ラミア温泉1★
ひととおりオズワルドを追いかけ回して満足した様子のキサ。
初恋であり、恋とはどういうものかよく知らないので、とにかく真正面からぶつかっていくスタイルが当分続きそうだ。
レーヴェに促されてようやく、はだけていたかけ布を器用に身体に巻きつける。
ニコニコしている。
「恋は楽しいやろ? 姫さん」
「うむ! 世の中にはこんなに楽しいことがあったのじゃな。
これまでの一番のお楽しみは部屋で鏡を見て自分の成長を確かめている時じゃったが、それより恋の方がいいくらいかもしれぬ」
キサは腕を優雅に伸ばして、肘から指先まで己の柔肌をうっとり眺める。
そんなことをお楽しみにしていたから育たない胸元に病んで夢魔に魅入られたのでは……とレナパーティの誰もが思ったが言わない。
それからキサの熱い視線を受けたオズワルドは[蛇睨み]された気持ちになって尻尾の毛を逆立たせる。
可愛かろうが中身は恋狂いのドグマみたいなものなので受け入れられない。
「まあ、あらあら。そんなこと言ってるうちはまだまだお子ちゃまやわ」
「な、なにをぅ!?」
キサが頬を膨らませると、レーヴェがふうっと色っぽくため息をつく。
「この世にはもーっといっぱい娯楽があるんよ。
恋ももちろんやけど、お洋服やお化粧品を店で買ったり、珍しい異国の料理を食べたり、知らない音楽を聴いて雰囲気に酔いしれたり……ねぇ。
どれか一つだけに夢中になるんは、姫さんにはまだまだ早いわ。
これからたくさん、知っていくんよ」
「……脱皮をしたからもう大人のラミアの仲間入り、里から出てもいいということじゃな!」
キサが目を輝かせる。
ラミアにとって最高に居心地のいい鍾乳洞だが、やはり子どもは見たことのない外の世界に憧れるのだろう。
レーヴェがにこっと笑う。
「ウチと一緒にまたシヴァガン王国の王都に観光に行きましょ」
「やったぁー!」
キサの気持ちが一瞬だけ恋から逸れた。
レーヴェが流し目で、ほっと胸をなでおろしているオズワルドを見る。
(あのお坊ちゃんは今はその気があらへんみたいやし、せっかく明るくなった姫さんが何度も拒絶されて傷付かへんように気を付けてあげんとね……。
死にそうやったところを綺麗な雄に助けられて恋に落ちる、ロマンチックで好きやけどね?)
恋愛事は百戦錬磨のレーヴェがやんわり目を細めた。
(きっと、まだ恋に恋してるだけやと思う。
あとで姫さんとちょっとお話しせなあかんね。ラミア流の処世術。
恋はただ相手に好意をぶつけるだけやなくて、駆け引きが大切なんよ?
相手のことを想って、一番望まれる状況をしっかり想像した上で、上手に場を作り上げて手のひらの上で愛してあげるとええわ)
くすっと口角が上がった唇を服の袖で隠したレーヴェは、キサがまた暴走しないうちにささっと話を進める。
「さすがにこの族長室を掃除したいなぁ……。
黒焦げの脱皮が散らかってるから」
「手伝いましょうか? それとも退室の方がよろしいですか?」
ロベルトがスマートに申し出た。
「あら、ありがとう。姫さんもきちんと着替えさせたいから、申し訳あらへんけど、男性はいったん退出してもろてええやろか?」
その言葉を聞き、誰よりも早く、青みがかった漆黒が動く。
「分かったすぐ行く。すぐ出てく。ほらみんな遅い! 行くってばいく!」
オズワルドだ。驚きの早さで男性陣の服をひっつかみ、退室をうながす。
二番手ルーカがハマルを小脇に抱えて「じゃあまた!」とオズワルドと一緒に逃げ出した。
苦笑しているクドライヤ、少し悩むそぶりを見せたレグルス、ラミアの着替えは魅力的だけどねとこっそり考えたドリューが退室して、一番最後にロベルトが一礼してから踵を返した。
レーヴェが投げキッスする動作とともに、ロベルトに赤い飾り羽根を飛ばす。
手の中に滑り込んできた羽根のメッセージを理解したロベルトは、ひとつ頷いて廊下の角に姿を消した。
「私たちはどうしたら良いですか? キサ様が着替えている間に[クリーン]の魔法で清掃しましょうか」
リーカが改めて尋ねると、
「ああ。女性だけに分かれたんはこの後温泉に行こうと思ったからなんよ。
彼らも命の恩人やけど、さすがに男女のお湯は分けへんとね」
レーヴェはいたずらっぽく笑い、
「掃除ならすぐ終わるわ。お気遣いありがとうね、リーカさん。
緑魔法[クリーン]」
一瞬で部屋の汚れを取り除き、元のようにふんわりと湿気がこもる状態に戻してみせた。
この鍾乳洞での掃除はラミアが一番長けているのかもしれない。
お米を炊いた時のような匂いがするので、レナが鼻をヒクヒクさせる。
「男性用というか、普段は来客用にしてる温泉にはロベルトさんが案内してくれているはずや。
さっき、飾り羽根の伝言でそう伝えたからねぇ」
「では、レナたちはラミアが普段入浴する温泉に案内するのじゃな。
良かったな、レナ。
あの秘湯は温泉成分がとくに濃くて、お肌がつやつやになるんじゃ」
何やらすんごく懐かれている。
キサは自慢げに話すと「早く行こうっ」とレナの手を取った。
リリーとシュシュが負けじと駆け寄って、レナにぎゅうぎゅうとくっつく。
全員のお胸が当たっている。
当たっているとわかるくらいに大きい。
おぅふ、と瀕死の息を漏らしてレナは自分の胸元から頑張って気をそらした。
「それにしても太っ腹じゃな、レーヴェ。まさか秘湯にみんなを案内するとは」
「それを引き換え条件にするほど姫さんの救助を願ってたんやからね」
ピシン! とデコピンを食らったキサは、涙目で額を押さえる。
「あっ。ねぇレナー、クーとイズは男湯の方に行きたいなっ」
「ドリュー兄ちゃん、思いっきり遊んでくれそうだしねー。ちょっくら泳いでくるぜぃ」
クーイズが主張すると、ラミア二人が驚く。
「まあ。二人は男の子やったん? 可愛らしいから分からなかったわぁ。
実力ある従魔だけあって、みんな美形さんやからねぇ」
船でのクラーケンとの戦いを思い出して、レーヴェはころころ笑う。
「「両性だよ! どっちにでもなれるのっ」」
「あらあら」
赤の飾り羽根で別のラミアを呼び出すと、クレハとイズミを男湯の場所に案内するように言った。
男湯は鍾乳洞外の露天風呂だそうだ。
((レーナ。男の子メンバーの状態が心配だからフォローしてくるねっ。幸運なレナとシュシュから離れちゃったルーカもやばそうだしぃ))
クーイズは立ち去り際、レナにこそっと耳打ちした。
一番先輩のふたりはとても頼りになる。
レナは「そういえば悪運が作用するかもしれないんだ」と青ざめて、クーイズの気遣いに心から感謝した。
女性たちだけで族長の部屋を出る。
鍾乳洞の最深部に向かって通路を歩いて行くと、やがて生息する植物の種類が変わってきた。
レナは紫がかった黒目を凝らす。
(魔力が流れている……普通の植物じゃないみたいだ。もしかして温泉の養分の影響を受けた魔物植物なのかな?)
不思議そうに考えたものの、幼児たちとキサが仲良くできているか気になって、レナは思考を断ち切った。
自然に女児の会話に混ざって、話しやすく調整してあげる。
キサはさっぱり明るい性格なので、リリーとシュシュとも気が合いそうだ。
(良かった。……そういえば、何か、大切なことを忘れているような?)
レナが気付いたタイミングで、キラが<ピンポーン>と効果音を鳴らす。
(アーーッ!? 私、ルーカさんと[感覚共有]したままだァー!? そして、これから女湯で入浴……ッ)
レナの頭の中にルーカの不安を表すアラームが『ジリリリリ!』と爆音で流れ始めた。
あちらも気付いたらしい。
しかし、また目を合わせなければ[感覚共有]を解除できない。
運が悪ぅい!
レナは涙目で頭痛に耐えながら、ふらふらと前に進む……。
「大丈夫? レナちゃん。
あのね、ラミア族はみんなナイスバディだから気になるかもしれないけど、私も胸は大きくないしそんなに落ち込まないで。
みんなで楽しく温泉に入ろうよ」
そこじゃなーーい、と思いながらも、自分を下げつつ気遣ってくれたリーカに申し訳ないので、レナは(寄せて谷間ができる胸は仲間と認めないんです)と思いながらもなんとか愛想笑いした。
ルーカも覚悟をキメたらしく、アラームはやがて微弱音になった。
お互いに、できる限り裸体を目にしないよう気をつけよう……と思考を共有した。
***
レナたちは鍾乳洞の中の温泉に辿り着いた。
広い空間がぽっかり開いていて、乳白色の温泉がほかほかと湯気を立てている。
天井には黒紫色の植物のツルがびっしり張り巡っていて、温泉ホタルの光が点滅している。まるで夜空の下にいるかのようだ。
「うわぁ……!」
「「すっごーーい!」」
レナたちが息を飲んで光景に見惚れていると、レーヴェとキサが誇らしげな顔になる。
種族が長年守ってきた土地を褒められて嬉しくないはずがない。
「太陽の光もお肌の生育に必要なんやけど、ラミアは長風呂好きやから、ずっと照らされて日焼けしてしまうのは嫌なんよ」
屋内のこの場所はとくに大切、と言う。
「この空間、湯気のこもり具合が一定ですね。
どこかに空気の通り道があるんでしょうか?」
リーカが物珍しそうに辺りを眺めて、レーヴェに聞いた。
「植物の根が温泉の湿気を適度に吸ってくれてるんよ。
だから私たちラミアは快適に入浴できるし、もちろんお嬢ちゃんたちも息苦しくならへんはずや」
リーカが満足そうに頷く。
隊長ロベルトがいない今、レナパーティを守る立場なのはリーカ一人だけなので、慎重に安全確認したのだ。
はらり、と優雅にレーヴェが脱ぐ。
あまりに完璧な女体があらわになり、レナたちは「きゃーー」と照れながらもガン見してしまった。
(しまったつい! うがあああ警報のアラームがあああ)
レナが頭を押さえて、リーカにメンタルを心配された。
この一連の流れがもうかわいそうである。
<ウワーーオ! しなやかな白い肢体。女性らしい丸みがエッチー! くびれた腰に豊満なバスト……淫魔族に引けを取りませんね。
ほほう、これはこれは>
キラがナチュラルに実況している……もしかして密かに撮影しているのだろうか?
いやまさかそんな非常識な。ハレンチな。
いくら分身体がバレないからって……キラは無性別だしアリだと思ってしまわなくもない。
いやダメだ。
きっとやってない。
「すごくおっきい、お風呂ー! こんなの……初めてっ」
「あ、リリー待ってよ。シュシュも一緒に温泉ダイブする!」
「こら二人とも。走らないの」
着ていた服をブレスレットに収納して、完全裸族となった女児が温泉に突撃していく。
レナがハラハラと注意するが、レーヴェは余裕の表情だ。
「今は他のラミアもおらんからどう過ごしてもらっても構へんよ。恩人やから特別にね」
「いつもここには誰かしらラミアがいるのじゃが、貸切だから騒いで良いとレーヴェは言っておる。
妾もいざ!」
キサもうずうずと服を脱ぎ走り去ろうとするが、
「お待ち」
もちろんレーヴェに止められる。
首元に腕をするりと回したのでソフトラリアット状態になり、キサはげほげほ咳をした。
「姫さん。着ていた服はきちんと畳んで石棚に置くの。いつもできてたやないの。はしゃぎすぎよ」
「はぁーーい……」
初めての同年代の女の子に感化されているらしい。
レナが少し申し訳なさそうにしている。
リリーとシュシュはてへぺろしながらも、ぱしゃぱしゃお湯をかけあって遊び始めた。
立ち上がった二人の腰までお湯があるので、溺れる心配はなさそうかな、と保護者はとりあえず安心する。
「それから、お湯から上がった時のお着物を用意する」
「……! レーヴェ、それは……!」
レーヴェは腰のポーチ(おそらくマジックバッグ)から、極上の着物をするりと取り出した。
にこっと微笑む。
「姫さんが脱皮した時に贈ろうと思とったとっておき。エルフの里にオーダーメイドした特注品よ。
虹色の目を持つエリートエルフが糸を織って魔法をかけた[カラーチェンジ生地]のお着物」
光沢のある純白の布地を、キサが惚れ惚れと見つめる。
「さあ。姫さんのお着物はどんな色に染まるんやろうね?」
「……うん」
キサが大切そうに着物を受け取って、抱きしめた。
魔力を込めると、着物はうっとりするような桃色に染まっていく。
「まあ! 素敵な色やないの」
レーヴェの賛辞に、キサは心から嬉しそうに微笑んだ。
温泉に浸かりながらリリーとシュシュは拍手して、レナとリーカも驚きながら着物を褒める。
キサが感激したように目を潤ませた。
「みんなぁ、ありがとう。
ラミアが成人した時には、エルフの里に特別布地を発注するのがしきたりなのじゃ。
魔力を流した時の気持ちによって生地の色が変化するため、ラミアの一生の宝となる……!」
「そうなんですね。キサさんの色は幸せそうでとても素敵です」
「むふふ。レナよ、苦しゅうないぞ。
たくさんの者に祝福されて、妾は大満足なのじゃ!」
石棚にそおっと桃色の着物をしまったキサは、しずしずと温泉に浸かりにいく。
そのまだ小さい後ろ姿を眺めたレーヴェは(桃色やなんて。もしかして本気の恋なんやろうか?)と少し驚いて思考した。
フルオープンなレーヴェの美しい女体から目をそらしつつ、レナとリーカも服をブレスレットに収納して裸になった。
「あ、貴重品は身につけておきます。お守りみたいなものなので」
レナは呼び笛ふたつと、服飾保存ブレスレットのみを身につけている。少し珍妙な格好だ。
ーー赤の祝福装備の[華麗ナル赤ノビスチェ]を脱ぐのは勇気がいった。
[美シキボディライン]の効果が消え失せてしまうので、レナの素のボディステータスでこのグラマラスな女性たちと向かい合わなければならないのだから。
なお%増加の変化なので元が小さなレナの胸元はさほど変わらなかったが。
タオルはお湯に浸けない派のレナは「湯気よ私の元に集まって!」と念じる。
ここで幸運を使わずにどうする!
▽うっすらとレナの身体が湯気に包まれた。
ツタに咲いていた黒の花がレナの方を向き、一箇所に集まった湯気を吸い取ろうとする。
「お嬢ちゃんの周りの湯気が濃いから、温泉植物が反応してるみたいやわ」
「きゃー!? そうはさせないー!」
なんという試練。
レナは大急ぎで温泉に向かい、身体が衆目にさらされる前に、なんとか肩までお湯に浸かることができた。
「ふぅ……。極楽ぅ」
じんわりと心地いい熱により、レナは自然にとろけた声が出てしまう。
とろりとした乳白色のお湯は確かに肌に良さそうだ。
「あはは。もーレナちゃんってば、駆け出しちゃうから転ばないか心配したよ」
そういう場面をよく見ているリーカが苦笑し、
「せっかくの入浴シーンやのに色気があらへんなぁ。お嬢ちゃんもまだまだお子ちゃまみたいやね」
レーヴェがくすくす笑う。
そして二人も温泉に浸かった。
お湯には色があるので身体が透けていない。
アラームがひどくなる心配はなさそう……とレナがほっと息を吐く。
「ふぁぁー……温泉の成分が身体に染み渡る気がするぅ」
リーカが機嫌よく言い、自分の手の甲をすりすり撫でる。
温泉水をすり込ませるように。
「ふふふ。
実は近頃は温泉の効能が薄まってきてた感じがしてたんやけど……今日はなんだかすごく良い感じにお肌が潤うわ。こんなん久しぶりや」
レナが、ん? と首をかしげる。
この身体が癒されている感じ、覚えがあるような?
<皆様の疲労を労わるため、私が気を利かせておきました。てへっ>
(やっぱり粗茶だったーー!)
<さささ、全身でエリクサーを満喫して下さいませ。
リーカさんは私の周辺を視ないようにしていますから大丈夫です。
温泉にエリクサーを混ぜることによって元々の効能がアップし、身体が女性らしく成長する……私も成長する……という効果が期待できると思われます>
(ありがとう! キラありがとう!)
現金なレナである。
キラを拝んでいる。
レナのマジックバッグに入っていた洗面器の中に収まり、すいーーっと温泉の上を滑っていったキラは<どういたしまして!>と光ってみせた。
綺麗なものが好きなキサに手に取られて、<きゃっ>と赤く点滅してみせる。
女児たちはキラと戯れる。
「お嬢ちゃんの持ち物は本当に珍しいものばかりやなぁ」
「ありがとうございますレーヴェさん。あの子は従魔のミミックです」
「あら、失礼。まだ従魔の子がおったんやね」
「ミレージュエ大陸の都市にも従魔が滞在していますよ」
「クラーケンを倒したあのおっきなバタフライの執事さんのことやろか?
いやぁカッコ良かったわぁ」
思い出話に花が咲いた。
途中、レーヴェが「船旅を助けられて、綺麗な雄に心ときめかなくもなかったわぁ」と楽しそうに言って、レナとリーカが戦慄する一場面もあった。
リーカは激しく首を振り「魔王様を脅す器ですからよほどやめておいたほうが」と思わず言いかける。
レナは「こ、交換日記から……!」と口走ってしまった。
レーヴェの色仕掛けは凄そうだけど、レナとアリスへの従属命なモスラが塩対応しそうでラミアのプライドがへし折られないか心配……とは言えないのでオブラートに包んだ。
冗談よ、とレーヴェは微笑む。
「二人は恋人は?」
「この職種だと交際も結婚もハードルが高くて。仕事が恋人ですかねー」
「従魔たちを愛でるのに忙しくて……あと、安息の地を早く探したいので旅優先で」
レナとリーカはもごもごとお茶を濁した。
「二人の反応は初々しくて可愛らしいなぁ。
ところでリーカさん。
……姫さんの髪の毛を守ってくれてありがとうね。
ぶっちゃけた事言ってしまうけど、メドゥーサ一族の女性は外見を重視しないって聞いてたから偏見があったと思う……今回、貴方と出会えて認識が改まって良かったわぁ」
「あ、いえ。たしかに私の故郷の一団は内面を磨くことに重点を置いているので、美容には関心が薄いって言われています。エチケット程度には気にしてるんですけどね。
私も、ラミアの皆さんは里に篭っているしお会いしたことがなくて、何か偏見を持っていたかも……。
こちらこそ、親しくなれて良かったと思っています」
「二人が仲良くなれて嬉しいです」
にこやかなお姉さんたちを見て、レナも嬉しそうにしている。
女性は温泉でのんびりすごしている。
天井の花が、エリクサーの蒸留水を吸い込んで、ユラユラと揺れていた。
<あ、マスター・レナ! 大変です! マスターの素肌に赤の魔道具が触れたことで……>
(嫌な予感しかしないんだけど!?)
<ピンポーン。お見事で御座います。赤の祝福を賜りました。
朱蜘蛛の呼び笛が[朱蜘蛛ノ”喚ビ”笛]にレアクラスチェンジいたしました。
おそらくサディス宰相を召喚魔物として使役できます>
(ノーーーー!)
<きっとこれも運命。何かに役立ちますって>
穏やかに過ごすものと思っていたのに!
レナは気を紛らわせるために女児の遊びに混ざりに行って、思う存分お湯を掛け合ってたっぷり楽しんだ。
▽Next! そのころ男湯では




