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第58話 和解、新たな友人

「おめェー、召喚者だろ?」


 紀章のその言葉を聞き、黎翔の心臓が大きく跳ねる。


「べっ……つにそんなことねぇよ?」


 少々詰まりながら、とりあえず否定する。


 黎翔は嘘が苦手だ。嘘をつこうとすると思考が上手く働かなくなり、出まかせばかり言ってしまう。その上、緊張でカタコトの日本語しか出てこない。


 そんな下手くそな嘘を見抜けない程紀章は馬鹿ではなかった。


「おめェー、嘘下手ッてよく言われンだろォ?」

「ぐっ………」


 呆れ顔で事実を述べられ、否定できずに固まってしまった。


(これじゃあほぼ認めたようなもんじゃねーか。俺が召喚者だって……)


 半分諦めたように天を仰ぐ。もう抵抗のしようがない……と絶望する。

 紀章の顔を見るのさえ怖くて、仰いだ天から目を離せなかった。顔を戻した先にいる男が、何をしてくるか分からなかったから。


「まァそんなとこだろォと思ったぜェ。昨日から見るからに世間知らずの田舎モンッて感じだったからなァ。どォりで見ててイラつく訳だァ」


 紀章は、比較的穏やかな声でそう話していた。怒りだとか、行動を起こす意思だとか、そういったものは何も感じられなかった。


「はァ……ッたく、いい加減目ェ合わせろ、黎翔ォ」

「……………ん」


 ため息混じりにそう言われ、黎翔は仕方なく紀章に顔を向けた。

 気まずさと恐怖で引きつった顔を見て、紀章は呆れたように再びため息をついた。


「おめェー俺のことなンだと思ってんだァ?いくらなんでも怯えすぎだろォ?」

「だって……昨日初見で殺されかけたじゃねーか。見た目も怖いし……仕方ないだろ」

「そりゃァ……まァ、そうかァ。だがよォ、不審者見つけたらブチのめすンは当然だろォ?俺ァ悪ィとは思ッてねェーからなァ」


 素直に愚痴を告げると、意外にも怒られたりはしなかった。むしろ、何故かまともな論調で諭されてしまった。

 ここに来てようやく、黎翔は違和感を覚えた。


(なんなんだ……?さっきから何一つ敵意を感じない。それどころか、コイツの視線は……)


 ゆっくりと、紀章の目を見る。黎翔を見つめる彼の瞳は……


 黎翔の正体を知る前後で、何一つ変わっていなかった。その三白眼は、真っ直ぐに黎翔を貫いていた。


「なかなか大変だなァ、おめェーも」

「!?お……おぉ」


 紀章は、同情の言葉を伝えてきた。まさかこの不良じみた男からそんな言葉が聞けるとは思わず、言葉が滞ってしまった。

 次の言葉も行動も出せない黎翔に、紀章は更に言葉を投げかけた。


「なァ、おめェーは何のために蕾種大に来るンだァ?無理やり呼ばれただけのおめェーが頑張る必要なンて無ェーだろォ?」

「!それは……」


 一瞬の戸惑いと逡巡の後、


「強くなるため……あと、ちょっとは大学生活を楽しめたらいいな、なんて思ってたり……」


 御織と昨日話した内容を思い出しながら、そう答えた。


(あんまり楽しみたい、とか言わない方がよかったか……?)


 と後から後悔しつつ、紀章の顔色を伺う。

 紀章は少し不満そうな顔をしていた。やはり気に障ったのだろうか、と怯える。

 が、紀章の反応は黎翔の予想とは少し異なっていた。


「楽しむたァーいい度胸だなァ。ま、悪かァねェけど。だがよォ……強くなるためッてェーのは納得いかねェーな」

「え……?」


 紀章が不満を抱いたのが、黎翔の2つの答えのうち反対側に対してだったのだ。


「と、言うと……」

「強くなりてェー理由がねェーンだよォ。おめェーは無理やり戦わされてる身だろォ?なのになンで飼い主の言うこと聞いて強くなろうと思えんだァ?」


 紀章は、黎翔を少し睨みながら顔を近づけてきた。脅かそうとしているようだ。


「あぁ、それか」


 しかし黎翔は、その脅しに対してなんの反応も示さなかった。むしろ、少し落ち着いていた。


「俺は御織のために強くなりたいんだ。俺を何回も助けてくれたヒーローの隣で、肩を並べて戦うために。そして、俺を救ってくれた英雄を、今度は俺が救うために」


 妃と一緒に、楽しそうに服を見ている御織を見ながら答えた。

 その穏やかで、かつ真っ直ぐ芯の通った声と言葉に、紀章は驚きと感心を抱いた。


「あんなヤツのためになァ。ケケッ、なかなか覚悟決まってんじゃァーねェーか。気に入ったぜ、黎翔ォ!」


 紀章は突然態度を変え、バシバシと黎翔の背中を叩いてきた。


「な、なんだよ急に。あと笑い方統一しろよ……」


 少し驚いたものの、紀章はどうやら味方判定をしてくれたようだと悟り、安心する。同時に、


「……お前はそれでいいのか?召喚者の俺を認めるなんて」


 少し疑問に思い、そう問いかけた。


「?当たり前ェーだろォ。召喚者だろうがなんだろうが、おめェーが人であるこたァ変わらねェーだろォ」


 何言ってんだお前は、とでも言いたげな顔だった。何も分かっていなさそうな、少し間抜けな顔だ。


「……てっきりお前は、召喚者みたいな弱い立場の人間を嫌うタイプだと思ってた」

「なんつー失礼な偏見だァ!?むしろ俺ァそういう奴がいっっっっちばん嫌いだッつーの!!」

「そ、そうなのか……悪かった」


 ここに来て初めて、紀章は怒りを露わにした。黎翔の想像もしなかったタイミングで、だ。


「いいかァ、俺ァそういうカス共を蹴落とすために強くなンだァ。それが一番の目的って訳じゃァねェ。それでも、一つのデケェ理由なのは事実だ。おめェーも付き合え、黎翔ォ」

「えぇ……」

「安心しろォ、おめェーなら大丈夫だァ!!」


 紀章は、やけに馴れ馴れしく黎翔に近寄ってきた。肩に手を回し、耳元で笑いかけてきた。

 この一連の行動や言動に、黎翔はようやく違和感を覚えた。


(コイツ、こんな見た目だし、初対面の印象も最悪だったけど……もしかして、俺が思ってるより遥かに良い奴なんじゃ?)


 正面からしっかりと、紀章の顔を見つめる。

 髪型はチャラいし、ピアスや指輪などアクセサリーもギラギラ輝いていて、服装も相まって威圧感がある。特徴的な三白眼も、相変わらず鋭くて怖い印象を受ける。

 だが……


(……なんだ、別に怖くねーじゃん)


 初対面で感じたあの殺意や敵意は、もうどこにもなかった。黎翔に心を許し、対等な立場として自身を見ているその男に対し、黎翔はもう不快感を感じることはなかった。


「んだァ?俺の顔になんか付いてッかァ?」

「いや、別に。ただ……悪かったと思って」

「?あァ?」


 黎翔は、すっと頭を下げた。


「!?おいおい、急にどうしたんだよォ!?」

「俺はお前のことを不良っぽいからって偏見で避けてた。怖いやつだと思ってたんだ。でも、意外と良い奴だって気づいたんだ。だから、その……失礼な態度取って、ごめん」


 素直に、自分の誤解を謝罪する。

 紀章は、それを見て大きく目を見開いた。


「お、おォ……マジかァ。いやァ、そりゃァ仕方ねェーッつーか、俺もおめェーのこと勘違いしてたからよォ……まァ、おあいこッてことにしよォぜェ?」

「本当か?」

「あァ。んじゃァ俺たちは今からダチだぜェ?」

「……!あぁ、もちろん!!」


 互いに手を出して、笑顔で握手を交わす。

 紀章の手は相変わらず分厚かった。指の付け根の肉刺はザラザラしており、日々の努力が伺えた。


「そういえば、紀章って剣道やってるんだよな?」

「あァ、まァな」

「じゃあなんでこの間は銃使ってたんだ?」

「剣振り回したら部屋ぶっ壊れンだろォ?前それで怒られたからなァ、屋内では使えねェーんだァ」

「そんな理由か……」


 ずっと気になっていた答えが、想像以上に間抜けなものだったため、呆れ笑いが零れた。


(でも……なんかいいな、こうやって『友達』って呼べるやつと話せるのは)


 御織とはまた違った、完全に対等な関係の友人。

 黎翔にとって、この時代で初めての友人との会話は、くだらなくて楽しいものだった。




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蒼井黎翔 ID: 137438691328

Lv.17

POW:1557+50 DEX:1232 DEF:1068

INT:0 MP:0 RES:0  Total:3858


職業:狩猟者ハンター 階級:特異

スキル:『狩人の心得』パッシブ

『狩猟者の勘』発動可能

『野性』パッシブ

『獣殺一閃』発動可能


ステータス補正:物理特化

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