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1-4. 宿への帰路
「寝過ぎです」
空には既に星が輝き始めていた。
「いくら呼び掛けても起きないし」
よく見れば毛布が掛けてある。
「聞いてますか?」
まずは頭を働かせようと懐に手を伸ばしたが、目的の物を奪われた。
「煙草は害悪です」
奪い返そうと伸ばした手を叩き落とされ、俺は頭を掻きながら起き上がる。
「宿に戻るか」
俺の言葉に対して、あいつは意見を述べる。
「今から取り掛かれば、明日の朝には出発出来ます」
俺はその意見を却下すると、宿に向かって歩き出す。
更に意見を重ねる彼女に対し、俺は淡々と理由を返す。
「俺が付き合えん」
「一人で作業して、誰が確認する」
「朝に見るより、直接描いてるところを見た方が効率的だ」
俺の理屈に対して、彼女が呆れ始めているのを感じた。
「そもそも、見て分かるんですか。」
そう問いかけてきた彼女に対して、俺は足を止めて振り返ると、まっすぐに瞳を見据えて言葉を返す。
「さっぱり分からん」
目の前で堂々と溜め息を付く彼女の姿がおかしくて、俺は表情を見られないように前へと向き直る。
それでも不満げな気配に対して、俺は逆に質問をしてみた。
「俺が作業に付いて行くと迷惑か?」
俺の質問には答えず、彼女は今度こそ黙って後を付いて来た。




