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第63話 衝動の制裁者、最強の顕現

投稿遅れてすみませんでした。

新生活にまだ慣れてない関係で、暫くは投稿頻度遅くなるかもです。お許しくださいませ。

「……死んだかァ」


 刺した腹部から紀章の顔に飛び散った紫色の体液を袖で拭いながら、モンスターの肉体に触れる。

 生命活動を停止したその肉体からは、ドクドクと体液が溢れ出していた。口から、腹から、次々と。


 開ききった漆黒の瞳孔には、何の感情も無かった。怒りも、恨みも、苦しみも。その全てから解放された先に待つ虚無のみが、その瞳孔から伺えた。


 そして───その瞳孔が映し出す男の瞳もまた、深い闇を携えていた。まるで人形かのように、虚ろな瞳だった。


(人もモンスターも死ねぱ終わりだァ。打ち捨てられた死体ごと魂まで焼かれて無の闇に呑まれる。違ェーのは、骨が残るか残らないかだけだァ。だから、死者に罪は問えねェ。死という名の執行官が無という名の裁きを与えた時点で、罪は償われンだからなァ)


 力なくモンスターを眺める紀章は、ゆっくりと思考していた。勇者として、正義を貫くものとして───正しく、冷静な思考を。


 それが上辺だけであることは、本人が最も自覚していただろう。


「だがなァ……分かッてて尚、止まらねェーンだよォ。俺の腹ン中に渦巻く、この怒りだけはァ……!!」


 そう呟いた瞬間───正義の人形に、生気が戻った。

 瞳がギラリと輝き、眉間に皺を寄せる。両拳を強く握り締め、全身に力が入る。


 この瞬間、彼の行動原理は理論を超越し───

 純粋な怒りだけが、全身を巡っていた。


「グギョオオオオオオオオオッ!!!」

「………!?」


 それを見計らったかのように、不快な叫び声がフロア内に響いた。

 その声は、紀章の後ろ───即ち、吹き抜けの向こう側から聞こえたようだった。


 振り向くと、そこにはやはり両腕が刃状のモンスターが立っていた。

 それも───


「二体同時、かァ」


 同じような個体が、二体並んで立っていたのだ。


「「グギョオオオオオオオオッ!!!」」


 紀章と目が合った瞬間、威嚇するかのように揃って雄叫びを上げた。その音だけで吹き抜けのガラスは軋み、建物が揺れるようだった。


 一般人がこの光景を見た場合、恐らくそれだけで失神するだろう。最悪、ショック死する可能性まである。それ程までに恐ろしく、強烈な威嚇だ。


 が、紀章は平然とその場に突っ立っていた。慌てる様子も、怯える様子もなく、ただ静かに。

 当然、その脳はフル稼働して現状を分析していた。


(この『ソルクティス』のモンスターは強い。一体ごとの強さは多分俺と変わらねェーくらいだァ。奥の手がバレてる現状で二体同時に来られたら、対処は不可能だろォなァ。まァ逃げ一択ッてとこかァ)


 この状況で尚的確かつ冷静な分析が出来る。その事実は、紀章が踏んできた場数の多さを物語っていた。その中で得た経験値と、彼の持つ純粋な度胸により、彼は正しい選択を選ぶことが出来るのだ。


 ───本来の能力が発揮出来たら、の話だが。


(この状況で退く訳無ェーだろォがァ……!!)


 怒りに支配された紀章に、正しい判断を下せる冷静さは残っていなかった。怒りに染まった瞳で二体のモンスターを睨む紀章は、既に相手を殺すことしか頭に無かった。


 一瞬チラリと、近くに落ちた拳銃を見る。が、すぐにモンスターに視線を戻した。


(遠すぎる。拾ってる時間が億劫だァ)


 別に3歩歩けば取れる距離だが、紀章はその時間さえ躊躇った。それ程までに、怒りは限界に達していた。


 両手を構え、魔力操作でマナを拳に集中させ、しかと二体のモンスターを睨む。

 7階、吹き抜け越し。再び戦いが始まろうとしていた。


 ───のだが。


「そこまでだよ、紀章」


 その緊迫した空気を引き裂くように、冷たい声が割り込んできた。


 最強の少女が───暁御織が、その場に顕現したのだ。


「「「ッ!?!?」」」


 互いに相手のことしか意識していなかったモンスターと紀章は、その声にかなり驚きを示した。極限まで高まっていた集中力が一瞬で四散し、戦闘態勢を解いた。

 その瞬間───


「『重力魔法・グラヴィティア』」


 最強の一撃が、放たれた。


 ズシン。

 静かな揺れと共に、それは訪れた。


「……………!!!」


 二体のモンスターの肉体が、突然跡形もなく消失した。そして、元いたはずの場所から、紫色の液体が周囲に飛び散った。

 大量に撒き散らされたその液体の中心には、巨大なヒビ割れが出来ていた。抉れた床は、その一撃の威力を物語っていた。

 そして、その周辺には白い粉のようなものが散らばっていた。モンスターの外殻が粉砕されたものだろうが、肉眼で辛うじて認識出来るサイズになっていた。そこにどれだけの力が加わったらこうなるのか、見当もつかない。


 紀章は、目の前で振るわれた理不尽の代名詞のような力に対し、一瞬呆気に取られてしまった。完全に硬直し、思考も含めた全ての活動が停止した。


 しかし───すぐに、またあの怒りがふつふつと沸き立ってくるのを感じた。


「御織ォ……!どこだァ!!」


 姿の見えない彼女の姿を、キョロキョロと探す。


「ここだよ」


 という声の方を見ると、御織は8階の吹き抜けあたりの高さに浮いていた。冷たい瞳で紀章を見ていた。


「テメェ、余計なことすんじゃァねェ!!アイツらは俺の獲物だろォがァ!!」


 ゆっくりと高度を下げ、紀章の方に近づいてくる御織に対し、感情の赴くままに暴言を吐いた。


「君の獲物?」


 それに対し、御織は一ミリも動じることなく静かにそう聞き返した。


「そうだァ!あれは俺が先に見つけて俺が戦おうとしてたヤツらだァ!俺がァ……俺が殺さなきゃァならねェーヤツらだッたんだよォ!!」


 完全に頭に血が昇っている紀章は、手を大振りに振り回しながら叫び散らかす。その形相は、モンスターより怖いのではないかと思うほどだった。


「なんで君に殺す義務があったの?」


 それでも、御織は動じない。再び、静かに質問する。


「それはァ……アイツの仇だァ!殺されたアイツの無念を晴らすためだァ!!」


 ベンチに寝かされた幼女の遺体を指差しながら、そう返事を返す。感情論に埋め尽くされたその言葉節々から、紀章の必死さが伺えた。


「なんで?」

「は?」

「なんであの子の仇で、あの子以外のモンスターにまで執着してるの?君が致命的なダメージを受けることを分かっていながら、どうして戦おうとしたの?」


 そんな紀章と対照的に、御織の言葉は冷酷だった。論理に支配されたその言葉は、ジワジワと紀章の焦燥を掻き立てた。


「そッ、それはァ……アイツを殺したヤツと見た目が同じなんだァ!そもそもモンスターを殺すのに理由なんか……!!」


 徐々に、紀章の言葉の歯切れが悪くなっていく。

 それを認識した御織は、小さなため息をついた。そして、触れた。


「滑稽だね、紀章」


 紀章の、逆鱗に。


「………あ?」


 その言葉で完全にブチ切れた紀章は、目の前に降り立った少女にズカズカと近寄った。そして、


「テメェ!!ふざけンなよォ!!!」


 物凄い剣幕で捲し立てながら、御織の胸ぐらに手を伸ばした。ただ、怒りのままに。


 ……しかし、その手は胸ぐらを掴む前に進めなくなってしまった。何かに手首を掴まれたかのように、突然。


「ッ!?重力魔法かァ……!!」


 それが重力魔法による自衛だと即座に理解し、更に苛立ちが募る。


「紀章、今の君はただ怒りに任せて行動するおバカさんだよ。まるで子供みたいだね」

「ンだとテメ───」

「って言いたいとこだけど、君はそれ以下だよ。自身の愚行を、犠牲者の仇討ちという大義名分で補おうとした。本当に愚かで滑稽だね」

「ッ!?」


 その言葉を聞いた瞬間に、紀章の動きが止まった。


「怒りに呑まれるまでならギリギリ理解出来なくもない。人間である以上起こり得る事象だしね。でも……それを嘘で補完することは許されない。しかも、犠牲者の存在を盾にするような嘘は尚更ね」

「そッ、それはァ……」


 紀章は、狼狽えながら後ろにジリジリと下がる。反論出来る言葉が見つからず、声が出なくなる。

 そんな紀章に対し、今度は御織がぐっと距離を詰めた。そして、紀章がしようとしたのと同じように胸ぐらに手を伸ばし、がっちりと掴んだ。


 それを自身の方へ引っ張り、顔を至近距離まで近づけて、ハッキリとした声で伝えた。


「紀章。それが───勇者として正しい行いなの?」

「ッ、ぁ………!!」


 その瞬間、一瞬紀章の心臓が大きく跳ねた。自身の核心を貫く一言に、全神経が反応した。


 紀章は、その時ようやく理解した。自身の過ちを、それを認めようとしなかった自身の愚かさを。


「あなたの理想とする勇者は、怒りに任せて剣を振るうような存在なの?あなたの理想とする勇者は、正義を盾に不合理を無理やり合理化するような存在なの?」

「…………違う」


 更に言葉を募らせる御織に対し、紀章はぼそりと呟いた。その言葉は、彼自身に向けたものでもあった。

 自身に言い聞かせるようなその言葉の後、紀章は冷静な状態で考えた。


(俺の理想とする勇者は……)


 静かに目を閉じ、考え、そして───

 静かに、目を開いた。その瞳は、優しく澄み渡っていた。


「すまねェ、御織ォ。俺ァ自分を見失ッてたみたいだァ」


 安らかな言葉だった。若干の後悔を含みつつも、そこには前向きな姿勢が含まれていた。

 その様子を見て、御織はようやく表情を明るくした。


「分かればよろしい。じゃ、今から何すべきか分かるよね?」

「あァ。虹崎と黎翔と合流して、この『ソルクティス』を終わらせる」


 落ちていた銃を拾い、懐に仕舞い……

 御織と共に、吹き抜けのガラス柵に足を掛けた。


「行くよ!」

「あァ!」


 そして、二人でガラス柵の向こう側に飛び出し───


「『重力魔法・グラヴィティア』!」


 その魔法で、2人は一気に上層へと向かった。




──────────────────

桐生紀章 ID:2121225

Lv.39

POW:??? DEX:??? DEF:???

INT:??? MP:??? RES:??? Total:????

職業:無し 魔法適正:土魔法

スキル:無し

習得技術:魔力操作

──────────────────

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