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1-2. 手の中の温もり
私の仕上げた成果を確認した先生は、今度は腹が減ったと騒ぎ出しました。
宿にて準備しておいた弁当を広げると、先生は瞬く間に平らげてから「味が薄い」と文句を口にします。
「これが身体に良い味付けです。」
片付けながら返した私の言葉は既に耳に入っていないのか、先生は再び横になりました。
「次の場所に行かなくて良いのですか」
私の言葉に対して適当な相槌を打つと、先生は目を閉じました。
なぜ、当然のように私の膝を枕にするのか。
せめて次の場所に移動してから休んでくれれば、作業が出来るのに。
言ってやりたいことは山ほどありますが、こうなった先生は梃子でも動かないことを私は知っています。
手持ち無沙汰になった私は、仕方がないので先生の頭に手を置いてみると、ゆっくりとその手を動かしてみました。