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影の首謀者より


 ――キミ。


 おい、そこのキミ。そうそう、あんただ。


 なあ。キミは、彼らの物語には、目に見えぬ役者がいるかもしれない、と考えたことがあるか?


   甥っ子と後輩、

   マスターと酒屋の娘、

   作曲家とヴァイオリニスト。


 わたしは、それらのすべてを見守ってきた。



 ぎぃっ、ぱたん。木製のドアが音をつくる。わたしは、この音が嫌いじゃない。ちろり、と視線を向ければ、マスターがワインを見繕っていた。


「ん? ……ああ、お前さんか。しばらく見なかったから、どうしてるかと思ってたんだ」


 どうもせぬわ。わたしは、ただ存在するのみ。物語の行く末を見届けるのみ。


「そう睨むなって。ま、お前さんは元からそのツリ目だけどな。あ、カニかま食うか? おやつにつまんでたんだが、余っちまってなあ」


 ふむ。そうだな、頂こうか。



 ぎいっ、ぱたん。ぶどう酒の香りがほのかに漂う空間に、わたしは再び一匹きりとなった。マスターが置いていったカニかまをつつく。高級版で、なかなかに味がしみていた。


 さて――そろそろ別の物語でも探しにいくかな。何だかんだでここは気に入ってしまったからな、住みかにでもしてやろう。やもりの身には嬉しいことが沢山あるのだ、この地下室は。



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