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第67話 剛力の一太刀

「行くぞ、紀章!」

「おォ!!」


 刀を生成し終わり、再び上段の構えに移行した『ボス』に向かって、今度は黎翔が先に仕掛けた。


(俺のナイフじゃあの刀とは斬り合えない。リーチも速度も力も負けてるからな。で、長期戦になればなるほど俺の体力が削られて不利になる。5分もすれば攻撃を捌き切れなくなるだろうな。つまり、俺が今狙うべき勝ち筋は……最速で距離を詰めて、速攻で狩ることだ!!)


 瞬時に思考した黎翔は、地面を全力で蹴って一気に距離を詰めた。


(アイツ、見た目の割にPOWは相当高い。が……DEXはそこまで高くない。俺との差も少ないしな。なら……隙をつけば、簡単に詰められる)


 そう考えた黎翔は、上段を完成させてすぐのタイミングで動いたのだ。

 結果黎翔の読みは見事的中、自身とそう変わらない体格の『ボス』の懐に、一気に入り込むことに成功した。上段を作っていた『ボス』の懐は無防備であり、いとも容易く潜り込めた。


(行ける!!)


 そう確信し、右手で握っていたナイフに左手を添えて全力で突き出した。その(はらわた)を、一撃で貫くために。


 だが、世の中そう上手く行かないのが現実である。


(っ!?ダメだ、間に合わねぇ!!)


 一瞬、『死』を全身で感じ取り、黎翔は伸ばしていた右腕を引き戻した。そのままその場で止まって防御の体勢に切り替える。


 直後───『ボス』は一歩後ろへ退きながら、全力で腕を振り下ろした。


 防御体勢に移っていた黎翔は、辛うじてその太刀筋を捉えることが出来た。真正面から降りかかる暴虐なる一振りを、真正面から受け止めた。


 再び全身に猛烈な負荷がかかった。ズシンという衝撃と共に、黎翔の身体が若干床に沈む。


(まずい、またさっきと同じ状況に……!これ以上は、腕が持たねぇ……っ!!)


 その考え通り、すぐに黎翔の両腕が痺れ始めた。そのまま一気に押し込まれ、刀の根元部分が額に迫った。


 しかし、ここで焦る黎翔ではない。冷静さを失うことなく対処に移行する。


「二度も同じ手を食うかっての……!!」

「ギッ!?」


 力負けして黎翔の額が斬られるよりも早く、黎翔は突然ガクンと膝を落とした。それにより、黎翔の頭が一気に高度を落とした。

 両手で握ったナイフで辛うじて刀に抵抗していたため、僅かながら頭と刀との間に距離が出来た。斬られるまでの猶予が伸びたのだ。


 その猶予の隙に、今度は左足に力を込めて地面を蹴った。それによって黎翔の身体は右に流れ、本来黎翔を斬るはずだった刀は空を斬るのみに終わった。


 ビュン、という剣先の走る音が耳元を掠め、直後にドゴッ、という刀が地面に刺さる音も聞こえた。ちょうど死角になっているため黎翔には見えていないが、刀が刺さった部分の周辺は床が割れて抉れていた。

 黎翔にも、パキパキという地面が割れる音は聞こえており、その一振りの威力がいかにイカれているかがよく伝わっていた。


(音が完全に鈍器だな……絶対食らわないようにしないと)


 そう考えつつ、次の行動へ移る。


(この距離、かつ相手の刀は埋まってるときた。ならば……攻撃あるのみ!!)


 黎翔は少し痺れる右腕を無理やり動かし、即座にナイフを逆手に持ち替えた。

 右足で踏ん張り、一気にそのまま立ち上がる。そして、全力で右腕を伸ばす。


 それに対して、『ボス』はその場で対応しようとしていた。刀を握っていた右腕を放し、握り締め、黎翔に拳を振るおうと構えていた。

 POWとDEX、そして黎翔のナイフのリーチなどから、どう考えても『ボス』の拳の方が先に黎翔に命中する。そして、命中したら黎翔は死ぬ。


 が……


「ギ───ッ!?」


 『ボス』は、突然何かに気づいたように固まった。振り上げた拳をそのまま止めた。


(っ!!チッ……!!)


 黎翔は少し動揺しつつも、そのまま目の前で固まっている『ボス』の首筋に向けて、その刃を振るい───


 外した。


「っ!!」


 ビュン、パシュッ、という2種の空を切る音だけが鳴った。その後、複数の氷塊が『ボス』が元いたはずの場所に飛来し、地面に当たって砕け散った。

 見ると、いつの間にか『ボス』は一息で詰めきれない程度の距離を取っていた。屋上の中央付近から端まで、一気に移動したのだ。


(速い……つか、刀は……)


 チラリと横を見ると、さっきまで持っていたはずの刀が地面に埋まっていた。完全放置で、更に黎翔への攻撃よりも回避を優先したらしい。


(……アイツ、気づきやがった。2人の攻撃に)


 『ボス』が黎翔を攻撃せずに退いた理由はそこにある。

 今の攻撃は、3人の同時攻撃だった。至近距離で黎翔が気を引き、紀章の銃弾を撃ち込んで動きを更に鈍らせ、本命の妃の魔法で止めを刺す───という、事前打ち合わせ通りの作戦。


 ───だったのだが、『ボス』は気づいてしまった。紀章が銃を構えていることに。妃が魔法を発動しようとしていることに。

 それで、攻撃より回避を優先したのだろう。


 向こうが黎翔と距離を取ったのを見て、黎翔も一度紀章たちの方に下がった。敢えて脱力して隙を見せたが、『ボス』は当然引っかからなかった。


「チッ、仕留め損なッたかァ……勘のいい奴だなァ、オイ」

「完全に読まれたね。距離取られちゃったし、少し面倒かも」

「今ので仕留めておきたかったんだがな。もう安易には攻められないぞ」


 3人の中に、僅かに焦りが芽生え始めた。しかし、それでも冷静さは保てていた。


 距離を取ったまま、再び互いに構え直す。黎翔は2人を守るように前に立ちつつ順手に握り、『ボス』は上段に戻して。


(さぁ、来るぞ……!!)


 全身で殺気を感じ取り、悪寒が走った。『死』のすぐ近くに立っていることを再認識しつつ、黎翔は冷静だった。


 呼吸、僅かな足の力み、ミリ単位の腕の揺れ。

 ごく小さな変化さえ見逃すことなく監視し、相手の動くタイミングを見極め───


(こうなりゃ狙うは……カウンター一択だ!)


 攻撃に合わせ、反撃できるよう用意した。全神経を最高に研ぎ澄ました。


 再び、『ボス』との攻防が幕を開ける。


(来る!!)


 僅かに左足に力が入ったのを見て、黎翔はナイフを前に突き出した。動きが見えなくても、向こうが距離を詰めてくる以上当たる可能性は高かったから。


 が……『ボス』は、黎翔の前には現れなかった。


 ビュンッ、と空を切るあの音が聞こえた。黎翔の背後で。


(っ!?狙いは俺じゃない!?クソッ、殺気はブラフか!)


 いつの間にか自身に向けられていた殺気が感じられなくなっていることに気づき、ようやく全てを理解した。騙された、と。


 咄嗟に振り向くと、『ボス』は紀章の左側に移動していた。そして、そのまま刀を振り下ろしていた。

 振り向いた段階では時すでに遅し。刀は地面まで振り抜かれ紀章は真っ二つに───


「ギィ……!!」

「ハンッ、もう慣れてンだよォ、てめェーの速さにはなァ!!」


 は、なっていなかった。スレスレで見切って回避したらしく、『ボス』に向けて至近距離で銃口を向けていた。


「『魔力弾スペルバレッド』!!」


 引き金(トリガー)を引き、その頭目掛けて弾丸を撃ち込んだ。

 が、当然『ボス』もそれは見えている。至近距離での発砲にも関わらず、僅かに頭を傾けるだけで簡単に回避してしまった。


 最低限の回避行動に留めた『ボス』は、すぐに次の行動───攻撃へと移った。左手を外し、右手を捻り、刃先を上に向ける。そして……


 紀章の拳銃目掛けて振り上げた。燕返しである。


「なッ!?」


 それに反応しきれなかった紀章は、右手のひらあたりから拳銃まで綺麗に斬られてしまった。


 拳銃は半分に切断され、手のひらから中指にかけて深い切り傷が入れられた。少量の血液が『ボス』に飛び散った。

 この程度の傷で済んだのは、紀章が辛うじて後ろに飛び退いていたからだ。その最低限の回避行動が無ければ、腕を縦に真っ二つにされていただろう。


「ギギッ!!」


 その最低限の回避行動で体勢を崩した紀章に対し、『ボス』は更なる攻撃を狙った。再び左手で刀を握り、振り上げられた刃を紀章に向けた。


「させねぇ……よっ!!」

「『氷結魔法・フリージア』!」


 紀章への攻撃を狙っていた『ボス』に対し、黎翔の刃と妃の魔法で挟撃した。


「ギッ……」


 それに気づいた『ボス』は、少し煩わしげに唸った。そして、すぐに攻撃を中断してその場から離れた。


 回避されることを見越していたため、黎翔と妃の攻撃もすぐに停止した。黎翔はナイフを振らずに留め、妃は魔法を中断した。

 そして、紀章の方に近づきながら話しかける。


「大丈夫か!?」

「酷い傷……!!」


 『ボス』への警戒を継続しつつ、紀章の心配をする。


「心配ねェ、俺はなァ。だがァ……拳銃がやられちまッた。もう中衛ミドルは出来ねェ」

「あぁ……そうだな」


 表面上は、冷静に戦況を分析しているように見える発言をした。が、その腹の中は苛立っているらしく、言葉や声の節々から怒りが伝わってきた。


(さて、どうするか……拳銃がないと紀章は前衛フロントのサポートが出来ない。紀章のサポートが無いと、俺はかなりキツい。しかも、妃の魔法も当てにくくなった。これはかなり厳しい状況だな……)


 黎翔の思考にも少しずつ焦りが見え始めた。恐らく、それは妃もだろう。


(一旦退くのも手だが……あんま時間かけると御織がヤバい。でも、この状況で戦って勝てるか……?ダメだ、俺じゃ判断できねぇ。紀章たちに聞こう)


 一度冷静になるためにも、2人に聞くことにした。チラリと視線を送りつつ、口を開く。


「紀章、どうす───」


 どうする、と質問しようとした黎翔の声を遮るように、紀章が短く声を発した。


「───30秒だ」

「え?」


 それだけ呟いた紀章は、何故かこの状況でニヤリと笑っていた。それを見て、黎翔は何故か少し安心してしまった。


 何か策があるんだと、理解したから。


「30秒稼げェ、黎翔ォ。俺の第二の奥の手を見せてやるよォ」


 そう言いながら、紀章は魔法を発動し始めた。




──────────────────

蒼井黎翔 ID: 137438691328

Lv.21

POW:1757+50 DEX:1532 DEF:1168

INT:0 MP:0 RES:0  Total:4458

武器:猟刃……マナ属性 特殊効果なし

職業:狩猟者ハンター 階級:特異

スキル:『狩人の心得』パッシブ

『狩猟者の勘』アクティブ化 2012s

『野性』パッシブ

『獣殺一閃』発動可能


ステータス補正:物理特化

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