘲するように口角を吊り上げた。

ふむ、とロベルトが言葉を模索する。



「確かに君の能力は使い方を誤れば害となるが、それでもシヴァガン王国に望まれて雇用され、これまでに諜報部員として成果を重ねているだろう。

そう過去の事件のことばかり悔いるべきじゃない。

過去を振り返るならば、自分の仕事で救われた人々の数も数えるべきだ」


「まーね……。優しいな、お前は」



クドライヤは暗い気持ちを払拭するようにうーん、と伸びをして肩の筋を伸ばす。

頭の黒薔薇がまたふわりと開きかけたので、意識して蕾に戻した。

自分の制御だけで手一杯さ、とつぶやく。

それから明るい顔に戻り「ありがとな」と、頼もしい後輩にして上司のロベルトに声をかけた。



「夢事件のおさらいでもしておくか?」


「そうだな」


「子どもばかり……って点について。

俺の意見としては、子どもには希望とか、理想の将来を夢みる気持ちが強いからじゃないかって思ってるんだ。

大人たちはもうコンプレックスを『仕方ないことだ』って諦めているところがある。長年共存してるコンプレックスを完全拒否して新しい自分で生きようなんて、とてもじゃないが夢見たりできないよ。

俺だってゴーストローズの樹人族って種族に思うところはあるけど、これからクラスチェンジできる見込みもないし、まあ迷惑にならない程度に生きようって諦めてる」


クドライヤの正直すぎる言葉に、ロベルトが苦笑した。


「そうだな。コンプレックスの部分をまったく受け入れられない者など、大人になる前に死んでいるのでは?

俺の場合は、野生時に雪山でサディス宰相に遭遇して、半殺しにされて毛皮を剥がれそうになった完全敗北のトラウマはしばらく尾を引いたが……。

地獄の特訓に耐え抜いてようやく魔人族の称号を手にした時には、これが俺の運命なのだろうとスッパリ諦めて、王国に仕える新たな道を生きることにした」


「ロベルトはそれでよく暗黒面に堕ちなかったもんだよ、ほんと」


「おそらく心を腐らせて反抗していたら、俺はすでに毛皮のコートにされている。

そういえば、肝を蜘蛛糸でギリギリ縛られながら”死んで素材となるか、生きて王国に仕えるか?”なんて質問をされたな。

生きることを選び命乞いした、というわけだ」



せっかく温泉で癒されているのに、血生ぐさい話になってしまった。

ロベルトとクドライヤは、はしゃいでいる幼い従魔たちを見る。



「いやー、輝く笑顔だねー。まっぶしー。

こうできたら、こうなれたなら……なんて期待している純粋な気持ちを利用してる悪党は、大人がやっつけて、あの子たちの未来を守らないとな!

あっ俺いいこと言ったんじゃない?」


「ああ。夢魔という存在がいるという情報も得たことだし、これから捕縛に尽力しよう」


「……レグルスも気をつけて見てやらないと、だな」


「レグルスのコンプレックスには心当たりがあるだろう?

いざという時に効きそうな呼びかけのセリフを考えておこう。

万が一レグルスが暴走するような事態があったら……責任は部隊長の俺がとる」



ロベルトの覚悟に据わった目を見て、クドライヤはちょっぴり困った顔になり、「のぼせてるだろ、肌が真っ赤だぞ」と忠告してやった。



「湯冷ししてくる……」


ロベルトは温泉から上がると、氷のかまくらを作って中にこもった。

温泉地にいるのにあんまりな光景なので、遠くでルーカが笑いをこらえている。



「「なぁーーに、難しいお話してたのー!? あっそぼー!」」


「どぅわああっ!?」


▽クドライヤは クーイズの乗った大波に飲まれた!


ザバーーーン! と温泉水がかかった氷のかまくらも溶けかけてしまい、ハマルとオズワルドも波に流されている。

ハマルは面白かったらしくケラケラ笑っているが、やっとハマルに自分で髪を拭かせたところだったオズワルドは「やり直しじゃん!」と不機嫌そう。


「やっべ、やっちまった」


つい、クーイズにおだてられてアクアウェーブを巨大化させたドリューが青ざめる。



「「「ドリュー!!」」」


「ごっめんなさーーいっ」


氷と風とシャドウナイフがあちこちを飛び、ドリューは逃げ回ることになった。



尻もちをついたハマルを起こしてやりながら、クーイズがパチリとウインクする。

何かテレパシーで聞き取ってほしいことがあるんだろう、と察したルーカが目を合わせた。



「「(リーカお姉ちゃんがいないし、今のうちに護衛部隊のみんなの内心とかちょっと探っておこうよ!)」」


「(そういうこと。了解)」


ルーカがロベルトとクドライヤの内心を覗く。

夢事件についての考察や、彼らが知るレグルスの事情などを読み取り、(あとでレナパーティで共有しよう)と決めた。

クーイズにヒラヒラと手を振って(完了)と伝える。



クーイズはハマルを誘って、追いかけっこに参加しに行った。

なんと、ドリューの側につく。

この中では彼が遊び相手として一番のお気に入りなのだろう。

可愛い顔できゃるるんとぶりっ子し、「「そろそろみんなで仲良くしよ♡」」と鬼たちにアピールして勢いをおさえた。

ドリューに心底感謝されている。


ルーカは(頼りになる先輩だな)と考えて、くすっと笑う。

レグルスに横目で見られたので「うちの従魔たちって行動が予想外でいつも楽しいんだ」といいわけしておいた。



(クレハとイズミの心の声は、以前はそれぞれの声が合わさって二重に聞こえていたのに、今はまるでひとつの存在が発しているように感じられるんだよね。

幼いんだけど、不思議な深みのある声。

……広範囲をカバーするためにスライムボディを混ぜたりしていたから、二人がひとつの存在として世界に認識されかけてる?

変わった現象だな)


ルーカが瞬きする。

クレハとイズミは魔物として生まれた、とルーカは認識しているため、"前世"を魔眼で覗いたことはなかった。

ただ、よく似ているスライムはひとつの魂を分けあってふたつになったのだ、とは出会った当初に視抜いて知っている。


(いつか、クレハとイズミは一個体になるのかもしれない)


やんわりと目を細めて遠方の二人を視つめて、


(……ちょっと待った。一個体化した場合、赤と青が混ざった完全に新しい魔法を創り出す可能性がある……!?)



ひくりと口の端を引きつらせる。

……ついでに、久々に他の仲間たちも視てみた。



(ハマルはそろそろヒト型の見た目が成長しそうかな。

オズワルドは白炎がだんだん本人と馴染んできていて、やがては聖霊と意思疎通できるようになるだろう。

聖霊……うわ、すでにレナに懐いてる気がする。

あとはクラーケンストーンも変化の兆しが出てきているね)



呆れたように息を吐いて、自分の首元で光る赤の宝石を指でつついた。

相変わらず規格外な主人だ。

レアクラスチェンジの恩恵を受けた金色の猫耳が、ゆらりゆらりと左右に揺れた。


(僕はまぁ、しばらくはこのままみたい。多分。おそらく。新種族にクラスチェンジしたんだから次の変化があるにしても時間がかかるものだよね?)


ホッとひと息つく。

完全なる新種はまだ世界に情報登録されていない部分が多く、成長が読みづらいのだ。



<朱蜘蛛の呼び笛が[朱蜘蛛ノ"ビ"笛]にレアクラスチェンジいたしました!>


そして絶妙のタイミングでキラのアナウンスを脳内で聞いたルーカは、ごふぉっと吹き出しかけ、咳払いする。

さすがにレグルスが怪訝な顔をしている。



「ご、ごめんなさい。呼吸をしようとしたら湯気が気管に入りすぎて失敗した」


「そうか。悪運だな。納得した」


納得された。

助かったのだが、なんだが複雑な気持ちになるルーカであった……。



([悪運持ちバッドラック]の称号はもう手放したんだけどなぁ)


同じく驚いて尻尾の毛を逆立てたオズワルド、ぱちくり瞬きしたハマル、鉄砲水を誤射してドリューを吹っ飛ばしてしまったイズミ、笑い転げるクレハを眺めながら……ルーカは少しだけ、以前の記憶に思いを馳せた。



レナたちとガララージュレ王国から逃亡し、ルーカはラチェリまで一人きりで旅をする最中、[悪運持ち]の称号を取得してしまったのだ。

これは、悪運に見舞われやすくなる代わりに、トラブルが起こるたびに精神が強化される、というとても損な称号だった……。


しかし手放すきっかけが訪れる。

ラチェリの森にて、呪術師と戦っていた時だ。

あの、深緑色の髪の青年の、闇をはめこんだような瞳を視つめて、魔眼効果のひとつ[トレード]を使い称号を押し付けたのだった。



「どうやら温泉の場所を誤ったらしいな」


(そうそうこんな無機質な声だった)



温泉熱によりほんわかした頭で、ぼうっとルーカが考える。

ーーそして本能が警報を鳴らし、ぶわっと全身の毛を逆立てた!



湯気の向こうに、深緑と不気味な闇色が見える。

瞳を鋭く細めて睨みつけた。



「ーー嘘。イヴァン・コルダニヤ……!?」



なぜ、と呟く口内が乾いている。


ルーカの首輪に不快感と不安が伝わり、大音量アラーム音の被害を受けたレナが、女湯で悲鳴をあげていた。



「赤の女王様の気配がする。手の甲がヒリヒリ痛い。実に心地いいぞ。

ひとまず声がする方に来たのだが、ハズレだったとは残念だ。

ここにいるのは矮小なしもべたちと…………シェラトニカ様ぐらいか。なぜだ?」


「ーーーーーッ!?」



シェラトニカ、の名前まで耳にしたルーカの脳内理解が追いつかない。

男湯の全員が、突如現れた青年を警戒して立ち上がった。



▽イヴァン・コルダニヤが 現れた!?


▽Next! 一方その頃、女湯でも異変が……



読んで下さってありがとうございました!


急展開です><

今 返信お待たせしている感想は、明日返信しますね。

いつもありがとうございます、執筆の気力の源です♪

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